古本虫がさまよう 「全体主義」が腐る時--バレンティン・ゴンザレスの『農民英雄』 (二つの世界社)を読まずして『スペイン内戦』は語れない
2017 10 / 09 last month≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫11 next month






「全体主義」が腐る時--バレンティン・ゴンザレスの『農民英雄』 (二つの世界社)を読まずして『スペイン内戦』は語れない(2017・5・7・日曜日)





昨日(土曜日)は東京周辺は快晴。気温もかなり高め。午後になって高円寺古書会館へ。土曜日はオール200円、日曜はオール100円の古本市。さぞかし午前中は「せどり」も含めて人が殺到したのでは。午後は棚もかなり空いていて、人も混雑するほどではなし。

それでも富永健一氏の『社会学 わが生涯』 (ミネルヴァ書房)があったのは拾い物。定価は本体価格3000円だから、3240円(税込み)。それが200円なのだから。2011年の刊行。ブックオフにもっていっても400円ぐらいにはなるかも。中も線引きなどなく、そこそこ綺麗だし。450頁を超える大著。

そのほか、鈴木充氏の『ロシア版「千夜一夜」 こばなしにみるソ連史』 (東京新聞出版局)、小沢信男氏の『小説昭和十一年』 (新日本出版社)、キャロリン・ハートの『ブック・フェスティバルの殺人』 (ハヤカワ文庫)、マシュー・ヒールド・クーパーの『魚が腐る時』 (サンケイ文庫)をゲット。5冊で1000円。

『魚が腐る時』は、もう何冊目かの購入。かなり綺麗。これは「カティンの森」の悲劇を描いたノンフィクション・ノベルともいうべき傑作。高円寺古書会館には、サンケイ文庫やハヤカワ文庫(ミステリアス・プレス)や創価大学の処分本などが目立った。

相変わらず「150円」のシールなどを貼っている古本もあり。これが200円というのは解せないのだが……。いちいち、旧来の定価のシールを剥がしたりするのは面倒なのだろうが、ここはやはり、万が一、200円未満の定価のシールなどがありましたら、土曜日は、その旧来の、より安いお値段でお売りします…とやればいいのにねぇ。それぐらいのサービス精神は発揮してほしいもの。

古書会館のあと、高円寺周辺の古本屋を少し回る。某老舗古本屋の軒先コーナーで、サンチアゴ・カリリョの『明日はスペインだ』 (新日本出版社)を100円(税込み)で購入。
新日本出版社…。まぁ、スペイン共産党もスターリンの追随政党だったが…。カリリョもユーロコミュニズムのレベルにまでは進展しても、所詮は知的限界があったというしかあるまい。

そういえば、この前、小欄で新日本出版社の本を取り上げて、そこそこ褒めたら、新日本出版社が「ツイート」で紹介していたかと。それを見て、ふうんコミュニストも心が広くなったのかな?と思ったが、あっというまに取り消されていた(ようだ)…。まぁ、無理もない。寺尾五郎の本の出版元として、「過去に目を閉ざすものは現在にも盲目となる」典型でしかないと何度も批判しているのだから(笑)?

それにしても、カリリョや、その前任者であるドロレス・イバルリの知的限界を知る上では、同じく左翼で、内戦でフランコと闘い、パリに亡命したのち、徹底的に反スターリンの立場を早々と表明した、ゴンザレスと比較してみるといいだろう。

ドロレス・イバルリらと共に戦い、敗れ、ソ連に亡命したバレンティン・ゴンザレスは『農民英雄』 (二つの世界社)という面白い本を書いている。この本は以前も本欄で紹介したことがある。こんな古本が高円寺古書会館にあれば凄いのだが…(僕は某大学図書館所蔵の本を借りて読んだ。タイトルからして農学部のある大学図書館にある? 全頁コピーを取っているが)。以下再録的(若干加筆などあり)になるが‥‥。

ボロテンの『スペイン革命 全歴史』『スペイン内戦』 (晶文社)でもしばしば登場するが、スペイン人民兵で共産党員でありながら最後にはソ連に絶望したことで知られるバレンティン・ゴンザレスの『農民英雄』 (二つの世界社・取材構成は風媒社刊『トロツキーの暗殺』の著者でもあるフリアン・ゴルキンが担当し共著の形になっている)は傑作である。
 
彼は、農民の伜で、一九二九年に共産党に入党。その後、民兵を率いて内戦で「エル・カンペシノ」(土百姓)と称せられる軍人として活躍する(勿論、反フランコ側)。
内戦の敗北後、一九三九年五月、ソ連に亡命する。「内戦の英雄」として、デラックスな宿舎を用意され、そこには美女が侍り、好きなようにしていいとの色仕掛け工作も受ける。

「遠慮してはいけませんよ。あの子たちは、それが仕事なのだから(浴室で体を洗ってもらうこと)。やってもらいなさい。あなたの全身の毛孔からは、いつも、共産主義がにじみ出ているのを見せてやるといい。しかし、気をつけなさいよ。あなたの一挙手一投足も、みんな、記録されているのですからね」と。

さらに専属の小間使いの香水プンプンの女性もついているのだ。
日本からの著名亡命者もソ連で似たような体験をしたことだろう?
 
