古本虫がさまよう 常盤新平氏から小田光雄氏に至る、この半世紀近い「出版状況」の変化をどう見るか?
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常盤新平氏から小田光雄氏に至る、この半世紀近い「出版状況」の変化をどう見るか?
(2016・7・5・火曜日)






小田光雄氏の『クロニクル出版状況 2012・1→2015・12』 (論創社)を読んだ。

サブタイトルにある4年間のさまざまな出版状況について論じたコラム・エッセイ本。珍しい新刊本の紹介や、図書館やブックオフやアマゾンの動向についてのコラムなどあり。とりわけ新刊書店の衰亡や書籍雑誌の売上低下など、いろいろとシビアに出版業界のトレンドを追ったノンフイクション・レポートといえよう。

僕も何度か足を運んだ三島の北山書店(古本屋・閉店)や「古書ふみくら」もレポートしている。

7月になり、「北海道&東日本パス」も発売中で利用もできる季節となった。「青春18切符」も同様か。静岡までなら各停利用でも朝の10時ごろに到着可能で、一回りしたあと、三島や小田原に寄って帰宅ということはラクラク可能なのだが。さすがに「仙台」「名古屋」「浜松」ともなると、往復各停というのは疲れる……。

「古書通信」の小田氏の連載は拝読していたが、ブログ的なものもあるようだ(そのブログなどの集大成が本書か)。今後は、「古本屋ツアーインジャパン」「岡崎武志さんのブログ」と並んで拝読することにしようと思った。分厚い本だがすぐに一読できた(ただし電車の中では読みにくい。帰宅してから食卓にて……)。


それと関連する書というわけではないが、常盤新平氏の『翻訳出版編集後記』 (幻戯書房)を読んだ。

1959年に早川書房に入社して、翻訳本の編集者として仕事をした常盤氏の翻訳業務に関する回想録。主に「出版ニュース」に連載されたものをまとめたもの。

常盤氏が、早川書房在社中の、主に翻訳書の編集者(&翻訳者)生活をしていた時に手がけた本や翻訳者仲間たちや翻訳エージェントの関係者たちとの思い出話を綴ったものだ。退社後、自らが翻訳者になってからの日々も綴られている。
小田氏が取り上げている21世紀の出版状況と比べると、こちらはいささか牧歌的な雰囲気を感じもする。

翻訳のための前金も二〇〇ドル前後の時代。早川にとって、海外ミステリ分野では、さほどのライバル会社もなかった。日本の翻訳文学市場も微々たるものだったし……。しかし徐々に市場も拡大し、競争相手も出てくる。アメリカでベストセラーなら日本でもそうなる―――わけでもなく。当たり外れもある翻訳の世界。向こうの書評専門雑誌というか、『パブリッシャーズ・ウィークリー』などを読んだり、タトルなどの関係者から情報を伝達されたりして目ぼしい本を見つけていったという。

僕は、学生時代から翻訳モノ(ノンフィクション含む)では、角川文庫や早川書房(単行本&文庫)の翻訳本を集めるのが好きだった。積んどく本が多いが、常磐氏の回想の中にも、手にした数々の書名が出てきて懐かしく感じた。

『やむをえぬ事情により』『ある編集者のオデッセイ』『新聞裁判』『スイス銀行』『バルジ大作戦』『大日本帝国の興亡』『アスピリン・エイジ』『ベルリンの壁のかなたに』『年上の女を讃える  ヴァイダ・アンドラーシュの愛の回想』『ヒルダよ眠れ』……。早川の刊行ではないが、コジンスキーの『異端の鳥』 (角川書店・角川文庫)への言及もある。


「ホリディ」という新雑誌をまかされることになり、刊行前に扇谷正造氏に相談したところ、雑誌名は「東京人」にしたまえと助言されたとか。「ニューヨーカー」のイメージが浮かんだからではないかと。ううむ。「ホリディ」は「三号雑誌」ならぬ一号刊行してすぐさま廃刊になったとのこと。「東京人」は別の形で創刊され、今日に至っているが。

常盤さんは2013年に亡くなり、このエッセイも1977年ごろに雑誌(「出版ニュース」)に書かれたものをまとめたもの。したがって、執筆連載時の時代が「現在」になっており、その時点からの60年代以降の回顧談話になっているから、2016年の段階で読むと、半世紀弱近く昔になるが、僕のような50代半ばすぎの人間から見ると、まだ「リアルタイム」の時期とも重なっており、感慨深いものがあった。

常盤さんがよく通っていた神保町の洋書専門の「東京泰文社」も、学生時代に足繁く通ったものだ。

もちろん、英語なんかよめないから、たまに色情的なカバーイラストのポルノ小説を買った程度。結構ペーパーバックにしては高かった。当時(70年代末ごろ)で800円前後してなかったか? 普通の分野のペーパーバックはそんなに高くはなかったから、スケベ少年たちは足元を見られていた? ブックオフが、フランス書院なとのエロ小説を、紙が変色したものでないと108円コーナーには置かず、定価700円前後のものは、おおむね450円~400円ぐらいで売っているようなものか? それにしても、この泰文社は、どのあたりにあったか? 書泉グランデの前後だったかと記憶しているが。グランデといえば、そのころ労使紛争があったのか、店頭でよく座り込みなどをしている人がいたように記憶している。不確かだが。

あるブログによると、泰文社は、「古賀書店(音楽書)と豊田書房(歌舞伎・演芸書)の間に東京泰文社は1996年まであった」とのこと。

でも、昔を懐かしがって、あのころはよかったというのは考えものかも?

仕事のためにある「古本」が必要になり、あのあたりの古本屋ならあるんじゃないかと探し回りつつ、なかなか見つからず……。やっとみつけた時の喜び? いや、見つけられなかった時の虚しさ?

いまなら、アマゾンやら「日本の古本屋」やら「図書館横断検索」で、数分にして、探求書があるかないか瞬時に判断可能(「ブックオフ」がそうした検索機能を完備していないのはなぜ? 完備している? いや、していないのでは?)。
どっちが幸せか?  ううむ、どっちも、それなりに幸せ!?

常盤氏もしばしば社を抜け出し、神保町の古本屋街に足を運んでいる。

そんな無駄足(?)によって、「不必要と思われる本や雑誌を買っていた」「早川書房の編集室から抜け出して、神田の古本屋を歩いた」「つぎつぎに出ては消えてゆく新しい本を見ていると、古本屋をのぞくのは、消えていかずにいつまでも残るものを見ているようで、精神衛生によかった。古書店も私にとっては勉強の場だった」とのこと。

「古本屋敷」となった我が家を見るにつけ、さて、常盤氏と違って、僕の場合は、さほどの役にも立たないまま、無駄な月日を重ねていったようにも思える。あぁ、無情?

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!
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