古本虫がさまよう
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古本市に行けない悲しみの雨の土曜日はのんびりエロス読書?
(2017・11・19・日曜日)




昨日(土曜日)は、神田も高円寺も五反田もいずれも古書会館での古本市がない。ううむ…。早稲田大学の青空古本祭りがやっていて最終日…。あそこは青空古本市とはいえ、神田の青空古本祭りと違って「テント」が頑丈だから、雨天決行だが…。正午前には東京周辺は雨も降り出した…。ということで、土曜日としては年に数回あるかないかだが、古本市(古本屋)には出かけず……。

古女房は朝から週末ギャンブルに出かけ、部屋の片づけやらいろいろと。正確には、昨日読んだわけではないが、読み終えながら、本欄で披露することもなく「積ん置き」のままになっていた本を…。エロス本が多いけど…。


葉月泰太氏の『奥さん、透けてますけど。』 (二見文庫)を読んだ。


(こんな内容)→「ま、まずくないですか? 人妻ですよね? これは夢か、幻か? そんな女性が、目の前にいたら……優弥は安アパートで一人暮らしをしている。最近、妙な夢を見るようになっていた。 知らない女性にフェラチオされるというものだが、かなりリアルな夢なのに痕跡がないのだった。 そんなある日、霊媒師だと称する妖艶な人妻に声をかけられる。優弥の話を聞き、お祓いが必要かもしれない、と彼の部屋を訪れるが……。

「内容紹介」を見ると、ちょっと幻想小説か架空小説のような雰囲気だが、タイトルだけ見ると、ご近所の奥さんか、下宿の女将さんなどのブララインなどが「透けて」見えて、それにコーフンしたり誘惑されたりしてのラブロマンス…かなと思わせられる。カバー写真も、女性の黒いブラ(スリップ?)が「透けて」見える代物。
ところが、内容紹介にもあるように、ちょっとした幽霊物語風の仕上がりになっている。従って、タイムスリップ小説のように、ありえない設定なのだが、そこは小説。それなりのストーリー展開と、若干の葛藤ありで、幽霊以外にも、いろいろと職場や隣室の女性たちとそこそこ…。わりと楽しく読めるエロス小説でした。

引き続き、櫻木充氏の『濡れた証拠』 (双葉文庫)を。

(こんな内容)→密かに想いを寄せていた、亡き母の面影を宿す生保レディ。成約の見返りに個人的なサービスをしてくれると言うのだが。(「蜜約」)介護福祉士のセフレから聞かされた、資産家の奥様の浮気願望は本当なのだろうか。(「みちびかれて」)他、表題作「濡れた証拠」、書き下ろし作品「嘱託レイプ」を加えた4編を収録した、傑作オリジナル官能作品集。

生保レディの「枕営業」をテーマにした「密約」ならぬ「蜜約」や、義母と家庭教師(男)をその気にさせて、自分も…という高校生の息子の陰謀を描く「濡れた証拠」など、そこそこの「ミステリー」を散りばめた短編集。まずまずの読みごたえはありだが…。

それに比べると、もう少しというか、より「ミステリアス」な作風になっているのが、館淳一氏の『地下室の二人』 (双葉文庫)だ。

(こんな内容)→大学生の鵜沼暁彦は急逝した大山教授の邸宅で蔵書整理中に隠し部屋を発見。遺されていたパソコンには淫猥な動画が保存されており、長手袋にストッキングだけの姿で鞭打たれる姉ナツミとセーラー服で嬲られる妹フユカに暁彦は激しく昂奮する。翌年、社会人となった暁彦は美人上司氷見玲子の指示でとある場所に向かうも、なんとそこはSMホテル。戸惑う暁彦にオーナーのヘルガは"試験"を課す。性愛の巨匠、驚愕の問題作!


