古本虫がさまよう 歴史「捏造」主義と、歴史「修正」主義の違いが分からないといけない
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歴史「捏造」主義と、歴史「修正」主義の違いが分からないといけない
(2015・6・22・月曜日)








日韓国交回復50周年の記念すべきときに、早坂隆氏の『愛国者がテロリストになった日 安重根の真実』 (PHP研究所)を読んだ。

伊藤博文を暗殺した安重根なる人物については、犯人は韓国人ということ以外(?)ほとんど知識がなかった。
本書は、彼の出自(両班)やその家族や当時の日韓関係、暗殺現場の現在、いわゆる「記念館」の実情など、さまざまな角度から、テロリスト安重根に迫っている。

著者の結論は「安重根は愚劣なテロリストである」とのこと。ほぼ同感。
伊藤がいまでいえば、対韓姿勢は「リベラル」的であった事実も知らずに、単細胞的に悪漢とみなしてその暗殺を謀ったがために、日韓併合を招いたともいえる。その意味でも暗愚だったともいえようか。

著者はソウルやハルピンの『安重根記念館』にも足を運んでいる。ハルピンでは意外と閑散としていたとのこと。ソウルでは熱狂的な(?)愛国教師に反問をしたがために「お前はナチスを肯定するのか?」と罵られたり、威圧的態度を取られたりもしたという。おお、ヘイトスピーチ、ヘイトアクションか?

韓国では『安重根、アベを撃つ』なる小説がベストセラーになっているという。こういうのこそ、ヘイトクライム的な本といえようか。小説とはいえ、歴史捏造書?
同じヘイトでも、日本人がちょっとすると大騒ぎして、韓国人がやると軽視するのが、一部の日本人の偏狭なナショナリストであろうか。

もっとも安田浩一氏の『ヘイトスピーチ 「愛国者」たちの憎悪と暴力』 (文春新書)を読むにつけ、在特会などの言動は行き過ぎているのは間違いないだろう。
そういう行き過ぎに対して、安田氏によるとこんなことがあったという。

あるとき、全国紙の記者が私に打ち明けた。
「彼ら(差別デモなどの参加者)が怖いわけじゃない。ただ、抗議の電話やファックス、メールなどが相次ぐと、社内的に「触れると面倒だよな」といった空気が生まれる。それがときに報道を躊躇させるひとつの理由となってしまうこともあるんです。


おやおや、すると、かつての朝鮮総連の執拗な抗議怖さに北朝鮮批判をためらっていた一部全国新聞もあったかと思うが、右であれ左であれ、組織的な抗議活動をする集団には弱いということか? 情けない。どちらにも屈しないということが肝要ではないか。週刊朝日が、北朝鮮を批判した『凍土の共和国』 (亜紀書房)を勇気をもって紹介した時、朝日ともあろうものがということで朝鮮総連が集団的抗議活動を行ない、連載が途中打ち切りのようになった史実を思い出す。

この件の経緯は、「はきだめにつる」の朝日の元ソウル特派員でもある前川惠司氏の『夢見た祖国は地獄だった』 (高木書房)で詳述されている。すでに紹介ずみの本であるが、以下、まずは再録(一部略)。

前川氏は古巣の朝日の帰国運動時の報道も含めて俎上にのせて検証もしている。共産主義者のトリックを見破ることのできなかった当時のマスコミの報道は勿論問題であろう。ただし、騙された側面もあるだろうし、少なくともおかしい、怪しいと気づいたら方向転換するべきであったにもかかわらず、週刊朝日などは、本書でも紹介されているように、80年代に(84年4月20日号~)、金元祚氏の『凍土の共和国 北朝鮮幻滅紀行』を好意的に取り上げていたが、朝日本体は後年まで北賛美を繰り返したものだった。
前川氏は、北批判の本を取り上げた「週刊朝日」への朝鮮総連の一方的な抗議活動を垣間見た体験もあるそうな。

