古本虫がさまよう アメリカ兵士は太平洋戦争中、サッカレーの『恋の未亡人』を愛読し、自分が戦死して妻が『若未亡人』になり、子供の家庭教師と出来てしまうことを恐れていた?
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アメリカ兵士は太平洋戦争中、サッカレーの『恋の未亡人』を愛読し、自分が戦死して妻が『若未亡人』になり、子供の家庭教師と出来てしまうことを恐れていた?
(2016・7・6・水曜日)






モリー・グプティル・マニングの『戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊』 (東京創元社)を読んだ。


内容(「BOOK」データベースより)

第二次世界大戦終結までに、ナチス・ドイツは発禁・焚書によって一億冊を超える書物をこの世から消し去った。対するアメリカは、戦地の兵隊たちに本を送り続けた―その数、およそ一億四千万冊。アメリカの図書館員たちは、全国から寄付された書籍を兵士に送る図書運動を展開し、軍と出版業界は、兵士用に作られた新しいペーパーバック“兵隊文庫”を発行して、あらゆるジャンルの本を世界中の戦地に送り届けた。本のかたちを、そして社会を根底から変えた史上最大の図書作戦の全貌を描く、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラーの傑作ノンフィクション!



戦争開始初期のころは、一般に流通販売されていた図書の供出寄付を募り、それらを兵士たちに送っていたようだ。ただ、1942年3月の時点で400万冊が集まったものの150万冊は兵士には不向きで仕分所で取り除かれたりしたという。
『ある葬儀屋の回想』『1870年の神学理論』などはカットされという。戦地に向かう若い男の兵士向けの図書ではない?と判断されたようだ。タイトルからして、確かに……。

やがて政府と出版社の協力で「兵隊文庫」が創刊されることになる。軍服のポケットに入るように、よりミニサイズのペーパーバックとなっていく。その選書選定をめぐってもいろいろとあったようだが……。

その全冊リストが収録されているが、サッカレーの『恋の未亡人 ヘンリ・エズモンド』が入っている。ううむ。サッカレーか。書名からすると、フフフの本のように思えるが……。サッカレーって、そもそも読んだことがない。 『虚栄の市』 (岩波文庫)は聞いたことはあるが……。

戦後の刊行になるが、ガードナーの『危険な未亡人』 (ハヤカワ文庫)も別にいやらしくないし?
 ただ、西門京氏の『若未亡人』 (フランス書院文庫)は、娘の家庭教師をしている10代の少年と、その母親で30代前半の未亡人との凄まじいまでの愛欲を描いた傑作でフフフの小説だ。

ともあれ、米兵がサッカレーの先の作品を読んだからといって、「東京ローズ」の対米諜報ラジオ番組を聴きながら、俺が戦死したら妻は未亡人になり、そして娘の家庭教師をしているジュニアといい仲になってしまう……なんて心配したりはしていなかった? いや、ネバーセイネバー?

ともあれ、サイパンで日本軍との死闘で戦死した兵士の一人に関する記述―――

その兵卒は、交代要員としてやって来たばかりで、やる気に満ち溢れていました。彼は前線に立ち、海兵隊員として立派に戦ったのです。何かが尻ポケットから突き出ていました。忘れもしません。それは黄色の兵隊文庫でした。時間があると読んでいたのでしょう。本の題名だけが見えました……


サイパンの日米死闘に関しては、最近も、イアン・トールの『太平洋の試練 ガダルカナルからサイパン陥落まで 上下』 (文藝春秋)で描かれていた。「兵隊文庫」の話は特に出てこなかったと思うが、そういうシーンが実際にあったのだろう。

日本でも、兵隊用に特製の岩波文庫などが作成されたと聞いたことがある。『万葉集』などが収録されたのではなかったか?(未確認)。未読だが、押田信子氏の『兵士のアイドル 幻の慰問雑誌に見るもうひとつの戦争』 (旬報社)という本が出ている。

これは、日本軍兵士向けの「慰問雑誌」の歴史を取り扱った本のようだ。「内容紹介」によると――。


原節子、田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子、李香蘭ら、現代のAKBと肩を並べるような人気だった彼女たちが誌面を飾り、 読者を「兵士」に限定して無償で配布されていた雑誌『戦線文庫』である。戦時中の言論統制を考えれば、異次元のような娯楽大衆性と内容量を備えた稀有な雑誌であり、さらに、戦後には忽然と姿を消したゆえに幻の雑誌とも言われ、発行の背景や詳しい内実が公にされることはなかった。今ここに、隠れていた戦争の新たな姿と事実を、あなたに公開する。元祖アイドルとも言える彼女たちが結んだ、戦地と銃後の絆とはいったいなにか。人間の姿と営み、女性たちの生きざま、国民を戦地に動員した政府と軍部の思惑など、語られることのなかった真実と現代につながる様々なことが見えてくる。<ノンフィクション/貴重なカラーグラビアも収録>