下山事件やキャノン機関だの、いささか戦後史の闇的な構図も登場しての被虐的な匂いを漂わせる長編エロス小説といったところ。まずまずでは。ただ、こういう被虐的な世界は個人的にはあまり関心はない。

引き続き、草凪優氏の『良妻恋慕』 (双葉文庫)を読んだ。

(こんな内容)→父親が経営する食品会社傘下の焼肉チェーンを展開する三十歳の青年実業家阿久津義恒は、高校の後輩多和田彩音に恋心を抱いていた。短大卒業後、球場でチアガールをしていた際に見初められ、プロ野球選手の妻となっていた彩音だが、夫の多和田聖一が戦力外通告を受けてしまう。今後に不安を抱え、途方に暮れる彩音に、阿久津はある条件と引き換えに援助を申し出る……。書き下ろし長編性春エロス。

高校生三人男がでっちあげた映画研究会にやってきた「マドンナ」が 彩音。彼女がプロ野球選手と結婚。遠い存在になっていたが…。したがって、「マドンナ」をめぐって四人の男が出てくる。夫は粗暴な性格男として描かれ、かわいそうな「マドンナ」をなんとかしなくては…と、三人の男が思案。そして…といったお話。まずまずのストーリー展開、若干の葛藤などもあり、退屈しないで読める佳作ではあった。


ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!
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「日本死ね」「朝日死ね」「朝日くたばれ」「朝日ちゃがまれ」…どれがいいのかな?
(2017・11・18・土曜日)




足立康史氏の『永田町アホばか列伝』 (悟空出版)を読んだ。著者は、最近、 「朝日新聞、死ね」等々と語って、いろいろと物議をかもしている代議士(日本維新の会所属)。選挙区が大阪ということもあり、こちら(関東)に住んでいるとあまり知名度は高くなかったが、本書などで全国的に有名になったのでは。京都大学工学部の大学院で学び、通産省に入り原子力問題など担当していたようだ。

ともあれ、リベラル左派系の政治家はボロクソに、中道右派系政治家に対しても、中谷元さんなど、是々非々(?)で批判もしている。安倍首相に対しても。

何かネットで、ほかの維新の議員たちと、モリカケ問題で、「正論」を展開しているのをチラリと見かけたこともある。関西人は、やはりオモロイ? こういう人は理系出身でも、通産省ではなく、外務省に入って、中共相手に丁々発止をやってもらったほうがよかったかもしれない。宮崎正弘氏&河添恵子氏の『中国・中国人の品性』 (ワック)でも、関西人なら中国人相手に外交交渉をやれるかもしれない云々との指摘があったかと。足立氏の本を読むにつけ、たしかに……と思う。
足立さんはこの前の総選挙では、小選挙区で自民党に負けたものの比例復活で当選したそうな。
落選した豊田真由子さんは千葉県生まれのようだが、「このハゲー!」の「雄叫び力」は、対中国外交でも使えるのではないか? 中共要人にも「ハゲ」をカツラで隠している輩がいるだろうから、そういう手合いにそういう発言をしたら効果的? 人材は適材適所で?

以前、浜田幸一さんの『日本をダメにした九人の政治家』 (講談社)、 『弾丸なき抗争―権謀術数に生きる男の戦い』 (ベストセラーズ)なんて本があったが、足立さんの本はそんな感じではある。
「懲罰代議士」が実名でブッタ斬る! 左から右までフルボッコ!とのうたい文句も……。ホンネで発言するので、タテマエを尊重する面々から「懲罰」されたりもするようだ。

「朝日新聞、死ね!」…か。まぁ、国益に害する慰安婦報道などの「報道責任」を考えれば、ぜんぜん期待はしないが、書いた記者や責任者などが、心を改めて、潔く自害したとしても驚きはしないだろうが?

僕が政治家なら、 「くたばれ朝日」程度かな?  朝日新聞社経済部著の『くたばれGNP―高度経済成長の内幕』 (朝日新聞社・1971年) という本もあるから、朝日に対して、そういう「くたばれ」を使っても失礼にはなるまい?
大澤正道氏の著作に『くたばれ朝日新聞 国民を欺く卑怯なメディア』 (日新報道)というのもある。ちなみに「くたばる」とはこんな意味…。

「くたばる」とは…( 動ラ五[四] )
①動けなくなるほどひどく疲れる。へとへとになる。へたばる。 「猛練習で-・る」
② 「死ぬ」をののしっていう語。 「早く-・ってしまえ」 「他ひとの子は-・らうと構はねへ/滑稽本・浮世風呂 二下」


「死ぬ」「死ね」のニュアンスもなきにしもあらずのようだが、露骨な表現ではないので「逃げ」も可能?

