古本虫がさまよう 古本虫が笑った『国を救った数学少女』 格差社会論の欺瞞を吹っ飛ばせ?
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古本虫が笑った『国を救った数学少女』 格差社会論の欺瞞を吹っ飛ばせ?
(2015・12・14・月曜日)





ヨナス・ヨナソンの『国を救った数学少女』 (西村書店)を読み進めている。半分ちょっと(250頁)読んだところ。前著『窓から逃げた100歳の老人』 (西村書店)も傑作ですでに紹介ずみ(下記再録)。

今年読んだ一般小説(翻訳部門)としては、この本に、前ブログ紹介のガブリエル・ゼヴィンの『書店主フィクリーのものがたり』 (早川書房)に、女スパイことマギー・ホープが主人公の、スーザン・イーリア・マクニールのスパイ小説・シリーズ第4弾の最新刊である『スパイ学校の新任教官』 (創元推理文庫)の三冊がベスト3であろうか?(エロス小説のベスト3は? ううむ‥‥。あまり沢山読んでいないから‥‥)。


それにしても、『国を救った数学少女』。半分読んだところでも、傑作と分かる?


内容紹介
「次に何が起こるかなんてわからないわ。そもそも、人生ってそういうもんでしょ」
人種差別の激しかった南アフリカで、し尿処理場で汲み取り桶運びに明け暮れる女の子がいた。
ノンベコ13歳。天才的な数学の才能はあるけれど学校には行ったことがなく、だから当然読み書きのできないこの少女が、大人になって遠くスウェーデンの国王と首相の命を救うことになろうとは、誰も予想だにしていなかった。
物語の舞台は南アフリカからスウェーデンへ――。
開発の途上で余ってしまった爆弾1個をめぐって、全然似てない双子、いつもへべれけの爆弾開発者、じゃがいも農家の伯爵夫人、のん気な王様、きれい好きな首相、モサド諜報員、そして胡錦濤国家主席まで、ひと癖もふた癖もある人物が入り混じって、てんやわんやの大騒ぎ。
爆弾は誰の手に? ノンベコの恋の行方やいかに? そして、スウェーデン国王は共和主義者の魔手から無事逃れられるのか?!
デビュー作『窓から逃げた100歳老人』で全世界に笑撃を与えたヨナス・ヨナソンが贈る、ハチャメチャ・コメディ第2弾!内容(「BOOK」データベースより)



ベトナム戦争時、日本のベ平連による米兵逃亡事件があったが、その「当事者」らしき人物もスウェーデンに於いて、ノンベコの「同志」として登場もする。かなりの病的な反CIA主義者として? アンゴラはポルトガルの植民地であったようだが、この小説によると「400年にわたる統治のあいだ、大学のひとつも建てることができなかった政府である」とのこと。日本の韓国・台湾植民地統治とは異なる? スウェーデンの親国王から反国王に転向した男とその息子(双子のうちの一人)の、これまた病的な精神構造も奇怪しい(可笑しい)。ちょっと親しみを覚える?

これは小説ではあるけど、日本程度(?)の国で、格差、格差と大声で叫ぶ向きにも読ませたい小説? というのも、内容紹介にあるようにアパルトヘイトの南アフリカで「孤児」で「文盲」の「汲み取り」をしている少女が、機知と機転で言葉を覚え、仕事の合間に図書館の本をせっせと読み、活躍していくのを見れば(美少女に忍び寄る「悪魔」に対しては「核」ならぬ「ハサミ」で抵抗撃退している?)、高校大学進学のための奨学金の利息がどうのこうのとか、親の年収がどうのこうのとか‥‥いう暇があれば、図書館に行こうとなる?

曽野綾子さんも、2015・12・13の産経で、格差社会論を批判的に取り上げていたが、南アフリカ、アパルトヘイト云々といえば、曽野さん? 曽野さんに、この本の書評などを書いてもらうなり、こんな風刺小説を書いてもらうといいのかもしれない。曽野さんの『ボクは猫よ』 (文春文庫・ワック)も、ある意味で、この『国を救った数学少女』と同様に、面白い日本風刺小説といえるかもしれないが。

ともあれ、本書にはカーター政権、当時のCIAターナー長官など、南アフリカ首相フォルスターなども実名で登場してくる。後半が楽しみである?

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!