戦地の港に船が着き、日本からの荷物が届けられる。何日も何日も心待ちにしていた、兵士たちの一番嬉しいときだ。汗と泥にまみれた青年たちの手に一冊ずつ渡されたのは、美しく、可憐な女性が表紙に描かれた慰問雑誌である。ウオー!誰からともなく湧き上がる大きな歓声と天にまで届くような拍手。彼らが生きて、戦うために必要な命の水がその雑誌にはたっぷりと詰めこまれていた。表紙には鮮やかな真紅の文字で『戰線文庫』と書いてあった。(はじめにより)



「戦線文庫」に関しては、こんな情報もネットにある。

歴史に埋もれた「戦線文庫」◇戦時中に発行されていた旧海軍の月刊誌を研究◇

橋本健午(ノンフィクション作家)(日本経済新聞05・04・27「文化」欄)
 「こんなものがあるんだけど……」。知り合いの日本出版社社長、矢崎泰夫さんから古めかしい雑誌を見せられたのは二〇〇二年秋だった。 小ぶりのB6判で、二百四十ページほど。表紙には目元ぱっちりの和服姿の女性と軍艦が描かれている。誌名は「戦線文庫」。 初めて目にする雑誌だった。
  国会図書館にも無い
 矢崎さんによると、旧日本海軍が戦時中、戦地の兵士向けに配布していた月刊誌で、彼の父親が発行に携わっていた。 手元にだいたい残っているが、欠本もあり、全体像がわかっていないとのこと。今では歴史の中に埋没し、忘れ去られた雑誌だという。
 「戦線文庫の存在を世に知らせたい。力を貸して欲しい」。好奇心をくすぐられた私は即座に引き受け、彼との共同研究が始まった。
 意気込んだものの、最初は四苦八苦した。欠本の存在やその内容を確かめようと国立国会図書館に足を運んだが、一冊も残っていない。 旧海軍関係者の全国的組織「水交会」にも保存されていなかった。それでも図書館や文学館、古書店などに当たるうちに、 次第に全体像が浮かんできた。
 創刊は一九三八年(昭和十三年)九月。日中戦争開戦の翌年である。B6判だが、途中からA5判に変わっている。 毎号総ルビの体裁で、小説や落語に漫画、浪曲、戦況報告、それに囲碁将棋やコントなどのコーナーもあるぜいたくな雑誌だ。
 例えば創刊号を見ると、菊池寛の小説「兄と妹」、子母沢寛の小説「無敵の秋太郎」などとともに、川口松太郎、柳家金語楼、 西條八十らの名前がある。さらに巻頭グラビアでは田中絹代、桑野通子らが「頑張れ!海軍の皆様/長期戦に感謝は愈々(いよいよ)深し」と声援を送っている。
 ページ数は創刊当初二百三十八ページだったが、二十二号(四〇年八月刊)から二百ページに減っている。用紙不足が深刻化したためだろう。 ただ、このページ数は破格だったようだ。五十六号(四三年六月刊)に「他の雑誌はほとんど百頁内外となったが、本誌は現在の頁をもって、 日本一の雑誌としてみなさまに送る」といったことが書かれている。
  厳しくなかった検閲
 この雑誌に寄稿していた漫画界の重鎮、杉浦幸雄さんに二年前、インタビューできたのは幸運だった。 「戦線文庫は特別ですよ、何描いてもいいんだから。こんな本は戦時中なかったんですよ、一般向きには」。 軍国主義の当時、表現は制限されていた。しかし、海軍お墨付きの戦線文庫は検閲もさほど厳格でなく、寄稿者も比較的自由に表現できたのだろう。 貴重な証言を下さった杉浦さんは残念ながら昨年亡くなられた。
 ところで、矢崎さんが父親から伝え聞いたところによると、発行部数は四二、四三年ごろの最盛期で二百万部だったという。 確認はできていないが、真実ならば驚くべき数字だ。終戦まで刊行されたという新聞記事があるが、現在までに確認できたのは、 七十七号(四五年三月刊)まで。それは今後の研究課題だ。
 旧海軍はこの雑誌を兵士に無料で配っていたが、その目的が第一に戦意高揚であるのは間違いない。創刊号の編集後記には、 武士の絵の隣に「勝って兜の緒を締めよ」と記されている。ただし一方で、慰撫(いぶ)、娯楽の側面も強かった。
 兵士たちはつかの間だけれど、戦争という極限状態を忘れることができたのでないか。大げさな言い方かもしれないが、 研究を通じ、雑誌の力を改めて認識させられた。
  旧陸軍も同様の雑誌
 こうした成果をもとに、日本出版社から「戦線文庫」の復刻版が六月に出る予定だ。三号と五十三号の二冊を完全復刻し、 同時に他の号の表紙と記事の一部抜粋して収録、私は解説文を担当した。
 調査の過程で、内地の人々向けに「戦線文庫 銃後読物」という「戦線文庫」とほぼ同じ内容の雑誌が四〇年暮れから四十銭で売られていたことが判明。 また、旧陸軍も「戦線文庫」と同じような月刊誌「陣中倶楽部」を出していたことがわかった。
 大戦とともに歩み、終刊を迎えたこれらの雑誌には、なお不明な点が多い。調査研究はまだまだ終わりそうにない。



