古本虫がさまよう 「反核世論」や党内左派と戦い、「ソ連の軍拡」に抵抗したシュミットの「二重決定」路線を隠蔽して、「冷戦下で緊張緩和推進」とただ報じる日本の新聞の「良識」「知性」を疑う!
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「反核世論」や党内左派と戦い、「ソ連の軍拡」に抵抗したシュミットの「二重決定」路線を隠蔽して、「冷戦下で緊張緩和推進」とただ報じる日本の新聞の「良識」「知性」を疑う!
(2015・11・11・水曜日)



元西独首相で社民党右派のリーダーであったヘルムート・シュミットの死去を伝える2015・11・11の各新聞朝刊(一部夕刊もあり)を見るにつけ、何で、彼の業績のひとつである「二重決定」について触れようとしない新聞が、日本にはこんなにたくさんあるのだろうと不可解に思った(いや、なるほどと思うべきか?)。

ウィキペディアによると――、NATOの二重決定(英語:NATO Double-Track Decision)とは、ワルシャワ条約機構に軍縮を呼びかける一方、互いの軍縮圧力を高めるため西ヨーロッパに核兵器を搭載した中距離弾道ミサイルと準中距離弾道ミサイルを多数配備するとした1979年12月12日のNATOの決定である。1972年に配備されたSS-20弾道ミサイルが、射程・命中精度ともにヨーロッパ諸国の脅威となったことに端を発した決定である―――。

当時、その決定に関して、欧米諸国では大きな反対運動が起こった(日本でも)。
慶応大学教授の中村勝範氏が、 『正論自由(第四巻)反核運動 自由からの逃走』や『正論自由(第三巻)SS20 vs レーガン大統領』 (慶応通信)で、そうした反核運動の欺瞞を敢然と鋭く批判していたと記憶している。名著だったね。シュミットのことにも触れていた(と思う。何分、読んだのは、30年以上昔のことだから。手元に本がないので詳細は未確認)。

あのころ、シュミットやレーガンなどの核配備(ソ連と話し合いの上、それがうまくいかなければSS20に対抗してパーシング2を欧州に配備、しかもその飛距離はモスクワまでは届かないように配慮しようとするもの)に関して、絶対反対を唱えていた自由世界の「裏切り者(ダニ?)」のような存在があったが、それを熱烈に支援していたのが、日本の新聞(朝日新聞など)であった。その「古傷」に触れたくないからなのか? 

シュミットは、そういう、ソ連に操られた感のある反核「世論」に抵抗し、党内左派からも批判を受けて、不信任をつきつけられ途中で挫折はしたが、代わって登場したのは保守系政権で「二重決定」は尊重されていった。この重要な業績を無視するなんて? 芥川賞作家が亡くなったときに、代表作として受賞作を掲示しないような新聞があったら「?」と思うだろう。それと同じことではないか。

それとも若い特派員諸氏は、そういう現実を知らないのだろうか?

なにしろ東京新聞朝刊は、シュミット死去を伝える特派員電(ベルリン)の見出しが「冷戦下で緊張緩和推進」なのだ。記事の中には、「二重決定」の文字はなく、「歴史の反省を踏まえた日本への辛口の忠告でも知られる」とは書く(この点は、彼の欠点? そのあたりは、西尾幹二氏が、かつて1988年7月号の「中央公論」で"日本の友"シュミット前西独首相に反問する――と鋭く批判していた)。

僕は前のブログでも、シュミットを評価しつつも、アジア問題に関しては「ノーテンキ」だったと批判している。僕から見て、そういう欠点もあったが、総じて、勇気ある政治家だったと評価する。

だが、東京新聞のみならず、朝日新聞の特派員電も「二重決定」に関して一言もないのだ? 唖然呆然とするしかない。

「欧州安保協力機構などの創設に貢献し、中距離核戦力の全廃に向けて指導力を発揮した」と書いているだけ。何か抜けていないか? そして続けて「首相在任中、強い決意で」とくるから、当然「ソ連に操られた感のある反核運動と戦い続けた」となるのかと思ったら、「テロと戦い続けた。逮捕したテロリストの釈放要求を断固として拒否」「ルフトハンザ機ハイジャック事件では、特殊部隊を強行突入させた」と。これも事実ではあり、その点を僕は高く評価している。どっかの国のフクダさんやミキさんと大違いだから。
連立瓦解に関しては、シュミットさんが「社会民主主義的な政策を進めた結果、連立相手だった自由民主党との溝が深まり、82年にキリスト教民主同盟が提出した不信任決議が成立。退陣に追い込まれた」と朝日は書くだけ。社民党党内左派の理不尽なシュミット批判こそが政権瓦解の第一原因だろうに‥‥。これに触れると「二重決定」にも触れないといけないので拙いとなったのだろうか。