しかし、ゴンザレスは、モスクワ内の市民の生活ぶりを見て、その貧しさなどに衝撃も受ける。さらに、党による共産主義学習(洗脳教育)を受けるのだが、一番強い軍隊はと聞かれて、ソ連軍と言わずにドイツ軍であると言ったりする。

 「スペインの内乱の際にわれわれのところへ派遣してくれた将校は、ソ連でも一番質の劣る将校にちがいないとわたしは思ったのです。ところが、実際にここへきてみると、あれ以上優秀な将校はほとんどいないってことがわかりましたよ。あのときの将校たちは、人民の接触をすっかり失っていましたね。彼らが考えていることは、爪をきれいに磨き立てて、ダンスのステップを習って、立派な作法を身につけようということだけです。彼らはそういう使命で外国へ派遣されるのでしょう」「ソ連では、偵察隊の主なる仕事は、鶏を盗んだり、指揮官のためにきれいな女の子を探すことにある」   

こういう反ソ的言辞故に、トロツキー主義者だとして処罰を受けるのだ。
 だが、ゴンザレスはソ連共産党は「スペイン内乱に勝利を収めることには、必ずしも深い関心を持たず、彼らの道具であるスペイン共産党の立場を強化することにだけ専念していた」と喝破している。
 
その後、彼は各地の収容所生活を強要され、脱出を試みては捕まり、また脱出したりする。ようやく、戦後になってペルシャに逃げ込み、自由世界にて自叙伝を書いて、ソ連の全体主義的悪の実態を知らしめることに成功するのである(監獄では女囚が強姦されもする。中共のウイグル支配を告発したラビア・カーディルなどの証言でも似たような事実が暴露されているが、二〇世紀に於いても二一世紀に於いても、野蛮な共産主義者のやること(ヘイトアクション)に変わりはないようだ。「こんな野蛮なやつらをなんとかしなくては」?)。
 
  ボロテンの訳者・渡利三郎氏によれば、ゴンザレスは、ソ連脱出後はフランスで独自にゲリラ隊を組織しスペインへの侵入を図ったりし、フランコ死後の総選挙では、ソ連共産主義やプロレタリア独裁に反対し社会党を支持するアピールをフランスから発したという。ということは民主社会主義者的な思想の持ち主になっていたのかもしれない。風間丈吉と同じ?
晩年、スペインに帰国しマドリードで死去したという(『スペイン革命 全歴史』訳者解説参照)。
 
  ちなみに、ボロテンによると、ゴンザレスの自叙伝を貶める歴史研究者(ハーバート・サウスワース)と、評価するソ連研究家のロバート・コンクェストと論争があったという。

「無数にあるスペイン内戦に関する本同様、この本も不正確かつ歪曲された点は多々あるが、にもかかわらず文句なく歴史的に貴重で伝えるに値する資料が含まれている」(ボロテン)のは間違いなかろう。

ともあれ、今日、ゴンザレスやボロテンの分析評価を多として、スペイン内戦を、単純に人民とファシストの戦いであったとみなす「通説」を批判したら、それは「歴史修正主義」になるのだろうか? フランコに一定の評価を与え、その統治と、戦後のソ連による支配下の東欧と比較考察することは「歴史修正主義」になるのだろうか? そうはなるまい。

何かあると、マルクスやレーニンはこう言った‥‥といった単細胞的な「人民史観」を是とする「空虚な学問体系」にいつまでも拘束されることなく、論理的に歴史研究は進めていくべきであろう。

ということで、「アベ政治を許すな」というのなら、少なくとも同じ声量で「シュウ政治を許すな」「キム政治を許すな」ともいうべきであろう。彼らのやっている「人権弾圧(中共の場合は、さらに異民族弾圧統治)」「軍拡」は、かつての日本の軍国主義者を上回る。なぜ、それがいえないのやら? 情けない?

ともあれ、一冊の「古本」から、いろんな類推が浮かんでは消えていく。
あと某老舗古本屋で、おお、こんな本が出ていたのかという本を発見。3000円。元の定価は3500円だし、買えない値段ではないが……。中身はいささか「専門書」。ううむ、買っても積んどく本になる? 若ければ、いつか読むとか、定年後に読むとかいろいろと…。しかし、この歳だと…。図書館にあるかなとも(帰宅してチェックしたが、区立図書館レベルにはない本)。来週も高円寺古書会館の古本市があるから、その時、また遭遇すれば買おうかな…。

それから新宿を経由して横浜へ。新宿からだと湘南快速だと30分で横浜に着く。大崎を出ると武蔵小杉しか停まらない。結構なこと。座れたし。

桜木町で知人と会って夕食(全席禁煙店)。関内黄金町周辺の古本屋はこの前立ち寄ったからもういいやと。いささか酔っぱらって帰宅。5連休も明日で終わり。読書はいろいろとしているのだが…。仕事も。

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!
スポンサーサイト
 | 共産主義  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
Secret




TrackBack URL
→http://kesutora.blog103.fc2.com/tb.php/2908-78216c42

プロフィール

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

カテゴリ