古本虫がさまよう オリバー・ストーンは、21世紀のジョージ・オーウェルだった!?
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オリバー・ストーンは、21世紀のジョージ・オーウェルだった!?
(2017・1・25・水曜日)





犬が人を噛んでもニュースにならないが、人が犬を噛めばニュースになる、意外性があるからだ…というのは、よく聞く話。だから、リベラルな人がトランプを批判してもあまり関心を呼ばない。だが、共和党右派の人がトランプを批判したら、そりゃちょっと面白いということで、大統領選挙中は、トランプ候補がいかに共和党主流からも嫌われているかということがよく報じられていた。

でも、彼が当選し、正式に大統領になると、さすがに共和党関係者は主流も傍流もなくなったようで、クリントンにこっそり投票したかはともかくとして、トランプ支援体制にはなったようだ。さんざん悪口言っていた人が、大臣なりたさにトランプ詣でをしていたかと(結局任命されなかったようだが)。
一方、選挙結果を尊重することなく、デモやらなんやらで、「(ノイジィ)マジョリティ」を彷彿させようとおもってか、映画監督のマイケル・ムーアさんや歌手のマドンナさんやらハリウッド女優などは、相も変わらず反トランプの叫び声を奏でているようだ。

そういう時に、リベラルなのに、トランプに一定の評価を与えると、おや、人が犬を噛んだ?といったかのような意外感を持つことになろう。

昨日(2016・1・24)の朝日朝刊に出ていたオリバー・ストーンさんのインタビュー「トランプ政権への期待」「介入主義を捨て戦争への道避ける」「プラスの変化応援」というのが目に止まった。自作映画『スノーデン』の宣伝もあって訪日したようだ。

彼のトランプ評価はもちろん、一捻りあるものだ。

「クリントン氏が勝っていれば危険だったと感じていました。彼女は本来の意味でのリベラルではない」「米国による新世界秩序を欲し、そのためには他国の体制を変えるのがよいと信じていると思います。ロシアを敵視し、非常に攻撃的。彼女が大統領になっていたら世界中で戦争や爆撃が増え、軍事費の浪費に陥っていたでしょう。第三次大戦の可能性さえあったと考えます」

ううむ…。クリントンは僕も嫌いだから(物の見方考え方以前に、太め中年腹デブ女は嫌いなので? 飽食はいかん?)、彼のクリントン批判もある程度頷けるが…。「第三次大戦の可能性さえあった」とは?  いやいや、ネバーセイネバーか。
 
「米国はこうした政策を変える必要があります。トランプ氏は『アメリカ・ファースト(米国第一主義)』を掲げ、他国の悪をやっつけに行こうなどと言いません。妙なことではありますが、この結果、政策を変えるべきだと考える人たちに近くなっています」「米軍を撤退させて介入主義が弱まり、自国経済を機能させてインフラを改善させるならすばらしいことです。これまで米国は自国経済に対処せず、多くが貧困層です。自国民を大事にしていません。ある面では自由放任主義かと思えば、別の面では規制が過剰です。トランプ氏もそう指摘しており、その点でも彼に賛成です」
 「トランプ氏はまともではないことも言います。かつてないくらいに雇用を増やすなんて、どうやって成し遂げられるのか私にはわからない。だがものすごい誇張だとしても、そこからよい部分を見いださねばなりません。少なくとも米国には新鮮なスタイルです」
 「彼は、イラク戦争は膨大な資産の無駄だった、と明確に語っています。正しい意見です。第2次大戦以降すべての戦争がそうです。ベトナム戦争はとてつもない無駄でした。けれども、明らかに大手メディアはトランプ氏を妨害したがっており、これには反対します。トランプ氏がプラスの変化を起こせるように応援しようじゃありませんか」
「例えばロシアや中国、中東、IS(過激派組織「イスラム国」)への新政策です。テロと戦うためロシアと協調したいと発言しており、これは正しい考えです」
 「米国の情報機関について私は極めて懐疑的です。米中央情報局(CIA)は長年、多くの間違いを犯してきました。キューバのピッグス湾事件やベトナム戦争、イラクの大量破壊兵器問題です。米国は世界をコントロールしたがり、他国の主権を認めたがらず、多くの国家を転覆させてきました。そんな情報機関をけなしているトランプ氏に賛成です。だが、そうしたことは社会で広く語られません。米国社会のリーダー層と反対の立場となるからです」