ジェフリー・アーチャーの『百万ドルをとり返せ!』とコジンスキーの『庭師』(『預言者』)を足して二で掛けたような可笑しさを彷彿させるヨナソンの『窓から逃げた100歳の老人』を、金正恩が読めば危険かも?(2014・10・7・火曜日)

ヨナス・ヨナソンの『窓から逃げた100歳の老人』 (西村書店)を読んだ。
僕にとっては、ジェフリー・アーチャーの『百万ドルをとり返せ!』 (新潮文庫)以来(?)の痛快な「犯罪小説」だった。
来月には映画(「100歳の華麗なる冒険」)として上映公開もされるようだ。

内容紹介
100歳の誕生日パーティーを目前に、おしっこ履きのまま老人ホームを逃げ出した主人公アラン。お酒(とくにウオッカ!)が大好き、宗教と政治が大嫌い。ひょんなことから手にした大金入りスーツケースをめぐってギャングや警察に追われることとなり、途中で知り合ったひと癖もふた癖もあるおかしな仲間とともに珍道中を繰り広げる。
一方、過去のアランはというと、爆発物専門家としてフランコ将軍やトルーマン、スターリンと日夜酒を酌み交わしては、エポックメイキングな人物として世界史の重大シーンにひょこひょこ顔を出す。アランの逃避行と100年の世界史が交差していく、二重構造ならぬ「百重構造」のドタバタコメディ!
全世界で800万部を突破した驚異のベストセラー、待望の日本語版。2014年、日本での映画公開予定。
内容(「BOOK」データベースより)
お祝いなんてまっぴらごめん!100歳の誕生日パーティの当日、アラン・カールソンは老人ホームの窓から逃走した。ひょんなことからギャング団の大金を奪ってしまい、アランの追っ手は増えていく。けれども、当の本人はなるようになるさとどこ吹く風。それもそのはず、アランは爆弾つくりの専門家として、フランコ将軍やトルーマン、スターリン、毛沢東ら各国要人と渡り合い、数々の修羅場をくぐり抜けてきた過去の持ち主だったのだ。20世紀の歴史的事件の陰にアランあり!過去と現在が交錯するなか、次々展開するハチャメチャ老人の笑撃・爆弾コメディ、日本初上陸!


(以下ネタバレ的記述もありご注意を)。

100歳の主人公(男)が、ふとしたことから犯罪者の大金を手にし、それを追う犯罪者一味‥。2005年の設定だが、現在進行形の「現在の逃亡劇」と、生まれた1905年に戻って、それから20世紀の時代を生きてきた主人公のさまざまな「過去の武勇伝」とが、交互に織りなす形でストーリーは展開していく。

スペイン内戦でフランコの危機を救ったり、フランコの推薦状を手にアメリカに逃れたり、給仕をしながらトルーマンの核開発に決定的なヒントを与えたり、江青やチャーチルを救ったり、スターリンに粛清されそうになったり? そういうソ連からの脱出の回顧も出てくる。ソ連高官に化けて朝鮮戦争中だった北朝鮮に入り、まだ子供だった金正日チャンをあやしたりするものの、肩書詐称(?)がばれそうになったら、平壌にたまたまいた毛沢東に救われたりする‥‥。それも宋美齢を裏切って江青を救ったことがあったからこそ……。 「情けは人のためならず」‥を物語る小説だ?

いささか荒唐無稽といえば、それまでであるが、「現在の逃亡劇」も「過去の武勇伝」も話の流れとしては、さほど不自然でもなく、なんとなく辻褄があってしまい読まされてしまう。ドゴールやジョンソンとのやりとりも「実話」? 


コジンスキーの『庭師 ただそこにいるだけの人』 (飛鳥新社)にも似たストーリー展開だ。 『庭師 ただそこにいるだけの人』は、 『預言者』 (角川書店)のニューバージョン。
どちらも映画「チャンス」の原作。映画はビデオで見た記憶がある。ピーター・セラーズが主演。単なる庭師が、なぜか大統領候補になっていく‥といったお話だったか。

100歳の主人公も、若い時の冒険時代の中で、はったりや嘘がばれて絶体絶命の危機の時に、思わぬ幸運が入り込んで危機を脱出していく‥‥。

ただ、金日成の背景を描くにあたって、日本統治下時代、朝鮮半島が「数年間、日本軍は植民地の人々をほとんど好きなように扱った。慰安婦や創氏改名、軍隊などへの徴用などさまざまな問題が起き、朝鮮の言語や文化は軽んじられた」と記しているあたりは、ちょっとステレオタイプかなと思わないでもないが‥‥。

まぁ、人生、何とかなるようになる‥といったメッセージを発している小説ともいえそう。読み終えると、宝くじでも買おうか、懸賞小説に応募してみようかなどと、ちょっとしたことで人生変わるかな‥という気になってくる? 100歳でこれだけのことがやれるなら‥‥。55歳で29歳の女性と再婚する中年男だっていてもおかしくない? 29歳の男が55歳の女と初婚するのはおかしい?

でも、金正恩なんかがこの本を読むと、「世の中なんとかなるもんだな、わが国も相変わらずのこの路線でなんとかやっていこうか‥‥。100歳の老人やその「犯罪」仲間たちに、ころっと騙されている警察は、日米みたいなものだぜ。だから、拉致問題ものらりくらりでやっていこうぜ、ガハハ」となるかも? それは困るな? 

それよりも、『北朝鮮から逃げた金正恩一派』なんて本が将来出ると面白いかも。この「ルパン三世」ならぬ「金三世」が、「ヴィルヘルム二世」みたいにならなければいいが?  戦争(第一次大戦)を起こす「素」にもならず、中国(オランダ)に亡命することもなく、平和裡に人民によって処刑されることを祈りたい?

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