古本虫がさまよう 「情報の鎖国状態は、もはや今日の北京にはない」と1994年に妄語した加藤周一は「知の虚人」だったのか?
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「情報の鎖国状態は、もはや今日の北京にはない」と1994年に妄語した加藤周一は「知の虚人」だったのか?
(2016・5・26・木曜日)





サミットにやってきた先進国首脳たち、伊勢神宮や明治神宮を「参拝」(訪問・散策?)されるようだ? ついでにといってはなんだが、靖国神社にも「参拝」されるといいのに? 靖国神社を靖国神宮に名称を変えればいいのか? 

5・25の産経によれば、アメリカ前大統領ブッシュさんはこの前、日本にやってきて、安倍首相と5・17の夜ニューオータニで晩飯を共にしていたという。トランプ大統領誕生の可能性について語り合ったそうな。せっかく日本に来ていたなら、以前、明治神宮に参拝したように、靖国神社にも参拝してもらえばよかったのに。現職じゃないんだから。オータニからならタクシーで5分で靖国神社に行けたのに。

 ブッシュ大統領は2005年5月7日、ラトビアの首都リガで演説し、第二次大戦後、ソ連によるバルト併合や東欧支配をもたらしたヤルタ合意を「史上最大の過ちの一つ」とし、「安定のため小国の自由を犠牲にした試みは反対に欧州を分断し不安定化をもたらす結果を招いた」と言明。そのうえで合意を容認した米英ソの戦勝国側の責任にも言及した。 バルト三国でヤルタ体制の非を訴えたブッシュなら、靖国参拝の意義を理解できたかもしれないのに?

それはさておき、加藤周一さんが亡くなった時、「知の巨人」逝去と報じられていたような記憶がある。
最近もこんな記事が出ていた。


「知の巨人」しのび東京・渋谷に詩碑 あす除幕
毎日新聞2016年4月26日 11時30分(最終更新 4月26日 11時31分)

完成した故加藤周一さん「さくら横ちょう」の詩碑と、松岡温彦さん(左から2人目)ら。現在、通りは国学院大などへ通学する学生が行き交う=東京都渋谷区で2016年4月25日、鶴谷真撮影

 評論家、加藤周一さん(2008年、89歳で死去)が作った詩の石碑が完成し、東京都渋谷区のゆかりの地に設置された。27日午後2時に除幕式が開かれる。リベラルな思想で知られた「知の巨人」を再認識してもらうのが狙い。
 <春の宵 さくらが咲くと 花ばかり さくら横ちょう 思い出す 恋の昨日 君は もうここにいないと……> (以下略)



建設のために「ファン約60人から寄付金を集めたが、費用約250万円の半分程度しかまかなえておらず、寄付を募っている」とのこと。無理もない? 
國學院大学には何度か寄ったことがあるが、そんな碑があるとは知らなかった。今度確認してみようか? いや、表参道からいつも歩くから、渋谷方面にあるとすれば遭遇することはないかもしれないが。

死去直後には、NHKなどが追悼番組も作っていたかと。「知の巨人」? はてそうかな? 「知の虚人」ではないか?と思ったものだ。というのも……。

この人、芸術などの分野などではそれなりの見識があったのかもしれないが、共産圏の分析に関しては、ノーテンキだったと思う。

最近『夕陽妄語1、2、3』 (ちくま文庫)が三冊出た。朝日夕刊に連載されていた「夕陽妄語」をまとめたもの。『1』の解説で、成田龍一氏は、加藤氏のことを、かくも称賛する。

「『戦後思想』を領導してきた、典型的な『戦後知識人』である。『戦後』に戦争を阻止しえなかった『悔恨』をもち、そのことを核にして、民主主義と反軍国主義を訴える生涯を送った。あわせ、その根幹には、ヨーロッパから学んだ教養があり、ヨーロッパ近代を価値とする認識があった。『夕陽妄語』には、その素養が充分に披露され、世界中の情報に眼を配りながら出来事を評価する。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなど各国の主要紙に目を通し、ことを解釈していた」

ううむ? 「新聞世論」を煽動してきた、典型的な「進歩的知識人」だとは思っていたが?
所詮は小田実さん同様に、共産圏の実態に関しては妄言を繰り返してきた人ではなかったか?(小田実氏に関しては、同じく筑摩書房から刊行されている『私と朝鮮』を参照されたし。筑摩書房も、この「名著」、いや「迷著」を、萩原遼氏の「解説」で、ちくま文庫の一冊として復刊されるといいのではないかしら? そのほか『北朝鮮のひとびと』潮出版社も復刊するとなおいい)。