ううむ…。まぁ、CIAの杜撰さに関しては、ティム・ワイナーさんの『CIA秘録〈上〉〈下〉―その誕生から今日まで』 (文春文庫)という本で詳細に綴られている。まぁ、かなりズッコケもあったのは否定できない事実。

 ――リベラル派が多いハリウッドは反トランプ氏が目立ちます。
 「そのリベラルと呼ばれてきた人たちが、ものすごい介入主義者と化しています。リベラルと言われるクリントン氏をみればわかります。民主党は中道右派となり、左派を真に代表していません」

ううむ、まぁ、僕は「中道右派」が好きだけど。ネオコンも好きだし、サンダース的な「民主社会主義」も好きだし…?嫌いのなは左右の全体主義者(ファシズム&コミュニズム)だけ。

そのあと、映画「スノーデン」の話などが出てくる。

 「映画はスノーデン氏の証言に基づいてつくっています。彼が09年に横田基地内で勤務していた頃、日本国民を監視したがった米国が、日本側に協力を断られたものの監視を実行した場面も描きました。スノーデン氏は、日本が米国の利益に背いて同盟国でなくなった場合に備えて、日本のインフラに悪意のあるソフトウェアを仕込んだ、とも述懐しています。これは戦争行為でしょう。あくまで彼が語る話であり、確認をとろうにも米国家安全保障局(NSA)側と話すことは認められませんでした。でも、私は経験上、彼は事実を話していると思っています。米情報機関は映画の内容を否定するでしょう。米大手メディアも取り合いません。でも、そこから離れて考えてほしいと思います」
 「トランプ氏はスノーデン氏を非難しましたが、大統領に就任後、米国の情報機関がいかに堕落したものかを知れば、違った感情を持つようになるかもしれません。ニクソン元大統領は訪中し、レーガン元大統領はゴルバチョフ旧ソ連書記長と会談しました。トランプ氏も変わり得るでしょう。彼が情報機関の本質を知るにつれ、内部告発者寄りになっていく可能性があります。ウィキリークスに情報を提供したマニング上等兵も減刑となったし、スノーデン氏にもいずれ寛大な措置がなされることを願っています」


ふうむ……。

 ――映画「スノーデン」の制作にあたっては、米国からは出資が一切得られなかったそうですね。

 「米国のどの映画スタジオにも断られ、大変でした。彼らの多くは政府と関係があり、政府の何かを踏んでしまうのを恐れて自己規制したのだと思います。制作にはとても困難を伴い、なんとか配給会社は見つかりましたが、小さな会社です」
 ――かつて、監督は映画「JFK」などで、米大手スタジオ「ワーナー・ブラザース」とよく連携していました。
 「今回、ワーナーにも断られました。米国がテロとの戦いを宣告した01年以降、米国に批判的な映画をつくるのが難しくなり、そうした映画がどんどん減っています。米軍が過剰に支持・称賛されたり、CIAがヒーローに仕立てられたりする映画やテレビシリーズが目立ちます。非常に腹立たしいことです」


僕は、映画は特定嗜好分野のモノしか見ないので(?)、オリバー・ストーンさんの映画はあまり見た記憶がない。「スノーデン」に関しても、グレン・グリーンウォルドの『暴露 スノーデンが私に託したファイル』 (新潮社)も積んどくのまま。だが、この映画、ちょっと見たくはなった。この前見た映画『こころに剣士を』とは違った視点からではあろうが、やはり「自由」を考える上で重要な問題作のようにも思えるから。

そして、オリバー・ストーンのコメントで、ふむふむなるほど、と思ったのはラストのところ。

「米国のどの映画スタジオにも断られ、大変でした。彼らの多くは政府と関係があり、政府の何かを踏んでしまうのを恐れて自己規制したのだと思います。制作にはとても困難を伴い、なんとか配給会社は見つかりましたが、小さな会社です」「今回、ワーナーにも断られました。米国がテロとの戦いを宣告した01年以降、米国に批判的な映画をつくるのが難しくなり、そうした映画がどんどん減っています。米軍が過剰に支持・称賛されたり、CIAがヒーローに仕立てられたりする映画やテレビシリーズが目立ちます。非常に腹立たしいことです」

