古本虫がさまよう 日本には一人の「顔伯釣」も「サハロフ」もいない! いや市橋達也がいるか?
2017 08 / 07 last month≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫09 next month








日本には一人の「顔伯釣」も「サハロフ」もいない! いや市橋達也がいるか?
(2016・6・18・土曜日)





顔伯釣氏の『「暗黒・中国」からの脱出 逃亡・逮捕・拷問・脱獄』 (文春新書)を読んだ。

内容紹介→10万人を動かした中国最大の民主化勢力幹部 逃亡2万キロの全記録
巨額の贈収賄や不正ビジネスが横行する中国共産党、資産隠匿に手を染める高級幹部たち……。
腐り切った現体制に業を煮やした共産党若手エリート顔伯鈞らは、社会問題を考える人々の食事会に参加したのをきっかけに、次第に体制改革運動に身を投じてゆく。
顔伯鈞らを待ち受けていたのは、国内安全保安局(いわゆる秘密警察、中国におけるゲシュタポ的機関)による監視、尾行、盗聴だった。そして逮捕、監禁、拷問すれすれの非人道的な取り調べ……エスカレートする弾圧から逃れるため、彼らは家族も捨てて逃亡を開始する。
中国国内には当局の厳重な監視をかいくぐって民主化シンパたちの地下ネットワークが張り巡らされている。か細い糸をたどって潜伏先を探すが、すぐに当局の包囲網が彼らを追い込む。
逮捕された後、当局の取り調べは熾烈を極める。自白しない顔伯鈞の目の前に、妻まで連れてこられる。
運良く獄から出られても、監視の目はつきまとう。
息詰まるようなサスペンスが次から次へとやってくる中、それでも彼らは逃げ続ける。チベット、香港、ミャンマー、タイ……。拠点を移しながら活動を続け、ときおり北京にもこっそり戻り、体制改革へのアピールを続けてゆく。
再び捕まったら一巻の終わり。ボロ雑巾のようになるまで人間性を破壊され、闇に葬られる。
祖国の民主化のため、凄まじい人権侵害と闘い続ける英雄豪傑たちの群像は、まるで現代の『水滸伝』だ。



日本でいえば、顔氏は、情報公開法に基づいて政治家などの政治資金の使い方を精査しようとした程度のことで、亡命を余儀なくされたようなものだろう。舛添要一都知事の金銭スキャンダルについて、「爆買い」に来ている中国人になぜ質問しないのか? 彼らからすれば、その「金額」の低さ(?)に唖然とするかもしれないのに。いちいち領収書とっているなんて「良心的」にさえ中国人からは見えるかもしれない?

携帯をもっているだけで位置情報を調べられたり、国内移動で汽車に乗る時も身分証明書が必要だったり……。水攻めのような「拷問」を受けたり……。タイへの亡命を余儀なくされるが、タイもいささか中共に浸食されており、安全地域といえなくなりつつあるとのこと。
とにもかくにも、「人権弾圧」の「総合商社」みたいな悪例のオンパレードだ。こういう本を、日本の「人権弁護士」であられる伊藤和子さんなどに一読してもらい、顔さんのために奮起してほしいと願わずにはいられない(彼女の「人権本」に関しては、末尾に再録)。


脱出劇(実話)といえば、圧倒的に共産圏からのものが多い。以前も紹介しているが、J.M.バウェルの『わが足の続くかぎり ドイツ人将校シベリア脱出記』 (六興出版部)という本は傑作。これは、題名からもわかるように、ソ連に囚われたドイツ人将校がシベリアからイランへ逃げる脱出記である。ちなみにこの本は、ヨーゼフ・マルティン・バウアーの発音で、 『我が足を信じて 極寒のシベリアを脱出、故国に生還した男の物語』 として、文芸社から最近「復刊」されている。この本を原案原作として、 「9000マイルの約束」という脱出映画も上映されたことがある。

類似作として、 『脱出記  シベリアからインドまで歩いた男たち』 (スラヴォミール・ラウイッツ著・ヴィレッジブックス)があり、映画化(「ウェイバック 脱出6500㎞」)もされている。9000マイルと6500キロとどっちが長いか?

ともあれ、日本で、こんな虐待を受ける政治犯など一人もいないだろう。こんな逃亡劇を必要とする政治犯など一人もいないだろう。いや、未読だが、逃亡劇なら、市橋達也『逮捕されるまで 空白の2年7カ月の記録』 (幻冬舎)があるか。彼は単なる殺人犯であり、逃亡して追及される必然性はあった。彼の逃亡劇は、顔氏のそれと比較する点では若干の一読の価値はあるのかもしれないが。


北朝鮮の人権擁護のために「国境を越えて」とはなぜならないのか?
(2014・1・14・火曜日)

弁護士で、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子氏の『人権は国境を越えて』 (岩波ジュニア新書)を読んだ。

「国境を越えて」といいながら、北朝鮮の人権に関しては全くのノーコメント。北朝鮮という国名は、ある箇所で一カ所だけ出てくるけど、それは単なる説明事項の中での( )内の表記として出るだけ。 中国の人権に関しては、一カ所だけ、ちょっと一言、数行程度、国内の裁判制度の問題点(汚職など)に触れているだけ。いわゆる周辺民族との軋轢などに関連しての人権問題などはまったく出てこない。