加藤氏が朝日夕刊に「夕陽妄語」を連載していたときは、朝日新聞を購読していたので、文庫に収録されているコラムの数々は一読した覚えがある。その中で、一読惨憺というか、唖然とし、失笑を禁じ得なかったコラムがある。本書を手にして、どれだったかと検索。『2』に収録されている「北京の春」というコラムだ。1994年4月19日に掲載されている。

北京を訪れ、博物館の展示を見て「ここへ来れば、いわゆる『中国五千年の歴史』は空理空言ではなく、一望の下に展開し、訪問者の知的興奮を誘ってやまないだろう」とのヨイショ発言をしているのは、まだご愛嬌としても、こんな妄言を述べているのに、当時唖然としたものだった。

「外国の新聞雑誌をとり寄せることは、個人にとっても自由である。少なくとも一部のホテルには衛星放送の設備があり、香港や台湾の番組、香港のBBCニュースやNHKの衛星放送などを見ることができる。たとえば私が細川首相の辞任表明を知ったのは、日本の人々と同時であった。情報の鎖国状態は、もはや今日の北京にはない」

そのほかの日付のコラム(96・6・19)ではこうも言っていた。

「今日人のいう『中国の脅威』においてをや。中国の努力は今あきらかに国内の経済問題――それは十分に困難だ――と、外部からの内政干渉を排除することに向けれらている。中国からみてのティベットと台湾は国内問題である。日本は国外問題である。その軍事力に至っては、かつてのソ連のそれに及ばざること遠いだろう。『中国の脅威』を前提として日本の対外政策を組みたてるのは、非現実的である、と私は考える」

このように中国の軍事的脅威を軽視する発言を展開したりもしていた。あまり先見性のある知識人でもなかったようだ。

何清漣氏の『中国の嘘 恐るべきメディア・コントロールの実態』 (扶桑社)などをひもとくまでもなく、「情報の鎖国状態」は、加藤氏が北京の高級ホテルに滞在した時も、今も中国の変わらぬ現実ではないか。

NHKでさえ、最近は、衛星放送などのニュースで中国問題を取り上げた時、画像が向こうではこんなふうにプッツンされるんですと具体的に報じるようになってきた。
 加藤さんも北京のホテルでNHKの衛星放送ニュースを見ていたら、画面がプッツンされるのに何度も遭遇していただろうか?(当時はまだそこまで検閲する技術がなかった?)。そういう時も「見て見ぬフリをする」のが、共産圏を「祖国」とみなしがちな「日本型進歩的文化人」の特性ではあろうが?

加藤氏のそうした「妄言」を連載していた朝日新聞にも、最近こんな面白いというかまともな記事が出ていた。

(世界発2016)くまも批判も即削除 中国、「微博」の監視強める ネット検閲、香港大が調査
2016年5月16日05時00分(紙の紙面は2016・5・16朝刊)

政府批判などの書き込みはすぐに削除される中国のネット空間。具体的にどのような情報が削除されているのか。香港大学ジャーナリズム・メディア研究センターが中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」の分析を続け、その一端を明らかにしている。

 「ウェイボースコープ」と呼ばれる調査は、微博が普及し始めた201ログイン前の続き0年に同センターの傅景華・副教授が始めた。「普通の市民が短時間で情報を広め、社会現象が起きるようになった。これを観察すれば、中国社会の理解に役立つと考えた」と話す。
 検閲が察知できる仕組みはこうだ。特定の人の微博を繰り返し見ていると、突然、書き込みが見られなくなることがある。この作業をコンピューターで大量に繰り返すと、どんな書き込みがどのぐらい削除されたかが分かる。当初は多くのフォロワーがいる35万人を対象にしたが、サイトの仕様変更などに伴って今は10万人の調査を続けている。

 15年に削除された書き込みのうち、シェアが多かったトップ5は表の通り。1位は「くまのプーさん」に似たマスコットが車に乗っているおもちゃの写真。「写真をシェア(共有)」という言葉とともに書き込まれた。

 なぜ削除されたかは日付を見れば分かる。9月3日は中国が北京の天安門で、抗日戦争勝利70周年の軍事パレードを開いた日。車に乗って閲兵した習近平(シーチンピン)国家主席の姿にそっくりだと話題になったのだ。書き込みから約1時間10分後に削除されたが、その間に6万5千回以上もシェアされた。

