古本虫がさまよう 毎日といえば、岸井成格じゃなくて塚本哲也さんでしょうよ!
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毎日といえば、岸井成格じゃなくて塚本哲也さんでしょうよ!
(2016・10・26・水曜日)




昨日、知人から塚本哲也さんが亡くなったとの情報を得た。新聞でも報じられたようだ。

毎日新聞 10月25日(火)23時9分配信
 19世紀のオーストリア・ハンガリー帝国を舞台にした歴史作品で知られた作家の塚本哲也(つかもと・てつや)さんが22日、肺炎のため亡くなった。87歳。葬儀は近親者で営む。お別れの会を後日開く。喪主はおいの木村知勇(きむら・ともお)さん。
 1954年、毎日新聞社入社。ウィーンやプラハの特派員、論説委員などを経て、防衛大学校教授、東洋英和女学院大学長を歴任した。毎日新聞の連載「学者の森」(共同執筆)で日本新聞協会賞受賞。著書に「ガンと戦った昭和史--塚本憲甫と医師たち」(講談社ノンフィクション賞)、「エリザベート--ハプスブルク家最後の皇女」(大宅壮一ノンフィクション賞)など。


最後の作品となったのが、 『我が家の昭和平成史 がん医師とその妻、ピアニストと新聞記者の四重奏』 (文藝春秋企画出版部)。この本の「おわりに」は、こういう書き出しから始まる。


「朝起きると、子供のときからの習慣で、まず新聞を取りに行き読む。真っ先に開けるのは社会面の人の動静、特に長じてからは死亡記事である。知っていた人もいれば、知らない人もいるが、特に後年になって死亡記事は、世の移り変わり、人の世の寂しさを感ずる」……。そして最後には、この本を刊行するにあたってお世話になった編集者の名前を挙げ、 「つたなき人生をふり返ってみると、実に多くの人々にお世話になった。ここに心からお礼をいいたい。ありがとう」と。

こちらも還暦に近くなると、社会面の訃報欄に目が止まるようになってきた。自分より若い人の名前を見ると、おかわいそうにと思うし、90歳も過ぎていれば、まぁ、天寿をまっとうしたといえるよなと感じたり。我が家には、義理の母がいるだけで、「親」の四分の三はすでに死去。「お世話になった人々」も徐々に亡くなりつつはある……。

以前、岸井成格氏&佐高信氏の対談本『偽りの保守・安倍晋三の正体』 (講談社+α新書)を紹介した時、毎日の岸井氏が、「我々の上の世代はみんなそうだよ。新聞記者だって、我々の先輩はみんな社会党支持者か共産党支持者ばかりだった」と豪語しているけど、毎日新聞には、林三郎、三好修、林卓男、塚本哲也さん、徳岡孝夫さん といった保守中道の記者諸兄もたくさんおられましたよ。「みんな」というのは、明々白々なる「嘘」というか「間違い」ではないでしょうか? まぁ、自民ではなくとも、社会主義協会は大嫌いな社会党右派、民社党系の人もいただろうし--と書いたことがあった。いま、毎日新聞といえば、岸井さんの、あの顔を浮かべる人もいるかもしれないが、我々の世代は、毎日といえば塚本哲也さんとか徳岡孝夫さんだった。幸いなるかな? 以下再録(一部略)。



大宅賞作家・塚本哲也さんと椎名誠さんに共通する「処女体験」とは?
(2016・6・1・水曜日)

しばらく前に、5月の連休休みに「重厚長大本」にチャレンジしようとしてほぼ挫折したことは書いた通り。そのあとも、本屋で、白水社のイアン・カーショーの『ヒトラー(下)1936-1945 天罰 』 『ヒトラー(上)1889-1936 傲慢』を見かけて、その分厚さ、お値段の高さに唖然としたことも記した通り。

それに比べれば、スリムに見えるが、塚本哲也氏の『我が家の昭和平成史 がん医師とその妻、ピアニストと新聞記者の四重奏』  (文藝春秋企画出版) を入手。お値段は4000円(税込・2冊。分売不可)。二冊あわせての頁は二段組で1000頁を少し越える。やはりこれも大著、重厚長大本だ。

(内容紹介)は以下の通り。
塚本 哲也 著
――大宅壮一ノンフィクション賞作家が記す
家族の歩みと激動の中欧近現代史
がんセンター総長の父憲甫とそれを妻として支えた母、ウィーンでピアノ奏者として名を上げた妻ルリ子と欧州の変革を取材した著者。時代の大きなうねりを綴った渾身の集大成
毎日新聞社特派員としてプラハの春や分裂ドイツの真実を報道し続け、後年は『ガンと戦った昭和史― 塚本憲甫と医師たち』『エリザベート― ハプスブルク家最後の皇女』などノンフィクション作家として活躍する著者が時代をまとめる
――この本を『我が家の昭和平成史』としたのは、人間は社会の中で、一人では生きてゆけないと経験しているからである。「我が家」の中には、われわれと家内の両親のほかに、多くの知り合いとの付き合いという意味が入っている。(「おわりに」より)