まぁ、日米両政府の考えた、こうした「活字」「雑誌」などを使った軍人慰撫策はいろいろと考察にあたいするものがあろう。

焚書をしたというヒトラーにしても、ティモシー・ライバックの『ヒトラーの図書館』 (文春文庫)なる本があり、かなりの読書家だったようだ。
これまた、ヒットラー以上に粛清(殺戮)が大好きだった毛沢東も. 逄先知氏の『毛沢東の読書生活 秘書がみた思想の源泉』 (サイマル出版会)を見ると、本も女性同様に(?)かなり好きだったようだ。
スターリンは? これは単なるバカだったのか? いや、スターリンの蔵書に関する興味深い記述がドミートリー・ヴォルコゴーノフ著の『勝利と悲劇 上下 』 (朝日新聞社)にあるらしい(この本は積んどくしているが行方不明で未確認。ネット情報によると、その本によれば、 1925年スターリンは、個人用の蔵書を作るよう補佐官に指示し、具体的にメモを作成しているとのこと)。

ともあれ、本書(『戦地の図書館 海を越えた一億四千万冊』)の巻末リストを見ると、英国左翼のゴランツ書店による「レフトブッククラブ」の選書も想起される。たしか、晶文社から訳出されていたジョン・ルイスの『出版と読書 レフト・ブック・クラブの歴史』の中に、刊行されたブック全リストが掲載されていたかと。オーウェルの作品もあったから、玉石混淆ではあろうが、こういうシリーズ、とにもかくにも、多種多様であり、何か参考になる本があることだろう。

今日の戦場でも、やはり戦地では紙の本になるのではないか。「電子本」を手にするわけにもなかなかいくまい。小型化され、スマホやキンドルで本が読めるとしても……。やはり「紙」の本が役立つ。電池の消耗を気にする必要もない。読み終えれば、人に渡すことも簡単に可能。交換もできる。

戦争はそんなに楽しくはないだろうが、読書はおおむね楽しいもの。

戦後の一時期お菓子のオマケだった「カバヤ文庫」については、リアルタイムでは知らない。古本市で、高価格のカバヤ文庫の実物を見たことがある程度。

中学生のころ、学研や旺文社から出ていた学習雑誌「中学時代」「中学コース」などの付録によくついていた文庫サイズ(もっと小さい?)の小説本などにも似たつくりだったかと。カバヤ文庫は、そんな感じのように思えた(といっても、一度見た限りなので記憶は薄れている)。この分野では、岡長平氏編の『カバヤ児童文庫の世界』  (岡山文庫)を紹介したことがある。以下再録的になるが……。 文字通り、文庫サイズの本。
岡山市にある日本文教出版株式会社が発行しているようだ。「岡山文庫」というぐらいだから、当然のことながら「岡山」に関する本をもっぱら多々出しているようで、この岡山文庫も300冊近く刊行している。

カバヤ児童文庫というのは、岡山市に本社を置き今も盛業中の「カバヤ食品」が、戦後まもないころに、キャラメルのおまけとして毎週ほぼ一冊ずつ発行した児童向け文学作品を収めた「叢書」である。
当時十円のキャラメルを買うと、中に文庫券が一枚入っていて、これを50枚集めて送ると、好きな本が一冊もらえる仕組みになっていたという。

発行の経緯は、昭和27年にカバヤ食品に宣伝課長としてスカウトされた原敏氏たちによるアイデアからだったようだ。
「おまけ」の類は、いつの世も、子供たちの射幸心を煽るからよくないといわれていたが、景品が本ならいいではないかと(僕たちが子供のころにも、仮面ライダーのおまけほしさにお菓子を買ってもそれを食べないで、捨てるのが問題になったりしたこともあったかと)。
「カバヤ文庫」は、B6判125ページのハードカバーの体裁。著作権の切れた名作をダイジェストし、製作コストを抑え、キャラメル50箱買って、50枚の文庫券を送れば一冊貰えるようにしたという。希望者が殺到し、学校によってはみんなで協力して、この「叢書」を学級文庫に揃えるなんてこともあったそうな。

しかし、本だけではなくマンガもおまけにしようということでマンガブックも創刊したら、当時の風潮もあったのだろうが、活字本はいいけどマンガ本はダメということで親などの理解が得られなかったのか、人気低落となり、文庫のほうも刊行停止になったそうな。

昭和27年8月から刊行したそうだが、百数十点だして昭和29年で終わったという。

このカバヤ文庫については、以前、坪内稔典氏の『おまけの名作』 (いんてる社)を読んだことがあり、その本で初めて、そういうものがあることを知った。

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!
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