どこかの地方の方言に「ちゃがまる」という言葉があるようだ。「朝日新聞、ちゃがまる」「朝日新聞、ちゃがまれ」。これには「死ぬ」「死ね」という意味はない?  「ダメになる」という程度かな。いや、「あの人も、とうとう、ちゃがまったがよ」と言うと、死んだという意味になる? よく分からないが…。日本語は難しい?

足立さんは、かつての西村真吾さんを想起させる。西村さんも京都大学法学部出身の関西人だった。勇ましい発言・正論が多かったが、「失言批判」やら「スキャンダル」などで足下をすくわれた。その点、足立氏が将来外務・防衛政務官などになった時には、くれぐれもご用心を。新聞の取材を受ける時は、豊田代議士の秘書ではないが、いつもテープを取っておくべきかもしれない。発言を捏造されないためにも、自衛のためにも。

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!
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未だ復旧せずに「お詫び」なしの「千代田区立図書館」?
(2017・11・17・金曜日)





千代田区立図書館のホームページは、11・7の夜からダウンし、パソコンで予約やらいろいろとできるはずの作業が一切できなくなったようだ。それに気付いたのはふと、サイトを覗こうかと思った11・8~9ぐらいだっただろうか?
普通、こういう「故障」は一日ぐらいで復旧するものだが、10日間も復旧しないまま推移するとは異常というしかない。田園都市線関係者もびっくり?

日頃、蔵書が少ないのを隠すために(?)貸出冊数をほかの図書館に比べても異常なほど少なくしていることへの天譴かなとも思ったりもする。サイトが使えなくなると、「予約」も激減するから? 深謀遠慮? 電話で予約申し込みをする猛者もいるかもしれないが…。
それにつけても、何をやっているのやら?
今朝の時点でこんな「お知らせ」(下記コピペ)。冒頭に「お詫び」の文字もない。最後になって、とってつけたかのような「ご迷惑をおかけして大変申し訳ございません」との一文がかろうじてあるが…。親方日の丸系の官僚主義的図書館ならではの「お知らせ文」というしかない。

普通冒頭にはこう書くべきだろうに。

千代田区立図書館ホームページの不具合についてのお詫び

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!


(以下コピペ)

千代田区立図書館ホームページの公開停止に関するお知らせ
千代田区立図書館ホームページ(http://www.library.chiyoda.tokyo.jp)において、11月7日(火曜日)午後7時頃に不具合が生じ、現在復旧作業を行うため、公開を停止しています。日比谷図書文化館ホームページ(http://hibiyal.jp)はご覧になれますが、一部のウェブサービスがご利用できません。
復旧の見込みが立ちましたら、千代田区ホームページ、日比谷図書文化館ホームページ、館内掲示などでお知らせします。
ホームページ公開停止の影響で利用できないサービスの詳細は、千代田区立図書館ホームページ不具合に伴うサービス状況について(PDF:112KB)をご覧ください。
なお、各図書館は通常どおり開館しており、窓口での資料の貸し出し・返却・予約などはご利用できます。
なお、11月7日(火曜日)午後7時から11月8日(水曜日)午前5時までに図書館ホームページにアクセスし不具合が生じた方は、下記連絡先までご連絡ください。
ご迷惑をおかけし大変申し訳ございません。
連絡先:千代田図書館(電話番号:03-5211-4289・4290(代表))
受付時間:平日=午前10時から午後10時/土曜日:午前10時から午後7時/日曜日・祝日:午前10時から午後5時
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古本狂、古物グッズコレクター狂に罪はない?
(2017・11・17・金曜日)





鹿島茂氏の『病膏肓に入る 鹿島茂の何でもコレクション』 (生活の友社)を読んだ。

(こんな内容)→月刊誌「アートコレクターズ」2011年2月号〜2016年1月号まで、約5年間にわたり掲載した鹿島茂の人気連載「我、発見せり」待望の単行本化。9月23日〜12月24日・群馬県立館林美術館にて開催の「鹿島茂コレクション フランス絵本の世界」展の出品作品も一部収載。