いやいや、特派員はちゃんと「二重決定」についても書いていたのに、外信部デスクがノーテンキで、反核運動に反対していたなんて書いたら、リベラルシュミットのイメージ低下になると勝手に判断して割愛したのかもしれないが‥‥。

毎日新聞は、辛うじて「冷戦の緊張下、ソ連に中距離核ミサイルの撤去を求める一方、北大西洋条約機構による西独でのミサイル配備を認める『二重決定』が論議を呼んだ」と指摘している。しぶしぶという感じだが?
産経も「二重決定」という言葉はないものの、「中距離ミサイル配備の決定を実現させた洞察力は高く評価されている」とは書いている。
日経も、「二重決定」の言葉はないものの、「ソ連が中距離核ミサイルを配備した際には、党内左派の反対を押し切って米国ミサイルの導入を図った」と指摘している。

その点、読売は、ベルリン特派員電こそ平凡で「二重決定」の文字もなく、産経、日経が触れている中距離核の配備導入をシュミットが実現したという指摘もないが、「評伝」を元特派員の三好範英氏が書いているが、これが秀逸だった。

この人の著書『ドイツリスク 「夢見る政治」が引き起こす混乱』 (光文社新書)はこの前本欄で紹介した。
読売評伝では、こう指摘している。

ソ連の中距離核戦力の増強にいち早く警鐘を鳴らし、ソ連との交渉が実を結ばない場合、西欧への米INF配備を行うという、いわゆる『二重決定』を進めたことは大きな意義を持つ。ソ連の軍拡に屈せず、力の均衡で対抗したことが、ソ連の経済的疲弊をもたらし、最後には冷戦崩壊を導いたと評価される」

「シュミットの『二重決定』の決断は、反核運動の激化や、身内の社会民主党内の激しい反発の中で進められたことは記憶されるべきだ。逆風に屈しない強い政治的意思と、長期的な戦略性こそ、政治家としてのシュミット氏の真骨頂だった」


二度にわたって「二重決定」の意義を指摘している。シャープである。

それにひきかえ‥‥。ソ連の軍拡に抵抗したシュミットをあまり強調すると、今日、中国の軍拡に抵抗している一部の某政治家を褒めることになりかねないことに懸念を感じて、オーウェル的手法で、「二重決定」に関する指摘をゼロにしたのであろうか。もし、そうだとしたら「新聞の自殺」ともいうべき愚行というしかないだろう。朝日、東京の良識は「風前の灯火」なのであろうか?

しかし、ともあれ、この日の東京新聞朝刊が一面で「北朝鮮拉致 国主導示す」「工作員養成の内部文書入手」「金正日総書記説明覆る」「2011年まで使用か」「具体的手法列挙」との見出しで次のように報じていたのには注目した。

北京=城内康伸】本紙は北朝鮮の工作員を養成する「金正日政治軍事大学」(平壌)でスパイ活動の目的や方法を教育する際に使用する内部文書を入手した。

拉致工作の重要性を指摘し、その方法などを詳細に記述している。朝鮮労働党関係者によると、金正日体制下の一九九〇年代後半に作成されたとみられる。拉致について教える文書の存在が確認されたのは初めて。最高指導部の方針に従った国家挙げての工作活動の一環だったことを裏付ける一級の資料となる。

内部文書は、金正日政治軍事大学が発行した「金正日主義対外情報学」という題名の対外秘密に指定された文書。入手したのは、その上巻で、三百五十六ページという膨大な量に上る。労働党関係者によると、金正日氏が総書記に就任した九七年以降に作成され、少なくとも総書記が死去した二〇一一年まで、海外で活動する工作員を養成する過程で使われていたという。

