古本虫がさまよう 憲法学者はなぜ変節するのか? 憲法解釈が変遷するから?
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憲法学者はなぜ変節するのか? 憲法解釈が変遷するから?
(2015・6・9・火曜日)




この前、自民党や次世代の党が推薦した憲法学者が、推薦者の意図と反することを国会で述べたので、「人が犬に噛みついた」ようなニュアンスとなり意外だということで報じられたことがあった。


集団的自衛権行使、全参考人が「違憲」 衆院憲法審
2015/6/4 20:27(日経)
6月4日の衆院憲法審査会で、参考人として呼んだ3人の有識者全員が集団的自衛権の行使容認について「違憲」を表明した。自民、公明両党が推薦した参考人までが違憲と断じたことに与党内では波紋が広がり、身内批判も飛び出した。野党は与党の「オウンゴール」に勢いづいており、安全保障関連法案を巡る審議での攻勢を強める構えだ。
 審査会は4日「立憲主義」などを議題に意見を聴取。参考人が意見を述べた後、各党委員が質問した。注目を集めたのは、集団的自衛権の行使容認が憲法違反でないかと聞いた民主党の中川正春氏の質問だ。
 「先生方が裁判官だったらどう判断しますか」。この問いかけに、与党と次世代の党が推薦した長谷部恭男早稲田大教授は「憲法違反だ。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない」と明言した。
 民主党が推薦した小林節慶応大名誉教授も「憲法9条は海外で軍事活動する資格は与えていない」、維新の党推薦の笹田栄司早稲田大教授も「(従来の法制を)踏み越えてしまう」と、いずれも「違憲」と表明した。
 与党側は審査会中に危機感を高めたようで、安全保障法制を巡る与党協議で中心となった公明党の北側一雄副代表は用意していた質問を引っ込め「憲法の枠内でどこまで自衛の措置が許されるのか(政府・与党で)議論した」と反論した。
 自民党の国会対策委員会幹部は「安保法制の審議を正常に戻そうという時にタイミングが悪い」と憤る。衆院平和安全法制特別委員会は審議日程を巡って野党が反発し、4日にようやく5日の審議再開を確認したばかり。与党幹部らも審査会の始末に怒りを隠さない。
 なぜ与党は行使容認に反対の長谷部氏を呼んだのか。4日の審査会は憲法改正の限界や違憲立法審査など幅広い議論を予定し、人選に携わった自民党幹事には「集団的自衛権を巡る見解を正面から問われるとは思わなかった」との誤算があった。改憲派の学者も浮上したが、より立憲主義に詳しい長谷部氏を呼んだ。
 野党は活気づいている。民主党の長妻昭代表代行は記者会見で「集団的自衛権の行使が憲法の枠内にきちっと収まっているのか私も疑問に思っていた」と強調。法案自体が憲法違反との観点からも追及を強める意向を示した。民主党の中川氏は党代議士会で「与党もこれ以上、議論を進めることはできない」と力説。共産党の志位和夫委員長も違憲性に焦点をあてていく考えを表明した。
 審査会は有識者の意見を受け、11日に同じテーマで各党が議論する。



長谷部氏は特定秘密保護法に「賛成」したことがあり(自民党推薦の参考人として2013年11月13日の国会で特定秘密保護法に賛成の意見を述べた)、そのためか(?)、2013・12・ 20の朝日に、彼のインタビュー記事が大きく出ていた。これが結構笑える代物だった(長谷部氏がとてもシャープで、聞き手の朝日女性記者がいいように弄ばれている感じだったから?)。

「もしかして『御用学者』と呼ばれていませんか」と朝日記者が聞く…。自民党推薦の参考人として11月13日の国会で特定秘密保護法に賛成の意見を述べたからであると。

賛成しているのは「国を守るための法律だからです。国を守るとは、憲法を守るということです。単に物理的に領土を守るとか、国民の生命と財産を守るということではありません。中国や北朝鮮と同じ政治体制でいいなら、国を守る必要はない。しかし憲法の定める自由で民主的な統治の基本秩序を守り、現在の政治体制を守るためには、特定秘密法をつくり、特別な保護に値する秘密が外に漏れないようにしなければなりません」と言い切る。

いや、おっしゃる通りではないか。自由と民主主義体制を守ることが大事であり、その体制を破壊しようとする勢力との「戦う民主主義」「戦闘的民主主義」を僕も支持するから、長谷部氏の言い分にも納得する。

本欄でも、「特定秘密保護法が成立すれば、戦中どころか、今の北朝鮮や中共のような自由のない国になる」と朝日などは主張すればいいのに、なぜしないのだろうかと皮肉を書いたこともあるが、死刑の規定もない以上、北朝鮮のような国になることもなさそうだし、それどころか、北朝鮮や中国のような政治体制にしないためにも成立させることが必要ということになるのか?