「古本」「古書」の蒐集に関しては、専門分野(フランス)に関して、現地フランスで沢山調達され、その戦果報告に関しては、名著『子供より古書が大事と思いたい』 (青土社・文春文庫)がある。それに触発されて、 『我、古女房より古本を愛す』という本をいつか上梓したいと思っているのだが……。

ともあれ、日本国内でも、結構海外のちょっとしたモノが安く手に入れられることもあるようで、そんな体験談が綴られている。個人的にはあまり欲しいものはないのだが、スターリンや毛沢東がらみのグッズ(「毛沢東とスターリンの握手像」「「毛沢東のゴム印」「『ミニ・スターリン』たちの記念メデル」)などは、安ければ僕も購入してみたいものもチラホラあった。

思えば…。本で紹介できるようなコレクションの類は僕にはあまりない。古本でもたいしたものはない。オーウェルの『1984』の初版本(?)(英国。カバーなし)は、某出版社放出のモノをもっていたか?

「古本」蒐集といえば、 野口冬人氏の『冬人庵書房 山岳書蒐集家の60年』  (山と渓谷社)や、平山鉄太郎氏の『沖縄本礼賛』 (ボーダー新書)は、その分野に関する探書・蒐集の記録本。世にはナポレオンに関する本や資料をせっせと蒐集する人(阿刀田高氏の『ナポレオン狂』 講談社文庫を参照)もいる。未読だが、阿刀田氏には『夜の旅人』 (文春文庫)という「ナポレオン狂」ならぬ「ゲーテ狂」の人を追った作品もあるとのこと。

平凡社が、『別冊太陽』で、 『別冊太陽 発禁本3部作』 構成・米沢嘉博/文・城市郎、米沢嘉博 (発行平凡社1999/7/1~2002/2/10)なる冊子を以前刊行した(いずれも購入一読)。発禁本が多々紹介されていたが、この『発禁本3部作』みたいに、宇能鴻一郎氏の作品すべての「カバー(イラスト)」を一挙掲載するだけでも面白い一冊になるだろう。 『宇能鴻一郎 全性愛小説読書ノート』なんて誰か書かないものかしら?
さらには『エロ本蒐集家の60年』という本を書かないものかと思ったりもした。

『オリンピア・プレス物語 ある出版社のエロティックな旅』 (著者はジョン・ディ・セインド・ジョア。河出書房新社)なんて本もあるが、「オリンピア・プレス&フランス書院」などの全著作をカバーしたりするものなど…。三笠書房時代からのことを知るフランス書院関係者の回顧録なども読みたいものだ。

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!
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『戦後の精神史 平川佑弘 伊藤隆 ジョン・ダワー』を書くのは誰だろう?  中島岳志? 牛村圭? 
(2017・11・16・木曜日)






平川佑弘さんの『戦後の精神史  渡邉一夫、竹山道雄、E・H・ノーマン』 (河出書房新社 )を読了(かなり前に読了していたが、書くのが遅れた)

著者は竹山さんの娘婿。そういう立場もあって、 『竹山道雄と昭和の時代』 (藤原書店)という本でも、知識人としての竹山道雄のことを本格的に論じている。これは大変面白い本だった。竹山さんがベルリンの壁などを見て論じた東独・西独比較論を、東独擁護の共産主義的知識人がいかにノーテンキな発言で批判をしていたかなど、容共リベラルの知性の低さ(反知性主義)をモロに再認識させてくれる本でもあった。

今回の河出の本は、竹山さんと同時代を生き、知識人として発言しあった仲でもある渡邉一夫という人を中核というか、キーパーソン(狂言回し?)として、その左右にいたかのようなE・H・ノーマンと竹山道雄を比較しながら論証している(僕はあまり渡邉さんの本は読んでない。ノーマンの本も)。

その中にあって、平川氏の私的な知的領域の思い出話なども適宜挿入されながら綴られている。60年安保に先立つ6年前の1954年のこと――欧州留学のための船旅の寄港地サイゴンから乗ってきたフランスのサラン将軍夫人と、その関係者(ベトナム人)たちの中で、あるベトナム人が、「愛国行進曲」を船中(南シナ海)で平川さんのためにうたってくれたという。コロンボで船のタラップから降り立つと「おまえは日本人か。イギリス海軍がやられたときは嬉しかったぞ。この空を日本機がとびまわった」と見知らぬセイロンの人が空を指さした」という。

