古本虫がさまよう 小松左京の『アメリカの壁』をトランプ世界と交錯させるのは面白いアイデアだけど、どちらかといえば『ベルリンの壁』『板門店の壁』と比較して、読みこなすほうが知性的ではないのかしら
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小松左京の『アメリカの壁』をトランプ世界と交錯させるのは面白いアイデアだけど、どちらかといえば『ベルリンの壁』『板門店の壁』と比較して、読みこなすほうが知性的ではないのかしら
(2017・5・20・土曜日)






小松左京氏の『アメリカの壁』 (ケイブンシャ文庫)を読んだ。文春文庫もあるらしい。といっても、これは数編の短編小説が収録されており、巻頭の「アメリカの壁」のみを読んだところ。

小松さんというと『復活の日』 (角川文庫)なとは、映画も原作もリアルタイムで読んだ(見た)程度。中学生の時、『日本沈没』 (カッパブックス)を愛読したことはあるが、SF小説はあまり関心がある分野ではなかった(ほかには星新一さんとかを少し読んだ程度)。地球寒冷化が議論されていた時、編著で1974年に『異常気象 地球が冷える』 (旭屋出版)という本をだしている。これはどう評価すべきなのかな? 

いま話題(?)の文藝春秋から、急遽電子板で、これが刊行されたので、目に止まった次第。というのもこんなふれこみ――――――。


SF界の巨匠・小松左京はアメリカが「壁」に 囲まれるのを予言していた? 注目の小説『アメリカの壁』を電子書籍で緊急発売!
 株式会社 文藝春秋は、『日本沈没』『首都消失』等で知られる、日本を代表するSF作家、故・小松左京氏の短編小説『アメリカの壁』電子版を2月10日に緊急発売いたします。
 今からちょうど40年前の1977年に発表されたこの作品には、「輝けるアメリカ」「美しいアメリカ」というスローガンを掲げて当選した孤立主義者のアメリカ大統領が登場します。そして突然、出現した「壁」によってアメリカは、外の世界との交通、通信が一切、遮断されてしまう、という設定です。

 この小説が、トランプ大統領が就任した後のアメリカを思わせることから、京都新聞のコラム「凡語」が紹介(2017.1.27掲載)。ネット上でも「いま読んでおくべき」「現実がSFに近づいた」と話題になっています。
 1982年に文春文庫で発売された短編集にこの作品は収録されていますが、その表題作『アメリカの壁』1作を抜き出し、電子書籍として単独で発売いたします。
 アメリカの“今”を理解するために、ぜひお読みください。


●小松左京ライブラリーからのコメント●
「アメリカを世界から完全に切り離すことで、その真の存在価値と、秘められた闇を描いた「アメリカの壁」 。
『日本沈没』は日本だけが沈んでいく、世界からもうどうしようもなく消えていくって話なんだけど、世界最大最強のアメリカを消そうにも沈没させられないから、「壁」にしたんだね。(『小松左京自伝』より)

 史上最強の超大国は、経済、軍事、外交、様々な形で全世界と結びついており、日本は、その関係性がもっとも深い国の一つです。
 新たなリーダーの登場で、かつてない道に進もうとするアメリカの闇を理解するためにも今こそお読みいただきたい作品です」
●作品あらすじ●

 突然、出現した「壁」によってアメリカと外の世界との交通、通信が一切、遮断されてしまった。にもかかわらず、「アメリカは生きつづけるだろう」と語る大統領のもと、アメリカ国民は意外な落ち着きをみせていた。アメリカに閉じ込められた日本人ライターは、こうした状況に不審感を抱き、真相を探りはじめる。

●本文より●

「――新しい意味での孤立主義者であった現大統領、この“すばらしく、美しく、ゆたかで、新しく、自由なアメリカ”を、汚れ、古び、混沌として厄介事だらけの“旧世界”から、切りはなしたい、と考えつづけていた大統領は、とんでもない事を思いついた……。」

「アメリカは、“外”の世界に、ひどくいやな形で傷つき、萎縮(シュリンク)しはじめた。そいつは認めるだろ? 今の大統領は、その方向をさらに強め、妙な具合にカーブさせた。彼は”幸福な新天地時代“のアメリカのノスタルジイに訴え、そこからの再出発を考えているみたいだった。」



大統領のフルネームが、モンローとか、パトリック・ヘンリーとかかつての「愛国者」と同じ名前にしたりしたあたりがミソか?  「ヘンリイ・パトリック・ジェイムズ・モンロー」と…。かといって、さほど、トランプとの類似性があるとも思えない。トランプが、メキシコ国境に「壁」をつくる云々と主張していたので、かろうじて「壁」の類似性があるかもしれないが。

まぁ、文中、アメリカは資源も豊富で、アメリカを当てにしすぎていた日本なんかは大変になるだろうが…なんて描写があるあたりが…ということだろうか?

僕にはあまり、ピンとくる内容ではなかった。

小松左京氏も、1974年に、編著として『異常気象 地球が冷える』 (旭屋出版)という本を刊行している。このころは地球寒冷化論が「流行」していたのだろう? いまの逆?  『アメリカの壁』が刊行されたのは1977年というから、サイゴン陥落(1975年)の直後。内向きのアメリカ云々といった論考は多々あった。

最近、新作『舞台をまわす、舞台がまわる – 山崎正和オーラルヒストリー』 (中央公論新社)を上梓した山崎正和さんなんかが、 『病みあがりのアメリカ』 (サンケイ新聞出版局)などを刊行していたかと。1975年だったか、。リアルタイムで読んでいたっけ? いやいや古本屋で買って大学一年の夏休みごろに読んでいたっけ? もう40年近く前のこと。記憶が薄れている。あのころ(いまも?)、山崎正和さんは嫌いじゃなかった?

『アメリカの壁』は、閉じ込められた日本人が、脱出を試みようとして、飛行機に乗って…というところで終る。これって、どちらかといえば、 「ベルリンの壁」に閉じ込められた東欧の世界では? 「壁」で国民を閉じ込め、そこから脱出しようとすれば、国境兵士が容赦なく射殺したシーンを彷彿させるから。いまなら「板門店の壁」などに覆われている北朝鮮ワールドではないか。脱北者を射殺する金王朝こそが『アメリカの壁』と対比させるべきでは?
オーウェルの『1984』といい、この作品といい、現実世界に厳然とリアルタイムで存在しているものと比較するのではなく、あやふやなものと対比させるのは、いかがなものかとも?

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!
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