古本虫がさまよう (特集③)黄金週間・読破計画はどうなったか?「公約」を自己検証する―――「ソ連・中共・北朝鮮の対外政治工作としての『影響力』工作」を考えるべき
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(特集③)黄金週間・読破計画はどうなったか?「公約」を自己検証する―――
「ソ連・中共・北朝鮮の対外政治工作としての『影響力』工作」を考えるべき

(2016・5・2・月曜日)







黄金週間に於ける重厚長大本の読破計画がどうにもならない状況に陥っている。昨日(5・1)は、1976年生まれの関誠氏の『日清開戦前夜における日本のインテリジェンス 明治前期の軍事情報活動と外交政策』 (ミネルヴァ書房)を読む予定だったが……。この人、中西輝政氏の「門下生」のようだ。400頁の大著。
ならば……ということで、方針転換して、同じく中西輝政氏の門下生である、1980年生まれの佐々木太郎氏の『革命のインテリジェンス ソ連の対外政治工作としての「影響力」工作』 (勁草書房)を読むことにした(こちらは本文だけなら300頁弱と薄めということもあって、ちょっと「速読」気味になったが、なんとか一読した次第……)。

内容紹介→ソ連の対外革命戦略のすがたとは? 本書は、影響力のある個人を使って標的国の世論や政策を秘密裡に誘導する政治工作、すなわち「影響力」工作を、ソ連が戦間期から1940年代半ばにかけて世界各地で展開していたことを明らかにする。ヴェノナ文書、ヴァシリエフ文書、MI5やFBIの捜査資料などを縦横に駆使した画期的研究。

目次→「影響力」工作とは何か?
第1部 ソ連の「影響力」工作を分析するための理論的枠組みとその検討(冷戦時代におけるソ連の「積極工作」概念
冷戦時代におけるKGBの「影響力行使者」概念
仮説としてのソ連の「影響力行使者」の諸要件
仮説としてのソ連の「影響力行使者」の諸類型)

第2部 ソ連の「影響力」工作についての具体的検証(ソ連の「影響力行使者」としての宋慶齢
ソ連の「影響力行使者」としてのオットー・カッツ
ソ連保安情報機関の対米「影響力」工作の起源
アメリカ政府中枢における「影響力」工作



「正論」(2016・6月号)の書評欄で、福井義髙氏がこの本の書評をしていた。

「自らの影響力を持ってして他国の国民や政策決定者の知覚を誘導する個人を利用した工作――本書では「影響力」工作と呼ぶ――を、ソ連が当該時期に世界各地で展開していたことを示す」(著者)

「ヴェノナ文書」は、佐々木氏も翻訳に参画しているジョン・アール・ヘインズ&ハーヴェイ・クレアの『ヴェノナ』 (PHP研究所)を参照されたし。「ヴァシリエフ文書」は、あまり聞いたことがなかったが、そういう文書もあるそうな(この文書は1930年代から1950年代にかけての文書)。
そのほか、本書では「ミットローヒン文書」への言及もある(これは佐々淳行氏が『私を通りすぎたスパイたち』文藝春秋――の中で、中西輝政氏の論文を引用しながら紹介もしている文書。ソ連からの亡命者が「持参」した秘密文書。さまざまなソ連のスパイ活動実録文書といったところだ。レフチェンコ証言などを裏付ける内容でもあった)。

レフチェンコ証言の再検証や、蒋介石夫人の宋慶齢やスメドレーなどがいかにしてソ連共産党というかコミンテルンの手先というか、「影響力行使者」となっていったか……。あまり知られていないソ連のスパイ工作を焙り出した好著だ。

本書で分析されているのは「歴史」「現代史」であり、一応「過去形」のものが多いが、「現在進行形」で、中国共産党が、かつてのソ連共産党同様の視点で、「日本の対米依存離れ」を促すための「影響力工作」を、沖縄や東京や永田町や築地周辺でしているのではないかと思わずにはいられない。中国のみならず北朝鮮も同様のことをやっているのではないか。朝鮮総連がやっていたことは「世論工作」ではないのか。この前も指摘した、北朝鮮批判本を紹介しただけで、朝日新聞を人海戦術で攻撃するなど、その目立つ形だが、本来は目立たない形での「影響力行使者」を獲得していくのが本筋であろう。

自称 「人権弁護士」が、日本国内の一部の人の「人権」擁護を声高に主張しながら、より人権が虐げられている中国や北朝鮮の人権問題にはさほどの関心も寄せない…。安保法制は戦争法案だと批判しつつ、中国や北朝鮮の軍拡はあまり批判もしない。ナンデカナ?

それは単なる生まれつきのイデオロギー的偏見なのか? 単細胞的な無知蒙昧・無恥なのか? それとも……。なんらかの工作の結果なのか? ソ連(や中国や北朝鮮)の実態に関して、無知故に礼賛していたケストラーは、その実態を直接見聞し、反ソになった。その点は、本書でも少し触れられている。それが、まっとうな人間の正常な感覚であろう。そういう感覚を持つことができないのは、単なるナイーブな無知か、要は脅されているか、意図的な自らの意思に基づく「第五列」形成者なのだろうか。
もちろん、アメリカ側の「影響力工作」にも注意をすべき点はあろう。

ともあれ、現在進行形の「謎」を解明するためにも役立つ本だ。続編を期待したい。知的刺激を受ける、いい本を読むと心地よいものがある。著者があとがきで、中西輝政氏以外に名前を挙げているのは齋藤嘉臣氏。この人の『文化浸透の冷戦史  イギリスのプロパガンダと演劇性』  (勁草書房)は以前本欄で紹介ずみ。

アメリカ共産党などのスパイ活動史を知る上では、ジョン・アール・ヘインズ&ハーヴェイ・クレアの『ヴェノナ 解読されたソ連の暗号とスパイ活動』 (PHP研究所)のほかにも、ハーヴェイ・クレア& ジョン・アール・ヘインズ& フイルソフの『アメリカ共産党とコミンテルン 地下活動の記録』 (五月書房)も重要であるし、『ヴェノナ』でも高く評価されているルイス・フランシス・ブデンツ『顔のない男達 アメリカにおける共産主義者の陰謀』 (ジープ社)も傑作。
また、FBIといえば、ハーバート・フィルブリックの『F・B・I逆スパイ 私は三重生活を送った』 (生活社)も必読すべき一冊だ。

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!
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