古本虫がさまよう さらば金正男よ?
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さらば金正男よ?  02/15/2017  






さらば金正男よ?
(2017・2・15・水曜日)




金正男が「毒殺」されたとのニュースが昨夜流れた。金正恩が中共によって暗殺され、その後釜に金正男が就いて、少しはマシな「傀儡政権」が誕生する……だなんてこともありうるかなと思っていたが、これが事実なら、その可能性は消えたことになろうか。
家族連れで日本に「密入国」して捕まえた時、バカな外務大臣が、何を恐れたか、さっさと返せということで、VIP並み扱いで帰国させたが、拉致被害者と交換するぐらいの才覚はなかったのかと当時歯ぎしりしたものだった。金正男と限定的な接触とはいえ、いろいろと「取材」した体験を綴った本として、五味洋治氏の『父・金正日と私 金正男独占告白』 (文藝春秋)がある。刊行当時、その本を本欄で取り上げていた。それを、以下再録。

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!




金日成と金正日--金正恩、そして金正男の正体と謎に迫る好著…… 01/19/2012  


  共産主義国家は嘘によらずには生きていけない国家であるが、以前、李命英氏の『四人の金日成』 (成甲書房)を読んだことがある。西岡力氏が韓国で学んでいたときの先生であったか? 「金日成」なる存在そのものがモスクワによって「創造(捏造)」されたものであり、過去の対日植民地闘争のリーダー「金日成」なる人物が、戦後どのように「創造」されてきたかなどについて検証した本だったかと(記憶が薄れているが)。
 李氏の本は、ほかに 『権力の歴史 偽造された北朝鮮近代史』 (世界日報社)などがあり、これはこの前、祐天寺の某古本屋で購入したばかり。積んどく中。

 北朝鮮に関する本は、ここでも紹介してきたが多々ある。最近はやはり「後継者」問題をめぐって、金正日の息子たちがクローズアップされている。

 単純な推測であるが、金日成がレーニン、金正日がスターリン、金正恩・金正男はフルシチョフ、ブレジネフといったところではないかと思っている。

 レーニンはよかったとは全く思わないし、レーニンから疑い否定すべきだと思うが、それはともかくとして、いまでも、一応「創業者」として「レーニン&金日成」は神格化されている点でも共通している。日本の左派知識人たちもそのレベルであろう。
 そのあとを継いだ「スターリン&金正日」に関しては、さすがにワンダフルという人はあまりいないだろう。
 そしてソ連もスターリンが死んで(暗殺?)、マカレンコやフルシチョフなどが出てきて、少しはマシになったかと。もっともフルシチョフもしばらくして解任され、ブレジネフなどの時代になり、所詮、フルシチョフ時代もキューバ危機があり、レーニン、スターリン時代と比べても五十歩百歩でしかないのだろうが、それでも少しはマシになったとも言えないこともない。

 その意味で、北朝鮮の指導者も代替わりをして少しはマシになるのではないかという期待は出てくるだろう。ただ、それが血筋の継承者というのが異常ではあるが、会社組織でもそういうことはあるし、前任の父・祖父の経営方式を大胆に変更する孫社長というのもありうる。

 その意味で2010年10月に刊行されていた藤本健二氏の『北の後継者キム・ジョンウン』 (中公新書ラクレ)は興味深い。キム・ジョンウンは「金正恩」のこと。藤本氏は元金正日の専属料理人(寿司職人)。北朝鮮の平壌の日本料理店で働き、その縁で専属料理人になり、金正恩の幼少の頃から接触もあったという。料理人としての体験記である『金正日の料理人』 (扶桑社)は以前読んだことがある。いろいろとあったようで、何とか日本に戻れたのは幸いであろうが、生々しい内部「報告」をしているせいか、サングラス姿での素顔を隠して「証言」をしている姿をテレビなどでよく見かける。
 今回の新書本も、内部に居た人間ではないと書けない話があり、貴重な証言集と言える。なにしろ、この人、金日成が死んだ時の葬儀にも列席し、その姿が生放送のテレビ画像にチラリと出たこともあったぐらいだ(さすがに日本人の姿が出るのは拙いということで、そのあとすぐに「消された」らしい)。