 2位以下は、事件や事故に絡んで当局批判につながりそうなものが多い。8月に天津で起きた爆発事故では、国営メディアが「被害者の無事を祈ろう」などと報じているさなかに、「今は祈るときではなく、責任を追及すべきだ」との書き込みが爆発的に広がった。

 検閲の仕組みにははっきりしない点もあるが、傅副教授は、政府の意向を受けたサイト運営会社の監視部門が、六四(6月4日に起きた天安門事件)や西蔵(チベット)など敏感な文字を検知して削除したり、急激にシェアされた書き込みを危険とみなして自動削除したりしているとみる。

 傅副教授によると、11年に浙江省温州で起きた高速鉄道事故の後、監視が強化されたという。情報隠しや救助活動の不手際に対する不満が、当時2億人近くいた微博ユーザーらを通じて一気に広まり、当局批判が高まったからだ。比較的自由だったネット空間で、政府批判などがすぐに削除されるようになった。

 「中国政府はネットの力を恐れているからこそ、監視を強めるのだろう」

 ただ、傅副教授は完全な管理はできないと考えている。「ネット上では隠語や比喩を使うなど様々な手段を使って、政府批判が続けられている。政治、経済、社会などの問題に対して市民、特に若者は声を上げたいと思っている。いったん開放されたものを完全に管理するのは不可能だ」
 ■「サイト実名制」法案
 中国インターネット情報センターの調査によれば、05年に約1億1千万人だった中国のネット利用者は15年には約6億9千万人に達した。経済活動にも役立つネットの発展を止めることは難しいため、習近平指導部はネット空間の管理に力を入れている。

 マスコミが共産党や政府の管理下にある中国では市民がネットを通じて真相を知ろうとし、党や政府を批判する場になっていることは当局も承知済みだ。自由な言論を放置すれば、体制を脅かしかねないとの危機感がある。中国側の管理が及ばないグーグルやフェイスブック、ツイッターが使えないのもこのためだ。

 15年7月に公表された「ネット安全法案」ではネットサイトの実名制を明記。サイト管理者にもユーザーが登録する際の身分確認を求めた。また、国家の安全や社会秩序を守るために必要なら、各地の政府がネット通信を制限できる強い権限を持たせている。

 こうした規制には「言論封殺」との批判が根強いが、習氏は昨年12月に浙江省で開かれたインターネット世界大会で「ネット主権」を提唱。「各国の管理方式を尊重し、干渉してはならない」と正当化した。

 メディアを監督する国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局は今年3月から、電子書籍などへの外資の参入を厳しく規制する新たな規定を施行。ネット上で文章や写真、地図、動画を扱う会社はサーバーを中国内に置き、代表者も中国人でなければならないと定めた。(香港=延与光貞)


 
記事によると、こんなのが削除されたとのこと。
■2015年に削除された書き込みのトップ5(香港大学の分析などによる)

 削除対象となった書き込み/予想される理由/時期/削除までの時間とシェア数
(1)くまのおもちゃの写真/軍事パレードでの習近平主席の姿に似ている/9月3日/1時間10分 6万5576回

(2)天津爆発事故をめぐる当局批判/被害者への祈りより、責任を問うべきだという当局批判が広がるのを恐れた/8月13日/2時間30分 6万3669回

(3)遼寧省の爆発事故の写真など/天津爆発事故の翌日に起きており、災害を防げなかったとの当局批判を恐れた/8月13日/2時間 4万4668回 

(4)役人批判で有名な男性が冤罪(えんざい)を訴える記事/「買春容疑での逮捕は当局の陰謀」とする男性の訴えが広がるのを恐れた/4月2日/1時間30分 2万2658回

(5)雲南省の共産党トップ発言/メディアは共産党に全面的に従うべきだという姿勢に批判が集まった/6月9日/30分 5676回


中共の支配が若干緩んだ時であれ、文革時代であれ、なんであれ、自由世界の考えるような「言論出版の自由」がこの国で保障された時は、一分たりともありえないと述べたのなら、「知の巨人」といえるかもしれないが、「情報の鎖国状態は、もはや今日の北京にはない」と1994年の時点で、北京のホテルという特別な空間で豪語した加藤周一なる「知識人」をとても尊敬する気にはなれない。「お前さん、オツムは大丈夫かい?」と問いただすのが、ごくふつうの常識人ではないのか?