「そんな予期せぬ一つ一つが歴史に対する私の感覚に微妙な変化をもたらした気がする。占領期日本とそれに引き続く閉ざされた言論空間の中でインプリントされたお決まりの歴史認識とずれが生じだしたのである」

いやはや、あのとき、セイロン空襲のみならず、さらに「西へ」「西へ」と攻めていたら…。ドウーリトルの空襲など、まぐれというか、一回限りの無謀攻撃、日本軍の目を西から東に向けさせる陽動作戦と見破っていたら…。大東亜解放のための戦いは、インパール作戦の前にインド方面で樹立していたかもしれなかったのに…。残念。

僕には、そんな「海外」での体験はないが、子供向けの戦史本で活字を通じて、英国のレパルス、プリンスオブウェールズを航空機で撃沈した事実を小学生で知った時は、「歴史に対する微妙な変化をもたらした」というと大袈裟だが、ザマーミロ、くたばれチャーチル!とは思ったかなと。英国ロンドンの戦争博物館で、その事実やシンガポールでの対日降伏の事実は「軽く」展示されていたのを見たものだった(いまはどうなっているやら?)。

とはいえ、開戦百日の栄光は…。ミッドウェーはまだしも、ガダルカナルもまだしも、その後は連戦連敗…。戦争が悲惨だということはいうまでもない。ただ、どうしてそういう悲惨を招いたかという「戦争体験」は、同盟国の選択のミスにもつながるわけで、ナチスドイツと同盟し、スターリンソ連と中立条約を結んだ弊害は大きく、その弊害とて、向こう(ソ連)が条約を無視をするなら、こっちも先にやって、北進するということもありえただろうに、そういう戦略的決定をなしえなかったということも…二度としてはいけない過ちとして、歴史の教訓としてもっているべきだろう。それも戦争体験の風化…と関連する。


話を本に戻す。安保闘争前後の東大や社会の雰囲気などをリアルタイムで語れる人もすっかり少なくなった。ちなみに、平川氏は1931年生まれだから、60年安保のころは20代最後。学者の卵として多感な時代だったのでは。 『歴史と私――史料と歩んだ歴史家の回想』 (中公新書)の著者でもある、伊藤隆さんは1932年生まれ。このあたりは、将来、 『戦後の精神史 平川佑弘 伊藤隆 ジョン・ダワー』なんて本を誰かが書くことになるかもしれない。

ともあれ、大変知的刺激に富む本だった。ノーマンに関してはまず手厳しい。

「生前は特に大学者とは思われていなかった。ところが死んでから二十年経って、北米日本史学界で反ベトナム戦争世代が台頭するや、ノーマンはにわかに新興左翼世代の偶像と化し、日本でも後光を帯びる存在となった」のである。

ジョン・ダワーなどの煽動もあったようだ。そんなノーマンを渡邉などは庇ったりもする。丸山真男も。ノーマンはカナダ人の宣教師の子供として日本で生まれたものの、日本語能力はさほどではなかったそうな。カナダの外交官として、戦後すぐに日本にやってきて、左翼分子の救出に動き、目障りな近衛文麿を東京裁判の被告人の席に告発もしていく。そのくせ、都留重人は同じカマ(共産主義スパイ?)のメシを食べた「同志」であり、彼が木戸幸一の姪の夫ということもあり、手心を加えたりもしたそうな。

そういった戦後史の言論空間を中心とした戦後史を論じており大変面白い本だった。おやっと思ったのが、よくいって「リベラル保守」(?)の中島岳志氏が、毎日新聞で、竹山道雄さんがノーマン批判を『昭和の精神史』 (講談社学術文庫ほか)でしていたことを「評価」している点を、平川氏が是としているところだ。その記事はチラリと一読した記憶はあった。

原文は以下の通り。


<保守的な見方>を見直すべき時

 竹山道雄は『ビルマの竪琴(たてごと)』の作者として知られる。ある人は、冷戦期に共産主義陣営の問題を鋭く指摘した保守派の論客として記憶しているだろう。そんな竹山の選集が、全4巻の予定で刊行され始めた。