金総書記は〇二年九月に行った小泉純一郎首相との会談で、「八〇年代初めまで特殊機関の一部が妄動主義に走って」拉致を行ったと釈明した。しかし、今回の文書で、北朝鮮がその後も、少なくとも拉致に備えた準備を周到に行っていたことも併せて判明した。
文書は冒頭で「首領(金日成主席)が創始した対外情報理論を、金正日同志は深化発展させ、党が対外情報事業(活動)で指針とするべき理論的武器を準備した」と強調。文書に盛り込まれた工作活動が、金総書記の指導に基づくことを明記している。「工作員を情報核心として養成すると同時に、派遣組織(の運営)事業をしっかりと行わなければならない」との金総書記の言葉を紹介する。
拉致については「情報資料の収集や敵瓦解をはじめとし、さまざまな工作で適用される」と説明。「拉致対象の把握では、住所や頻繁に出入りする所、日常的な通行ルート、利用する交通手段、時間などを具体的に把握しなければならない」などと列挙し、拉致における重要事項を挙げた。
また「拉致した人物が抵抗する場合、処断することもできる。その場合には痕跡を残さぬようにしなければならない」と、拉致対象者の殺害にまで、内容は及んでいる。

「拉致」など工作にかかわるいくつかの言葉は、北朝鮮の発音ではなく、韓国の発音に基づいて表記されるなど、工作員の主要な活動領域である韓国の実情に合わせて訓練されていたこともうかがわれる。
 <金正日政治軍事大学> 朝鮮労働党、軍、政府機関などの幹部となり得る人材の育成と工作員を養成する教育機関。別名で「労働党130連絡所」「人民軍695部隊」とも呼ぶ。1946年に設立された金剛学院が前身で数度の名称変更後、92年に現在の名称に。教育期間は4年とも6年ともいわれる。海外で活動する工作員の養成過程では、射撃や格闘、水泳、語学などを徹底的に教育。87年に起きた大韓航空機爆破事件の実行犯、金賢姫元死刑囚は前身の金星政治軍事大で、1年間の短期集中教育を受けたとされる。



社会面に「も現場に痕跡残すな」「甘言弄し誘い出せ」「北朝鮮拉致目的・手法生々しく」との見出しでこうも報じていた。

本紙が入手した北朝鮮の内部文書で工作員養成用のテキスト「金正日(キムジョンイル)主義対外情報学」には、拉致の目的や手法について詳しい記述がある。北朝鮮が工作員の一部による犯行だと主張する日本人拉致が偶発的な事件ではなかったことが事実上、証明された。日本人拉致の再調査結果報告をめぐり、膠着(こうちゃく)状態にある日朝協議の行方にも波紋を投げそうだ。 (北京・城内康伸)



これが間違いなく北朝鮮の内部文書でホンモノだとしたら、スクープといえよう(時々、ニセ文書を作成し、ディスインフォメーションをするスパイ組織があるから要注意?)。東京夕刊では、荒木和博氏(拓殖大学教授・特定失踪者問題調査会代表)による文書へのコメント(文書は大変重要なもの)を掲載している。

東京新聞には、拉致工作に関して、日本国内の何らかの北朝鮮シンパの人間や団体が協力した事実があるのかないのか、そのあたりのスクープを期待したいものだ。反原発、反左翼全体主義国家の視点で、ちゃんとした事実に基づく報道は大いに賛成。

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!

(以下再録)

2012/02/19(日) 04:42:18
 1980年前後の世界は、今と同様混沌混迷の世界ではあった。ソ連のアフガニスタン侵攻など、相次ぐ国際共産主義勢力の台頭に対して自由世界をリードするレーガンやサッチャーと並んで西独の指導者ヘルムート・シュミットは、僕にとっては期待の星であった。
 ソ連が東欧に配備した新型中距離核ミサイル(SS20)を撤去しなければ米国の中距離核ミサイル(パーシングⅡ)を配備するといった「二重決定」 (ソ連に対し先ず米国との核軍縮交渉を求める。それが不調なら米国の中距離核ミサイルを西欧に配備するという「軍縮」を視野に入れつつも「軍拡」も行なう)をシュミットは推進した。当然の措置である。目には目を、歯には歯を、核には核を、で対抗するしかない。
 すると、ソ連からの煽動もあり、日本も含めて欧米では左派リベラルを中心に「反核運動」が展開された。すでに配備されているソ連のSS20には「沈黙」し、対抗措置としてこれから配備するかもしれない、しかもモスクワには届かないという配慮も見せているアメリカの核ミサイルのみに反対するという、ソ連を「祖国」とみなす偏狭なナショナリストや偏った「平和運動屋」によるものだった。
この経緯に関しては佐瀬昌盛氏の『虚報はこうして作られた 核情報をめぐる虚と実』『「朝日」の報道はここがおかしい 軍事情報をめぐる虚と実』 (力富書房)が詳しい。当時のソ連に操られた反核煽動報道の愚かさを感得できる。