「特定秘密」ではなく、ごくふつうの情報すら、そういう風に監視し、秘密扱いするような中共にさほどの批判もせずに、ことさら日本国内のそうした「特定秘密」保護を針小棒大に批判する精神構造も理解不能であろうが。

加藤氏のこの文庫本、本体価格でいずれも1200円~の高価格。こういう本は図書館で借りて、同じちくま文庫なら、源氏鶏太氏の『青空娘』や、ステファヌ クルトワ&ニコラ ヴェルトの『共産主義黒書〈ソ連篇〉』  (ちくま学芸文庫)を読むほうがはるかに「スマート」になれると思う。

そういえば、加藤さんにはこんなこともあった。以下拙文再録。


スタイナーと加藤周一、月とスッポン?
2013/07/15(月) 05:48:09

週刊スパ(2013・7・2号)の坪内祐三氏と福田和也氏の対談の中で、ジョージ・スタイナーが取り上げられていた。彼の本は何冊か積んどくしている程度でよくは知らないのだが、坪内氏によると、かつて来日した時、加藤周一と大論争を「世界」(74年8 月号)でしたそうな。


「加藤周一は社会主義とか中国に対して楽観的なわけ。でもスタイナーは社会主義が嫌いだから、「すべての国際社会主義は強制収容所に行き着く」「あなたと政治の議論はこれ以上したくない」と言って、怒鳴り合いになっちゃうの。翻訳は由良君美がやってるんだけど「二人とも怒声となり聴取不能」って何度も書いてある…」

それは知らなかった。さっそくその対談を読んでみた。

「西欧・社会主義・文化 『先進文明』の希望をたずねて」と題して22頁ヘージもの対談。一読して、やはりねという感じ。
ここでいう「社会主義」とは「民主社会主義」ではなく「共産主義」のことのようでもある。

加藤氏は、「わたしには、伝統的マルクス主義の社会主義像というか社会主義国家のイメージと、『自主管理』の理念とが結合して、フランスの社会主義が政治的活力をとりもどしたようにみえます」「社会主義にかんするかぎり、西欧世界の外で、アジアでも、アフリカでも、社会主義という言葉はまさに死語の反対でしょう」とノーテンキな発言をしている。

それに対して、スタイナーが、「加藤さんが『自主管理』の兆候をどこに見ておられるのか、わたしには分からない」「そんなことを言えば、ジェネラル・モーターズ社の方に、もっと沢山の『自主管理』がある」「済まないが、その話題は止めて下さい」「わたしは政治家ではないから、社会主義云々はこれぐらいにしたい」「(社会主義は)完全に時代遅れ、とわたしは考えております」「40分以上、対談しあったことは、すべて見解の相違でしかなかった。あなたがおっしゃったことは、どれもこれも、わたしにはひどく旧式のことばかりに思える」「あなたの方が、論点をそらしておられる。わたしの立場は、あなたの立場より、はるかに分かり易いものです。わたしは、すべての国家社会主義は強制収容所に至る、と信じているのです」…と。

そういった対談のあいまには以下のようなト書きが入る。

(二人の声が同時にたかまりスタイナー氏が卓を叩く音。ほとんど、聴取不能)
(同時に激しく言い合いになり、ほとんど、聴取不能)
(突然、二人とも怒声となり、聴取不能)

一読して、まあ、「社会主義(共産主義)」に関する認識では、スタイナーのほうがベタ-というしかない。スタイナーさんも、シーラカンス的日本の進歩的知識人のレベルに驚愕したのだろう。

そういえば加藤周一が亡くなった時、「知の巨人」扱いをして、NHKなども特集番組をやっていたかと。最近も海老坂武氏が『加藤周一――二十世紀を問う』 (岩波新書)を書いている(積んどく中)。

僕は、彼(加藤氏)の本に関しては、朝日夕刊に連載していたエッセイをまとめた本などを読んだりした程度。いま手元に正確な引用紹介ができないが、90年代の頃だったか、彼が北京のホテルに泊まっていた時、CNNなどのニュースが見られることに感心して、情報の国境はもはや中国でもない云々といった趣旨のことを書いていたことがあったものだ(と記憶している)。
それを読んで、あんたはホテルでCNNが見られるけど中国の庶民は国営テレビだけでしょうが…と呆れたことがあった。

また最近はNHKでさえ、中国で放送(受信)されている自分たちのニュース映像が天安門など微妙なニュースを流すと、突然画面がプツンと消える瞬間を「ニュース」として報道するようになっている。
つまり、中共の検閲が相変わらず内外の放送などにも及んでおり、CNNがたとえ中国の庶民も見られるようになったとしても、突如画面がプツンと消えるという点で「情報格差」は未だに存在し続けているのである。