読み始めたばかりだが、毎日新聞記者として、ヨーロッパ(ウィーン)に留学したく、先に音楽家として留学していた女性(塚本ルリ子さん)に向こうの様子を聴こうとして接近(?)。一目惚れしてしまい…といった個人史やら、試験に合格しウィーンに無事留学し、欧州の特派員の仕事もこなし、現地でのソ連からの亡命者たちと遭遇し、冷戦の実態を垣間見るようにもなる。そんな個人史を交えつつ、20世紀の現代史も綴られた希有な自叙伝であろうか。

ちなみに、塚本哲也さんはウィキペディアによると、こんな人(一部略)。
塚本 哲也(つかもと てつや、1929年4月29日 - )は、ノンフィクション作家。

群馬県生まれ。旧姓・木村。木村裕主は実兄。東京大学経済学部卒。毎日新聞社に入社し、政治記者として岸信介を担当する。1959年、オーストリア政府給費留学生として首都ウィーンに留学することになり、ウィーン留学経験のある人に話を聞きたいといって紹介されたのがピアニストの塚本ルリ子で、哲也のあとからルリ子は二度目のウィーン留学、1962年に結婚し塚本姓となった。ルリ子の父(塚本憲甫)は国立がんセンター総長などを務めた医師だった。

ウィーンで国際法を勉強して、その後毎日新聞ウィーン支局長として再度渡墺、のちプラハ支局長として68年のソ連軍プラハ侵攻を取材した。その後ボン支局長を経て帰国、論説委員、毎日新聞連載「学者の森」(共同執筆)で日本新聞協会賞を受賞、退職後は、防衛大学校教授、同図書館長を務めながら執筆活動を行い、1987年に『ガンと戦った昭和史』で講談社ノンフィクション賞(これはルリ子の父を描いたものである)。兄木村裕主も、1990年に講談社ノンフィクション賞を受賞し兄弟受賞となった。
1992年、『エリザベート』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞、99年より東洋英和女学院大学学長を2003年まで務めた。オーストリア共和国文化功労勲章、オーストリア共和国有功大栄誉銀章受章。
2002年、脳出血で倒れ、右半身麻痺となる。群馬県のケアホーム新生会に移住し、リハビリを兼ねて左手で打つパソコンを始め著述活動を再開、『マリー・ルイーゼ』を執筆中の2005年に、ルリ子夫人は、腹部大動脈瘤破裂で急逝している。

著書[編集]
フィンランド化 ソ連外交の論理と現実 (教育社、1978年)
ガンと戦った昭和史 塚本憲甫と医師たち (文藝春秋、1986年/文春文庫、1995年)
平和ドイツの時代 (文藝春秋、1991年)
エリザベート ハプスブルク家最後の皇女 (文藝春秋、1992年/文春文庫上下、2003年)
わが青春のハプスブルク 皇妃エリザベートとその時代 (文藝春秋、1996年/文春文庫1999年)
マリー・ルイーゼ ナポレオンの皇妃からパルマ公国女王へ (文藝春秋、2006年/文春文庫上下、2009年12月)
メッテルニヒ 危機と混迷を乗り切った保守政治家 (文藝春秋、2009年11月)



ウィキペディアに出ている塚本氏の本は全部読んだ記憶がある。『エリザベート ハプスブルク家最後の皇女』は、赤いというかピンクというか、社会民主主義的な皇女エリザベートを介在にした面白い歴史物語だった。『メッテルニヒ』も、教科書に出てくる人物としてしか名前を知らなかったが、エドマンド・バークなども出てきて、なるほど、権謀術数の外交とはこうやるものかと納得したりした次第。いずれも重厚長大本。

しかし、塚本さんの本で、とりわけ、懐かしいのは『フィンランド化 ソ連外交の理論と現実』 (教育社)だ。これは教育社が一時出していた「新書」シリーズ(分量は薄いが中味は重厚)。1978年12月に刊行されている。意外なことに塚本氏の処女作であろうか。これはリアルタイムでは読んでないかと思う。当時、僕は未成年で大学生だったか。そのころ、「ソ連脅威論」が高まっていた。にもかかわらず、「ソ連を祖国」とみなしていた某新聞や某進歩的知識人は、ソ連は脅威ではないと言い募り、「日本はフィンランド化している」という見解には、いや、フィンランド化や東欧化は悪いものではないなどと妄言を吐いていたものだった。ということで、そのあと、古本屋で安く購入し、一読した。冷静に「フィンランド化」の実態を論じた本だった。当時の国際政治学者が見て見ぬフリをしていた「フィンランド化」を小冊子とはいえ、取り上げたのは知的勇気も必要だったと思う。

ところで、教育社のこの新書シリーズで思い出すのは、椎名誠氏も処女作をここから出していたことだ。『クレジットとキャッシュレス社会』 (教育社)。1979年12月の刊行。塚本さんからおくれること一年。
椎名氏は、自著『自走式漂流記 1944-1996』 (新潮文庫)で、たしか、この本がなかなか手に入らず、早稲田の古本屋で30円で購入したと書いてあったかと。



ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!




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