一方、3・11以降の体育館などに避難した人々の人権をとても気にしたり、北朝鮮より遠いフィリッピンやカンボジアやビルマ(ミャンマー)での人権問題には章まで立てて、現地にまででかけたりしてあれやこれや圧力をかけるように日本の駐在大使などにも働きかけたりもしているし、現地の人権活動家にもこまめに接している。

その努力は立派だと思うけど、その熱意を日本の一番近い隣国に対して全く発揮しないのはなぜなのか。不可解である。不思議である。
人権弾圧国家としては、北朝鮮は最悪なのではないのか? ビルマにしても、フィリッピンにしても、野党もあり、反体制派のリーダーもいる。
半世紀も前の「慰安婦」問題も取り上げているが、拉致問題などは何の指摘もしていない。

この本では、韓国やタイは特に取り上げられていないけど、あれだけ反政府運動もあるタイや、選挙による政権交代が日常化している韓国では、ことさら取り上げるというか、初歩的な人権侵害問題はないから本の中ではことさら章をたててまでとりあげないというのはまだわかる。
しかし、北朝鮮には人権のかけらもないのが現状だということは自明。中国でも、国内の反体制派知識人の言論の自由の問題以前に、ウイグルやチベット、南モンゴルなどの人権問題、民族問題が深刻な状況であるというのはこれまた自明なのに、そういう問題は全く言及されていない。 「障害者」と書かず「障がい者」と書くぐらいの人だから、心から人権問題に関心を寄せているのだろうが…。
ジュニア新書だから、薄くて、そういう国々を取り上げる余裕が紙数の都合でなかったのかもしれない?

この本は、大学生以下の世代というか、中高生向けの本といえるかもしれない。しかし、本書だけ読んで、アジアの人権問題を理解したつもりになってもらっては困る。この本に根本的に欠如している、もう一つの人権問題を見落とすことなく、この本の若い読者は、以下の本も別途一読してほしい。

まず、同じ岩波書店から出ている楊海英氏の『墓標なき草原 上下』 (岩波書店)は必読。
また同じ著者の『植民地としてのモンゴル 中国の官制ナショナリズムと革命思想』 (勉誠出版)も重要。
中国(中共)という国家が、建国以降、周辺民族に対して、どのような人権侵害を行なってきたかが綴られている。

水谷尚子氏の『中国を追われたウイグル人 亡命者が語る政治弾圧』 (文春新書)は、ウイグルに対する中共の人権弾圧のすさまじさが綴られている。

チベット僧パルデン・ギャツォが、自ら弾圧を受けた体験記『雪の下の炎』 (新潮社)も必読。

最後に、野口孝行氏の『脱北、逃避行』 (新人物往来社・文春文庫)。

これは、伊藤弁護士などはやっていないかもしれないが、同じくNGO活動を展開している日本人青年による脱北者支援活動を綴った体験記。
北朝鮮から逃げてきた脱北者は、中国国内に辿りついただけではまだ自由になれない。
中国を横切り、ベトナムを通り抜け、カンボジアまで辿り着かないと「自由」は得られない。

野口氏は、そうした脱出路に脱北者と同行し、成功する時もあったが、中国国内で逮捕され、獄につながれたことも…。中国は好きだったのに、こんな酷いことをする国とは…と述懐する野口氏のこの本は、伊藤氏の本に比べて、はるかに重いものがある。

文字通り「北朝鮮の脱北者の人権のために国境を越えて」活動をしているのだから。
岩波ジュニア新書の読者は、こういう本も読んで、より多角的に人権問題を捉えるべきだろう。偏った認識を持たないためにも。より、大きな巨悪、一部の奇妙な思考をする人が隠したがる現実と闘う知的勇気を持つためにも。

ともあれ、全然、テーマが異なるが、秋田喜代美氏監修(稲葉茂勝氏・文)の『調べよう! 世界の本屋さん 本屋さんのすべてがわかる本1 』 (ミネルヴァ書房)を読んだ。

絵本風の薄い本であるが、世界各国の本屋さん事情が紹介されている。神保町やヘイ・オン・ワイなど古本屋街も出てくる。

また北朝鮮の国営書店も出てくるが、 「権力に反対する本などを置く本屋は、北朝鮮の社会ではまったく考えられません。権力にとって不都合な本は存在できないのです」と的確に指摘。

本屋内部の写真も出てくるが、並んでいる本の三分の一が金日成全集や労働党の書籍、三分の一はガイドブック、指導者のバッジなど、残り三分の一は金日成肖像画、祭壇の花など…であると。

「これで本屋と言えるだろうか」と手厳しい。こんな、頁数の薄い写真中心の絵本的な本でも、国境を越えた視点で、北朝鮮の問題点、人権、言論の自由について論じているというのに…。


ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!
スポンサーサイト
 | 共産主義  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
Secret




TrackBack URL
→http://kesutora.blog103.fc2.com/tb.php/2558-df1422a1

プロフィール

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

カテゴリ