どこかで聞いた話?  そうそう、オーウェルがソ連神話と戦うために書いた『動物農場』を、つきあいのあったレフトブッククラブを刊行していたゴランツ社をはじめ、どこの出版社も相手にしてくれなかった時があった。書き上げた時はまだ第二次大戦中で、ソ連は「同盟国」だったからだ。それを、セッカー・アンド・ウォーバーグ社が拾い上げてくれて、やっと刊行にこぎつけたのだ。そのあたりの経緯については、この前、新訳として刊行された『動物農場』 (ハヤカワ文庫)の訳者(山形浩生氏)も指摘していた(かと思うのだが、その本がもう見当たらない? やれやれ)。
岩波文庫の『動物農場』は手元にあったが、その本に収録されている「出版の自由」で、オーウェルは、四つの出版社に断られた経緯を詳述している。


最初は受入れを表明しながら、「情報省」の高官よりよしたほうがいいといわれ断ることにした出版社を例示しつつ、オーウェルはこう書いていた。

「いま現在、思想と言論の自由をおびやかす最大の敵は、情報省その他の政府筋による直接の干渉ではない。出版社や編集者がある種のトピックを印刷しないでおこうとする場合、それは訴えられるのが怖いためではなく、世論が怖いためである。この国では、作家やジャーナリストが直面すべき最大の敵は、知識人の臆病心なのである。この事実はちゃんと論じられてしかるべきなのに、ろくに議論されてこなかったように思える」

そしてチャーチルの悪口はまだ書けてもスターリンの悪口は書けない状況を皮肉ってもいた。  
ともあれ、当時の英国の出版社やマスコミも、「多くは政府と関係があり、政府の何かを踏んでしまうのを恐れて自己規制した」ために、オーウェルの作品を刊行するのは拙いと判断したのだろう。

方向性はともかく、大きな勢い(大勢)に対して、反対しているという意味で、オーウェルもストーンも「反体制」ならぬ「反大勢」派なのだ。「自己規制」を排した自由な思考力のある「作家」なのだ。オーウェルを評価するなら、ストーンのこの発言も一定の評価を与えるべきだろう。

オーウェルは「ナショナリストは自己の陣営によってなされた暴虐行為は非難しないばかりか、そんなものは耳にもはいらないという珍しい能力を持っている」「ドイツの強制収容所を最も声高く非難した人々は、ソヴィエトにも強制収容所があることに全然気づかないか、あるいはせいぜい、ごくぼんやりとしか気がつかなかった。何百万という人々を餓死に追いやった一九九三年のウクライナの飢饉のような大事件も、大多数のソヴィエトびいきのイギリス人の目にはまるで留まらなかった」と『右であれ左であれわが祖国』 (平凡社)で綴っている。

もちろんティム・ワイナーの『CIA秘録〈上〉〈下〉―その誕生から今日まで』 にしても『FBI秘録 上下 その誕生から今日まで』 (文藝春秋)にしても、かなりいい加減なことをやってきたにしても,それなりの規制(裁判所や議会からのチェックなど)があり、大統領命令だけによって、全くの自由自在に破壊工作や違法捜査をやれたわけでもないことが綴られている。
公的な文書などに可能な限り接触し、関係者にも取材できる自由がアメリカではそれなりに保障されているからこそ、ティム・ワイナーはこれだけの本を書けた。しかし、ソ連、ロシアでは、ティム・ワイナーのような「取材環境」はまだ保障されていない。そもそも公的文書の公開は、自由世界に比べてまだまだ遅れている。だから、衝撃的な『KGB秘録』なんて本はまだ刊行は不可能だ。それ故に、その分、悪行が暴露されているCIA やFBI に比べて、KGBはある意味で国際的な批判の対象になっていないともいえようか。それはある意味でアンフェアともいえるが。

それにしても、ストーンに比べて、極めて単純化してトランプ批判を繰り返すのがマイケル・ムーアさんだ。一味違うね? 彼のいい加減さには、同じくトランプ嫌い(?)の、民主党リベラル的なデーブ・スペクターさんでさえ批判している。デヴィッド・T. ハーディ、 ジェイソン クラークの『アホでマヌケなマイケル・ムーア』 (白夜書房)は、マイケル・ムーアさんのドキュメンタリータッチの映画作品の中に、捏造的な歪曲があると指摘しており、巻頭でデープ・スペクターさんもそれを肯定していたかと。一読して「なるほど、その通り」と実感したものだ。こういう手法の「ドキュメンタリー映画」は眉唾物だなと。ソ連共産党と同じトリックを使っているのだ。どんな手口かは本書を読んでもらうとして、それはアラン・ジョベールの『歴史写真のトリック 政治権力と情報操作』 (朝日新聞社)にも似た手法というしかない。

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!
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