 スイスに留学し、休みの時に帰国していた正恩が、藤本氏に「わが国は、アジア(のほかの国)を見ても、工業技術がずっと遅れている。わが国で誇れるのは地下資源のウラン鉱石ぐらいだろう。招待所でも停電が多いし、電力不足は大変だな」「われわれは毎日のように馬に乗ったり、ローラープレードに乗ったり、バスケットをしたり、夏にはジェットスキーやプールで遊んでいるけど、一般の人民たちはどう過ごしているのかなあ」と語ったことがあるそうな。藤本氏は、その体験から、彼に期待もし、後継者としてふさわしいと見ている。
 その点で、正恩が、フルシチョフぐらいになれるかもしれないという期待は持てるかもしれない。しかし、10代の頃の「理想」や「同情心」などは、実社会に出て行くと薄れもする。日本だって、局長クラスのお役人たちが汚職やらで逮捕されると、高校生時代の同級生の証言として、理想を語っていたかつての〇〇君だったのに…という話がよく出てくる。その二の舞になる可能性も十分強いだろうが、スイス留学といった体験が少しは井の中の蛙云々ではないが、蛙よりはマシではないかと。

 一方、出たばかりの五味洋治氏の『父・金正日と私 金正男独占告白』 (文藝春秋)は、北京国際空港で別取材の時にたまたま見かけた金正男に立ち話をして名刺を渡した縁でメールのやりとりをするようになった五味氏の取材記録集である。主にメールでの質疑応答がまとめられている。メールだけのやりとりだと、あの民主党の偽メール事件をついつい想起してしまうが、五味氏の場合、メールでやりとりしながらアポをとり、マカオで本人との直接取材もしている。
 藤本氏の場合、北朝鮮在住で、密接な人間関係があったこともあって生々しい証言が多いが、こちらはメールでのやりとりが主であるから、そういうものは少ないのだが、興味深いものがある。日本への不法入国がばれ、田中外相の無様な対応もあり、金正男というと、みてくれからしても、ふてぶてしいヤクザの若頭のようなイメージがある。
しかし、本書を読むと、わりとインテリでもあり、マジメそうな青年にも思えてくる。そのあたりはなんとも即断はできないが……。
 東日本大震災後、五味氏が日本でも電力不足が言われ、これでは北朝鮮をとやかくいう資格がなくなってしまいますと送信したら、「北朝鮮の慢性的電力難を、日本の一時的電力難に比較することはできないと思います。北朝鮮の経済制度的問題点が深刻で、電力難を体験するのです。自ら選択した道で困難を体験することなので、どうしようもありません」と。そして、「北朝鮮は慢性的なだけに、ある日突然、電気が満たされると驚くかもしれません(冗談です)」と返信してくる。
 まぁ,ちょっとしたユーモア感覚がある? 

 藤本氏の本にも、招待所でさえ、しばしば停電が起こるような北朝鮮と比較するのはたしかにヘンではあろう。そのあたりは十分に理解している金正男であった。そのほか世襲への疑問なども提示している。

 金正男&金正恩、どちらもスイスに留学し、自由主義の一端を味わった体験があり、祖国の現状にそれなりに疑問を感じているようではある。金正男は、中国の人質なのかどうか、彼の生活費は何処から支給されているのかなどは謎のままだが、19世紀的な世襲政治の様相が今の北朝鮮に残存していることがよく分かった。
 北朝鮮が中国の衛星国・属国・事実上の植民地としてこれからもしばらくは生きていくことになるのか? 北朝鮮の独裁体制を打破するためには、まず中共(中国共産党)の独裁体制を打破することが必要なのか。チベット、ウイグル、内モンゴル、そして北朝鮮、台湾、ひいては日本の今後の「独立」を考える上でも、北朝鮮の指導者の資質は少なからぬ影響を与えるだろう。それを考える上でも、この二冊は面白い本だった。
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