かといって、長谷部氏は、集団的自衛権の行使容認にも大反対だし、96条の改正用件の緩和にも反対とのこと。

「安倍政権は危ないことをやろうとしているようには見えます。しかし特定秘密保護法で日本が戦前に戻るというのは非常におかしな議論です。今にも戦争が起きると言わんばかりの報道で人々をおびえさせるのはそろそろやめて、次のステージに移った方がいいと思います」と。

まぁ、聞き手の女性記者は、漫才のボケ、ツッコミ同様、適度な聞き手として振る舞っているかのようにも見えないでもない。ご自身の信念はともかくとして、論説委員クラスに、少しは目覚めたら…ということでもあるのかも?

ともあれ、この記事でもわかるように長谷部氏は、是々非々(?)の立場で、特定秘密保護法には賛成だから、自民党推薦でもよかったのだろうが、集団的自衛権の行使容認には反対だし、96条の改正用件の緩和にも反対と明言しているのだから、集団的自衛権の行使容認について国会の審議会に自民党や次世代の党が推薦するなんて自殺行為みたいなものだろう。

それはさておき、民主党が推薦し、長谷川氏と同じく、集団的自衛権の行使容認について「違憲」を表明した小林節氏の『タカ派改憲論者はなぜ自説を変えたのか  護憲的改憲論という立場』 (皓星社)を読んだ。

20年以上前の「タカ派改憲論者」の時代の論文から始まり(?)、最後には井沢元彦氏からもサンダーバードに対する理解力が乏しいという視点から論難された典型的な左派憲法学者の水島朝穂氏と意気投合するかのような対談で終っている。
ここに収録されている論文を読むと、やはりいささか「矛盾」めいたものを感じないでもない。「転向」という側面を感じるかもしれない。とはいえ、「護憲的改憲論」は僕の従来の考えでもあるので、読んでいてそれほどおかしいという感じもしなかった。

だが、彼も冒頭で「今にして思えば『赤面の至り』のようないわば『右翼・軍国主義者』そのものの主張を本気で展開していた若き日の自分がおりました」「私は学者であり」「日々考え、悩みながら変化することは当然で、それは成長なのですが、意外にそれを『変節』と呼ぶ人が多いことに驚かされます」と述懐している。

また本書では、小林氏の教え子(野口健格氏・中央学院大学専任講師)が、解説を書いていて、小林氏の「変遷」について綴っている。しかし、長島昭久氏(民主党代議士)も教え子だというから、民主党にあって、集団的自衛権行使に関して容認的である彼が「解説」を書けば、ちょっと違った内容になったかもしれない。
   
だが、憲法学者が考えを改めるということはよくある。
中央大学法学部教授だった橋本公亘氏は元来中道リベラル派の憲法学者と見られていたが、自衛隊違憲説から自衛隊合憲説に改めたことで知られる( 『日本国憲法改訂版』有斐閣を参照)。
そして、『わが旧著「憲法」を絶版にした理由 石橋・小林流「自衛隊違憲合法論」を斬る 』という論文を発表し(「諸君!」1984年12月号)、東大の小林直樹氏などを批判していたものだ。

同じく中央大学教授だった長尾一紘氏も中道リベラル派と見られていた。外国人参政権付与にも賛成していた。ところが、『日本国憲法 全訂第4版』 (世界思想社)では、保守派に転向。外国人参政権付与に反対するようになった。天皇制度にしても、日本は君主国家、天皇は元首であると見ている。皇位継承は男系主義であり、女系天皇の導入はこの伝統に反するがゆえに「違憲である」と認定している。

ところで、小林節氏(慶應大学教授)の本はいままで何冊か本欄で取り上げてきた。

以下、ちょっと再録的になるが、まずは『「憲法」改正と改悪 憲法が機能していない日本は危ない』 (時事通信社)について…。
この前の著『憲法守って国滅ぶ』 (KKベストセラーズ)も読んだことがあるが、護憲的改憲論の立場からの改憲・護憲論が展開されている。

一字一句たりとも改正してはいけないという教条的護憲派は嫌だし、明治憲法に戻るべきだという改憲派にも与しないというのが著者のポジション。まぁ、そのあたりは標準的なところで、異論はないが…。

ただ、明治憲法に戻ろうという改憲派ももうあまりいないし、護憲派とて正直に天皇条項は変えたがっていることを告白するようにもなってきた。

その意味で現行憲法絶対死守派も、現行憲法廃憲・明治憲法復古派も「ニホンカワウソ」的状況(絶滅?)なのかもしれない。

 意外(?)なことに、小林氏は天皇制度に関しては男系に限るとのこと。靖国問題などにはあまり言及はせず、宗教非課税には賛成の立場。

また、小林節氏の『白熱講義! 日本国憲法改正』 (KKベストセラーズ)を読んだことがある。
 この人、産経の正論執筆陣の一人でもあり、改憲派の法学部教授としては以前から少数派であった。その前に刊行された著書もかつて何冊か一読した記憶がある。 『憲法守って国滅ぶ』 (KKベストセラーズ)や、渡部昇一氏との対談本『そろそろ憲法を変えてみようか』 (致知出版社)、平沢勝栄氏との対談本『憲法、危篤!』 (KKベストセラーズ)などである。