 第1巻には、保守のあり方を問い返す重要な論考が含まれている。例えば1937年に書かれた「将軍達と『理性の詭計(きけい)』」では日本陸軍の有力軍人を批判し、1940年の「独逸・新しき中世?」ではナチスの政治を問題視している。竹山は自由を擁護するが故に、日本の軍国主義、ナチスのファシズムを批判し、そこにソ連の共産主義と共通する問題を見出(みいだ)した。これが、竹山の保守としての立ち位置だった。
 竹山は1956年、『昭和の精神史』を出版した。ここで批判の俎上(そじょう)に載せたのが、戦後の歴史学を席巻した「進歩主義の論理」である。代表者はE・H・ノーマン。彼は、超国家主義の問題を、封建制を温存させた政党・財閥・官僚・軍閥の前近代性にあるとし、進歩主義的な歴史観から演繹(えんえき)的分析を行ったが、竹山はこれに異議を唱える。そもそも超国家主義者たちは、「一君万民」の国体を根拠とした階級社会の打倒を訴えた人たちで、財閥や政党政治を敵視した。彼らは国体論に基づく国家改造を訴え、クーデターやテロを繰り返した。そんな超国家主義を封建主義者と論じることはできない。彼らは、明らかに「革新勢力」の一派である。2・26事件のような青年将校による暗殺事件は「イデオロギーによる直接行動」であり、「そのイデオロギーとは、ブルジョアジー体制を仆(たお)して国家社会主義をたてようという、一九二〇年三〇年代の世界に共通の現代的なもの」である。

 問題は、この革新勢力が「天皇制」を乗っ取ったことにある。明治以降、天皇は「機関説的性格」で位置づけられてきたが、「ファッショ的革新勢力」は「統帥権的性格」へと読み替え、秩序を反転させる論理を構成していった。結果、1930年代以降の対外的な危機の拡大を前に、「統帥権的性格」の天皇観が支配的となり、ヘゲモニーを獲得しようとした軍人たちが、流用するようになった。革新派軍人は「国体の本義」を手中におさめることによって、「権威を確立」していったのである。

 超国家主義は封建制の残存ではない。重臣・政党・財閥・官僚・軍閥による明治以降の「天皇制」の続きでもない。そうであるように見えたのは、「同じ天皇が別の性格のものとして活用されたから」だ。問題は国体論と結びついた革新主義にある。

 竹山の見るところ、戦前の日本は国家としての統制を失っていた。その結果、「大局の目途もなく作戦を拡大させてしまった」。なぜそのようなことが起きたのか?

 それはファッショ的革新イデオロギーが世論の支持を集め、数多くの便乗者を生み出し、制し難い空気を生み出したからである。この悪循環が拡大し続け、誰もが抗することのできない状況を生み出した。日本は国家としての統制をとることができない「世の中全体が半ば発狂」した状況に陥った。

 竹山曰(いわ)く、その最たる例が日中戦争である。この戦争は無計画と無統制の極みであり、戦争を解決するために戦争を拡大するという悪循環が支配した。

 侵略をしていた日本人は、主観的には侵略をしているとは感じていなかった。みんな防衛をしていると感じていた。国が存続するためには勝たなければならない。戦いを完遂しなければ、積み上げてきた成果が水の泡となる。これまでの犠牲を無駄にしてしまう。だから、戦争を拡大するしかない。「それは致命的な悪循環だった」

 軍事と外交がばらばらで、統一した国家意思を喪失した日本が負けるのは当然だった。「強力な非有機体と化した軍隊が無限の大陸で戦争したのだから、国はまさに亡(ほろ)びるべくして亡びた、というべきであろう」。これはノーマンが指摘した「封建制の温存」という問題とは「あべこべの姿」である。むしろ既成の秩序が崩壊したが故に起こった悲劇が、日本の敗戦だった。

 一方で、竹山は右派の歴史観にも厳しく釘(くぎ)を刺している。一連の戦争をアジア解放の聖戦として正当化すべきではない。アジア諸国の独立は「日本の意図からよりもむしろ歴史の成行き」であって、日本の軍事力による植民地支配からの解放という歴史観は成り立たない。右派による聖戦史観は「一つの観点によって歴史の全体を体制化しようとしたもの」であり、左派の「上からの演繹」と同根の存在に他ならない。