そのあたり、加藤氏は認識不足であったかと。共産主義に甘い進歩的知識人として、北朝鮮を賛美した小田実と並ぶ知的水準の持ち主であったというしかあるまい。

そういえば、谷沢永一氏も、加藤氏の夕刊コラムでフィンランド化を勧めるかのような内容のエッセイを書いたことを手厳しく批判していた。 『悪魔の思想 「進步的文代人」という名の国賊12人』 (クレスト社)。クレスト社のこの本はのちに『反日的日本人の思想 国民を誤導した12人への告発状』 (PHP文庫)としても出ている。フィンランド化の勧めなどを説いたということで「祖国をソ連に売り渡す『A級戦犯』」と告発されている。なるほど。


ともあれ、この「世界」、同じ号に、山本進氏(毎日新聞論説顧問)が聞き手となった対談「朝鮮民主主義人民共和国の経済 六カ年計画の現状と展望を語る」というのが掲載されていた。ついでにそれを読んだが、こちらは先の対談と違って「同志」同士故か「和気あいあい」?

金己男という北朝鮮の金日成総合大学教授の教授で、理論誌「勤労者」の責任主筆が来日したとのことで、山本氏と対談している。

「アメリカ帝国主義者によって引起こされた侵略戦争によって、まったく破壊し尽くされました」「こうした困難をのりこえて…」といった出足の決まり文句には相変わらず溜め息をつくしかない。自業自得のことをいくら述べても…頷いてくれるのは日本の進歩的マスコミぐらいだろう、当時とて。

「無料医療制が実施されている」「一銭もかかりません」「農村の水利化と電化はすでにかなり前に全国的な規模で完全に達成されました」「税金制度を残しておく必要性もすでになくなりましたし、またそれを全廃する可能性も生じたので全廃に踏み切ったわけです」「『世界』が私たちに、本日のような機会を与えて下さいましたことに感謝しております」

山本氏は、スタイナーと違って、こうした与太話をふむふむなるほど、おっしゃる通りですな…といった感じで特に疑問にも感じなかったようである。これでは北朝鮮の宣伝文句の垂れ流しでしかない。
日本政府や電力会社の原発宣伝広報対談だって、もう少し「議論」というものがあるだろうに…。

当時の「世界」の編集長は安江良介氏。谷沢氏の先の本でも、この人は「金日成に無条件降伏の似非出版人」として告発されている。なるほど、だから、こんな「対談」が載っていたのだろう。

せめて、山本氏もジャーナリストなら「そんなバカな、税金全廃なんて! 朝鮮戦争を仕掛けたのはお前のほうだろう!と」(二人の声が同時にたかまり金氏が卓を叩く音。ほとんど、聴取不能)(同時に激しく言い合いになり、ほとんど、聴取不能)(突然、二人とも怒声となり、聴取不能)となれば、歴史的快挙であっただろうに…?


ともあれ、スタイナーに関して、最近彼の本『「ニューヨーカー」のジョージ・スタイナー』 (ロバート・ボイヤーズ編・近代文藝社)が出ていることを知って、これを機に一読した。

「ニューヨーカー」は有名な雑誌だが、英語の読めない僕には無関係。この前、渋谷古書センター一階の古本屋に沢山バックナンバーが出ていた。誰か購読者が死んで、遺族が放出したのかと思ったが…。常盤新平さん? まさか?

その雑誌に、スタイナーが1967年から1997年にかけて130編以上のエッセーを書いていたそうな。エドマンド・ウィルソンの後継者と見られていたという(このあたりの執筆経緯に関しては、スタイナー自身が『G・スタイナー自伝』 (みすず書房)で触れていた)。

ソルジェニーツインやブレヒトやオーウェルやケストラーなどを論じたエッセイなどがちょっと面白く読めた次第。

そういえば、スタイナーさんは慶応大学がらみのご招待だったそうだが、日本の知識人のレベルの低さに呆れた話としてはケストラー旋風を思い出す。
このあたりの経緯は、石原萠記の『戦後日本知識人の発言軌跡』 (自由社)に詳しく出ていたかと。日本ペンクラブの「容共リベラル」姿勢をケストラーが手厳しく批判していた。

当時のペンクラブ主流関係者にしても、加藤周一氏にしても山本進氏にしても、社会主義というか共産主義に対する認識が極度に甘く、反共リベラルに対しては噛みつくくせに、御本体御本尊の「悪態」に関しては沈黙したりする。これが昔も今も変わらない典型的な日本の進歩的知識人なのであろう。



ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!
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