 シュミット曰く「私は与党・社会民主党内の支持も失い、結局は政権を去ることになった。だが、肝心なのは後継政権が合意を守るか否かだった。コール政権は米ミサイルの西独配備を実行した。『二重決定』の8年後、(ソ連が妥協に応じ)米ソ間で中距離核戦力廃棄条約が結ばれた。指導者は政権を失うことになっても、国益のために必要なことは実行しなければならない」 (読売新聞・2012年2月14日。聞き手ベルリン支局長三好範英氏。ちなみに三好氏の亜紀書房刊行の『戦後の「タブー」を清算するドイツ』は名著。)

 93歳で存命でインタビューに答えられるとは! またこのコメントは立派である。「指導者は政権を失うことになっても、国益のために必要なことは実行しなければならない」という文句…。ただ、シュミットのように正しい決定ならいいのだが、間違った決定(単細胞的増税路線?)を実行するのは困る。

 現時点での日本の「二重決定」とは、「先ずは冗費節約、公務員給与削減・不要な定員削減、不要不急の国有地売却。半官半民的会社の株売却などによる国費創出、日銀によるデフレ脱却金融政策の推進-国債・外債買入云々など」をした上で、なおかつ財政破綻阻止などのために「消費税見直し、アップなど」となるのならかろうじて論理的帰結とまだ言えるかもしれない。だが、野田首相の路線は、そういう「二重決定」のイメージが浮かんでこない。SS20(歳出・冗費削減)にはあまり関心を示さず、パーシングⅡ反対(増税賛成)のみ声高に主張していないだろうか。 
 
 シュミットは社民党の政治家だが、日本の社民党とは大きく異なることはいうまでもない。なにしろシュミットに関する本(ジョナサン・カー『超大国のはざまで 西独の名首相ヘルムート・シュミット』メディアハウス出版)を見てもわかるように、彼は政治家になってから国防軍に志願して予備役の「兵士」になった体験もある。中道左派リベラル政党の社民党といえども右派ということもあって立派! その政治理念などに関しては申し分なく、ノーベル平和賞を授与してもおかしくない存在だった。

 読売記事でも触れられているが、ハンブルク市内相時代、高潮に襲われた時、超法規的措置として連邦軍の出動要請を決定して多くの人を救った武勇伝もある。どっかの国の自衛隊の速やかな出動要請を怠る社会党首相や知事とは大違いだ。ルフトハンザ機ハイジャック事件の時も、どっかの国の「人命は地球より重い」「犯罪者にテロ資金供与」のような甘い考えを抱かず、「テロリストには二度と妥協しない」との方針から特殊部隊を突入させたこともあった。危機管理宰相としての資格を持つ政治家だった。立派!

 かつてシュミットが日本の福田首相と会談してSS20の脅威を説いたところ、彼がその存在を知らず呆れたことがあったと伝えられたことがある。首相ともあろう者が、SS20も知らない国防オンチなのは平和ボケ国家日本ならではのことだと言われたものだった。しかし、政治家とて、日本の政治家なら、今だと中東やイラン情勢よりは、北朝鮮の核や拉致問題の方に頭が痛いだろう。ドイツの政治家も北朝鮮の核や拉致問題に関してさほどの関心も理解も持っていないのも多いだろう。シュミットとて、この読売のインタビューでは、中国に関してとんでもないボケ発言をしている。

「中国には米露のような使命感を伴う領土拡張思想はない。しかも、沿海・内陸間の格差や環境、エネルギーなどの大問題を抱える。帝国主義的な行動を取る余裕は今後数十年間はない」と。

 日本だと、日共幹部といえども、福島みずほさんでもここまでは言わない? ドイツにはウイグルやチベットからの亡命者たちもいるはずだが、「帝国主義的な行動」を戦後、建国以来一貫して取っている中共の蛮行が目に止まらないのだろうか。ドイツにとって、中国は経済的恩恵はこうむれども、領土領海などに関しては、何のプロブレムもなく、遠い果てにある「友好国」でしかないのかもしれないが、晩節を汚すようなアジア無知発言は、彼の功績に傷をつけるものであろう。尊敬する政治家としてシュミットを僕は上げてきたが、今後は尊敬する政治家は誰かと聞かれたら「レーガン、サッチャー、シュミット」と答えるのは変わらないとしても、但し「いずれも首相(大統領)在任中まで」との限定をつけるべきか?

 ウィキペディアによると、シュミットはヘビースモーカーとのこと。そういえば読売記事の写真でもタバコを手にしているようである。それでもこれだけ長生きし、アジア認識はともかくとして「ボケ」(?)ていない。立派というべきか? やはり…というべきか?

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