 このような竹山の<保守的な見方>を、我々はもう一度、見直すべきであろう。大東亜戦争開戦から75年が経(た)とうとしている。当時、20歳だった人は、もう95歳だ。竹山をはじめ、戦争を20歳以上で体験した保守派の論客は、概(おおむ)ね鬼籍に入っている。彼らの声は、現在の保守派に継承されていない。


最後の「彼らの声は、現在の保守派に継承されていない」あたりに、中島氏の「底意」(皮肉?)が込められているように思える…。右派といっても、中島氏の考える「右派」や「現在の保守派」とは、いささか架空概念的なものであろう。

平川氏は、この中島氏のエッセイの一部を引用し、 『竹山道雄と昭和の時代』の中の「林健太郎・小堀桂一郎の昭和史論争」で分類した、3つの歴史認識について述べている。

①「東京裁判の判決の正義を肯定し大東亜戦争の日本の不義を認める」(井上清・ノーマン、日本外務省の一部高級官僚、新聞社幹部、中共)
②「東京裁判の公正を否定し大東亜戦争における日本側の正義を認める」(林房雄ほか)
③「東京裁判の公正を否定するが、しかし軍部主導の日本側にも不当性はあるとする」(竹山、林健太郎、河合栄治郎とその弟子筋)

そして、③--「中島氏もいまやこの立場を良しとするのである」としている。ううむ?、中島氏から「違う」と言ってこないか? 「その通りです」と言うなら「偽装」?

「河合栄治郎とその弟子筋」となれば、猪木正道氏、関嘉彦氏、田久保忠衛氏なども入ってくるだろう。猪木氏は『軍国日本の興亡 日清戦争から日中戦争へ』 (中公新書)の著書もあり、そのあたりは竹山氏と酷似しているともいえようが、戦前の日本がファシズム国家ではなかったという竹山氏の指摘を、中島氏などが肯定するのかどうか?

③の立場の「軍部主導の日本側にも不当性はあるとする」のはもちろんのことと僕も思うが、「敵国側にも不当性はあるとする」立場から、南京虐殺や慰安婦問題や原爆投下問題やシベリア拉致抑留強制労働問題や満洲婦女子問題などを、研究告発するのは当然のことであり、偏狭なナショナリズムとは何の関係もないと思う。
竹山氏が存命なら、慰安婦問題など、同様に批判していただろう。この問題に関して朝日新聞に遠慮して沈黙する「リベラルな保守」(?)を手厳しく批判していたことだろう。

林健太郎氏と小堀桂一郎氏の「正論」(雑誌)での歴史論争は面白く、当時、交互に拝読していたものだった。林さんを読むと、なるほどと思い、小堀さんを読むと、それもそうだな…と? 我ながらバランスが取れていると?

だが、林健太郎氏にも『外圧に揺らぐ日本史―教科書問題を考える』 (カッパ・ホームス)という本がある(1987年の刊行)。
「大東亜戦争全面肯定論」はありえないが、あくまでも結果としてアジア諸国の解放につながったのは、不幸中の幸いだったと見ることは可能であり、シナ事変はともかくとして、日米戦争などに関して、自衛戦争であったかどうかなど、歴史論争はありえるだろう。

平川氏が中島氏と違って批判の対象としている岩波書店社員の馬場公彦氏(『ビルマの竪琴』をめぐる戦後史』の著者)のほうが、まだ中島氏より、③の立場を「良しとする」人かもしれない。いや、それはないか?

河出の本に出てくる牛村圭氏への不当な処遇(平川氏の推薦で、右派雑誌に論考を発表したために、就任する予定だった某大学の左翼学長が、そんな奴は就職させないと内定取消をされたことがあったそうな。学問の自由をすぐに口にするこういう岩波文化人的な左翼学長のお里が知れる? ゴーマンな権力・権威主義者?)のことが書かれているが、牛村氏には、痛烈な中島批判論文がある。
「中島岳志著『パール判事』には看過できない矛盾がある」(「諸君!」2008・1月号)。十年近く前の論文で記憶は不鮮明だが、そうそうとうなずいた覚えがある。中島氏のパール論、同様、竹山論に関しても「看過できない矛盾がある」かどうかは注意深く行間を読むべきかもしれない。

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