「この号が発行されるや、週刊朝日編集部の十本以上ある電話は、朝から『事実無根だ。抗議する。俺は在日同胞だ。記事を取り消せ』との電話が切っても切ってもかかり続け、朝日新聞社の交換台が悲鳴をあげ、部内連絡などのため臨時電話を多数引かざるをえなくなった。朝日新聞本社前には多数の朝総連メンバーが押しかけ、一般の来訪者の通行に支障が生じた。こうした行動の狙いは第二弾の掲載阻止だった。本社前で抗議活動を指揮していた知り合いの朝総連幹部に、私は、『立場の違いで受け止め方に差があっても、事実は事実。どんなに業務妨害しても無駄』と伝えた」「『言いがかりをつけて、軒先でいつまでも騒ぎまくり、制止を無視するあなた方に警備員が反感をもつのは致し方ないことです。あなた方は民族団体でありながら、在日朝鮮人に対する反感を生み出しかねない行動を平気で同胞に指示しているのか』と反論し、編集部に届いていた三百通以上の抗議葉書の束を総連幹部に見せ、『葉書の消印は全部、朝鮮大学校がある郵便局のものです。ここにしか、在日朝鮮人は暮らしていないのですか』」と問うたりもしたそうな。

朝鮮総連としては、「味方」のはずの朝日から批判を受けて焦っていたのだろうが…。前川氏も、入社して、まもないころに労働組合の席で、韓国旅行の体験から、韓国を不正の暗黒国家のように見るのは単眼すぎると話したところ、周囲に「冷やかな空気」が流れたとのこと。「北流」の空気が強かったという。
そのあたりの朝日の北朝鮮讃美報道の一端は、稲垣武氏の『朝日新聞血風録』 (文春文庫)でも詳述されている。 

電力会社用意の「モデルコース」を歩いて「原発は安全!」と言っていたのと同様に、北朝鮮政府の「モデルコース」を歩かされて「北朝鮮は地上の楽園」「税金もない」「病院はタダ」…といった趣旨の訪問記を刊行した日本の知識人・編集者たちの「言論責任」は大きいだろう。

僕が生まれたころから始まった「帰国運動」。半世紀を経てもいまなお、解決していないこういう問題に、もっと関心をもっていくべきだ。拉致を含めて現在進行形の「人権」問題も、相手が共産主義国家だと、まだ遠慮してモノを言う人が多すぎないか。



ともあれ、呉善花氏の『生活者の日本統治時代 なぜ「よき関係」のあったことを語らないのか』 (三交社)なども、オーラルヒストリー的に日本の植民地統治の実態を、韓国人の証言によって再構成した本だったが、彼らは是々非々で、日本の植民地を回想していたと記憶している。

金日成や毛沢東やヒトラーやスターリンでも、百パーセントの悪ではなく、評価できるところもあったかもしれないが、それを思えば、日本の植民地統治も、評価できる点もあったはずだ。それを一切無視して暗黒視しての断罪論はおかしいし、戦後70年が経過し、その間、少なくとも国交回復以降、日韓にしても、日中にしても贖罪的的な経済援助を行ない、両国が経済成長をする上で、多大な貢献をしてきたのは客観的な事実ではないか。
にもかかわらず、未だに謝罪していないだのなんだのと言い募るのは、ヤクザの脅し(?)みたいに滑稽というか見苦しいものというしかない。日本人の多くが、いい加減にしろと言いたくなるのも当然の反応だろう。

偏狭なナショナリズムというのは、日本より韓国や中国のほうに、より多く、より強く見られるのではないか。また政府内部の人間が、そうした偏狭なナショナリズムに毒されている傾向が強いのではないか。客観的にみて、そう判断するしかあるまい。

歴史捏造というのは、単なるテロリストを愛国者と持ち上げたりすることも一例として挙げられよう。

「修正主義」というと、ベルンシュタインの『社会主義の諸前提と社会民主主義の任務』 (1974・ダイヤモンド社・佐瀬昌盛訳)という本がすぐに浮かぶ。これは名著だ(積んどく30年?)。

マルクス・レーニン主義者からすれば、トロツキー以上にベルンシュタインは許せない裏切り者で「修正主義者」は蔑称かもしれないが、世の中、すべて一歩一歩の改革、修正によって進歩していくもの。その意味で、「修正主義」「改革主義」はおおむね正しい。
 歴史の「真実」とやらも、「修正」「論争」によって変化するもの。アウシュビッツにガス室はなかったなどといった捏造はむろんおかしいが、虐殺数の人数の「修正」も否定するような知的姿勢は、おおむね傲慢でしかあるまい。

毛沢東や金日成のジェノサイドに沈黙するのも「捏造」への加担であり、彼らが人民の輝く指導者ではなかった側面が多々ある事実を掘り起こすのは正しい意味での「修正」であり、それを「歴史捏造主義(歴史修正主義)」といって批判するのは間違っている。

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!

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