古本虫がさまよう 素晴らしき特定嗜好分野作家は、東に綺羅光、西にスーザン・イーリア・マクニールあり?
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素晴らしき特定嗜好分野作家は、東に綺羅光、西にスーザン・イーリア・マクニールあり
(2015・11・19・木曜日)







スーザン・イーリア・マクニールのスパイ小説『スパイ学校の新任教官』 (創元推理文庫)を読み終えた。こういう「特定嗜好分野(スパイ小説)」の面白い小説を読むのは楽しいものだ(最近は、もうひとつの「特定嗜好分野(エロス小説)」で、これは名著・名作だ!というのになかなか出会えないのだが。

フランス書院文庫から、この前、綺羅光氏の『女教師・裕美の放課後』が、「フランス書院文庫、創刊30周年記念企画」として、帯に「名作復刊」として銘打って復刊されたけど、たしかにあれは「傑作」だった!(さすがに、講談社学術文庫なら「名著復活」と銘打つだろうが、フランス書院文庫だと「名著復活」とまでは言いにくい? 「名作復活」が限度?)
 彼の作品はほかにも『女教師・二十三歳』が去年復刊もされている。彼の女教師三部作といえば、この二つにもう一つ『狙われた女教師』がある。いずれも適度な(?)被虐精神あふれる傑作ばかり? 是非、10代に読んでおきたい作品――というとちょっと問題かもしれないが‥‥。綺羅氏が凄いのは、その三部作のほかに、連作での女教師三部作もあるのだ→【第一部 魔弾! 檻の中の美術教師】 【第二 部 魔弾! 美術教師・牝奴隷の刻印】 【第三部 魔弾! 女教師・地獄の奴隷回廊】。これも些細な瑕疵を不動産屋に脅されて堕ちていく女教師の性態を描いた佳作。

ところで、前ブログで、『スパイ学校の新任教官』を半分弱まで読み終えた感想を少し綴ったが、そのとき、書き忘れたことがひとつあった。

真珠湾奇襲前がらみのスパイ関連で、ドゥシュコ・ポポフが出てくると書いた(『ナチスの懐深く 二重スパイの回想』ハヤカワ文庫――の著者。作品の中ではカタカナ表記がドュシャン・ポポヴとなっている)。
ポポフが出ていたことには触れたが、アメリカで日本の暗号を解読するのに人手が少なくて困っているという描写の中で、翻訳者として出てくる女性の名前にドロシー・エドガーズというのがあった。
おお、ドロシー、懐かしいではないか。ドロシーと聞けば、徳岡孝夫氏の『ドロシー「くちなしの謎」「真珠湾」を知っていた女』 (文藝春秋)がすぐに思い出される。

もう20年以上前に刊行された本。文庫には入っていないのでは?
だから記憶があいまいだが、この実在したドロシー・ウッドラフ・エドガーズという女性は、米海軍作戦部に所属し、暗号解読に従事していた女性だ。奇襲の直前に、外務省の暗号解読などによって、日本海軍が真珠湾を奇襲しようとしているニュアンスを感じ取り、1941年12月7日(アメリカ時間)直前に報告したものの、週末ということで、さらに上に上げられることはなかった。そして……。

彼女は軽井沢に生まれ、日本人の血も少し混じったアメリカ人で、お茶の水(高女)を卒業。だから日本語も完全に読み書きできた。戦後は、日本にやってきて高島屋のデザイナーにもなったとか。たしか本のカバーだったかに本人の若い時の写真も使われていたかと。結構な美人。美人スパイがいれば、美人暗号解読官も世の中にはいるものだと、当時本をひもときながら感心した次第。

『スパイ学校の新任教官』を読んでいて気になったのは、1940年代の世界を描いているのに「看護師」なる言葉がよく出てくること。「看護婦」でいいじゃないの? もうひとつの特定嗜好分野の小説でも、近年「看護婦」をタイトルに使ってフェミニズムの言葉刈りに抵抗していたフランス書院も、ついには屈伏し、「看護師」だの「ナース」にしたりしてしまった愚を鋭く追及したものだったが……。

2012年に刊行された、河里一伸氏『秘密の扉 担任女教師と女医と看護婦』が、特定嗜好分野に於ける最後の「看護婦」作品となりしか? 彼は、2015・9月に『女看護師寮 忍び込み』を発表し、フェミニズムに屈伏?

看護婦三部作というのもあるが、トップは、鏡龍樹氏の『美叔母は看護婦 白衣のセクササイズ』であろう。

あと、真珠湾奇襲のとき、山本五十六が、ハワイ攻撃隊の艦船にいるという設定になっている。またその攻撃隊が台湾から出発したとなっている? 
今手許に本がないので、うろおぼえだが、稲垣武氏が『朝日新聞血風録』 (文春文庫)の中で、たしか、朝日新聞だったか、「日本艦隊の戦闘機がハワイの真珠湾に向けて出撃した単冠湾」云々と書いたことを軍事のイロハも知らないと批判していたことがあったかと(後に新聞社は誤記を訂正?)。今なら空中空輸機があるから、単冠湾というか千歳基地からハワイまで攻撃は可能だろうが‥‥。

そういう空想力とは違う、勘違い的記述がちょっとみられたような感じがしたが、まぁ、小説だからいいか。
英国諜報機関が、日本の外交暗号だけでなく日本海軍の暗号を開戦前から解読もしていたというニュアンスの記述もあったが、それは本当かもしれないし?

ともあれ、マギーがチャーチルを追及する段で、彼が政治の非情さ故の「悪魔の選択」的な現実とのディレンマを語るあたりは、ちょっとリアルな感じを我々に与えるだろう。今もあることかもよと。

暗号解読の事実をドイツに悟られないようにするためのコベントリーの見殺しは「伝説」に過ぎないという批判をする本(ナイジェル・ウエストの『スパイ伝説 出来すぎた証言』 原書房)もあるが‥‥。

それにしても、このシリーズ、4冊いずれもカバーイラストが、ちょっと‥‥。僕にはついていけないレベル。コミカルではあるけど、ちゃんとしたスパイ小説なのに、このイラストでは‥‥。見落とす人も多いのでは?

その点、綺羅光氏の女教師三部作に関しては、 『女教師・裕美の放課後』などは、カバーイラストも秀逸だった。こちらの嗜好分野の小説も、カバーイラストは近年イマイチのものが多い。双葉文庫もマドンナメイト文庫も。フランス書院文庫も‥‥。特定嗜好分野の文庫カバーは大事?

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!
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