最近は96条の改憲条項緩和(国会議員三分の二を過半数に改正)に反対論を展開し、「護憲派」からエールが送られたりしている。
先の本を出した頃の論調と現在とで小林氏の見解は大きく変化したのか、さほど変化していないのか、全く微動だにしていないのかは未確認だったが、『タカ派改憲論者はなぜ自説を変えたのか  護憲的改憲論という立場』 を読む限り、書名通り、微動はしていることになろう。

本書(『白熱講義! 日本国憲法改正』)でも小林氏は9条の改正は必要だと指摘している。ただ、押し付けられたのは事実だとしても、それはそれで半世紀以上機能してきたのだから、無効とか廃憲とかいっても仕方ないという立場のようである。

このあたりへの反対論としては、兵頭二十八氏の『「日本国憲法」廃棄論 まがいものでない立憲君主制のために』 (草思社)や、小山常実氏の『「日本国憲法」無効論』 (草思社)、 『憲法無効論とはなにか占領憲法からの脱却』 (展転社)、菅原裕氏の『日本国憲法失効論』(国書刊行会)などが参考になる。石原慎太郎氏などの廃憲論などとも相通じるところが…。

無効・廃止論はともかくとして、憲法学者に自衛隊違憲説的な9条護憲論者がなぜ多いかという指摘の中で、要は教授が後継者を選ぶ時に、東大早稲田などが護憲派グループを構成しており、「人事のたびに事実上、踏み絵を踏まされて『君は憲法9条を守る立場かな?』などということがなされているはずだ」と小林氏は断定し、そのために憲法学者の中では9条護憲派が世間と異なり多数派になってしまうとのこと。なるほど。

慶応大学にはそうした護憲派的学閥がなく自由な立場で憲法論を展開できるとのこと。そして、ご自身は改正(改良)には賛成、改悪には反対という立場とのこと。

たしかに護憲的改憲論が一番大切であろう。9条改正絶対阻止(内心は天皇制度条項廃止?)の反憲法的護憲論こそ最悪の立場であろうか?

ともあれ、自民党の改憲案に対しても逐条的に賛成(〇)、反対(×)、保留(△)のコメントを付してもいる。これは大変参考になった。〇が29項目。×が11項目、△が7項目。国防軍の名称に関しても肯定している。

僕自身、国家意識は持っているが個人主義を大切にしたい人間なので(?)小林氏が指摘する×や△に関しては、若干異論もあるが、なるほどそりゃそうだと思うところもいくつかあった。

ちなみに、小林氏の本では名指しはしていないが、「ある著名な女性評論家」のある主張(憲法には権利ばかりで義務が少ない、だから国を愛する義務や家庭を大事にする義務を憲法に盛り込みましょう云々)を手厳しく批判して、これでは国民が国の主だということを放棄して「ご主人様、躾けてください!」と言っているようなもので、これではマゾだと批判している。
ううむ? この「著名な女性評論家」は誰を指しているかは不明。もっとも伝えきくところによると、大学の憲法の授業では、「ある著名な女性評論家」をしばしば名指しで批判していたそうな。
誰だろう? 恐らく、櫻井よしこ氏のことであろう。「憲法(9条)を守る」ことも「締切りを守る」ことも大事といえば大事だろうが……。

9条に関して、自衛隊違憲説にならないような改正が望まれるのであって、改正したら戦争になるぞといった俗論の悪影響を受け、世論調査では新聞社によってはあたかも「護憲派」が多いような印象を受けることもある。だが、よく読むと、9条改正「反対」の護憲派という人だって、自衛隊は合憲と思う、日米安保は必要だと思うというのが多数派。ということは、自衛隊違憲説を否定する程度の改憲には賛成するだろう。

要は、9条は戦争放棄、戦力を持たないと定めており、日本が戦後戦争をせずに平和であり続けてきたことに9条が役立っていると思いますか、と枕詞をふんだんに使った上で聞いたりするとまぁ、役立ってはきただろうということで、〇をつけると「9条『平和に貢献』78%」と麗々しく報道されるのである(朝日新聞2007年5月3日付け紙面参照のこと)。

ところが、この世論調査でも、いまの自衛隊は憲法に違反しているか違反していないかと聞くと、「違反している」は23%、「違反していない」が60%になるのである。

さらにいまの憲法には自衛隊のことは書かれていない、自衛隊の存在を憲法の中に書く必要があるかどうかという質問には「書く必要がある」が56%、「書く必要はない」は31%となっている。「書く必要がある」というのは、自衛隊合憲になるように9条を改正することに賛成する可能性も高い人々であろう。ということは9条改正派は国民の支持を得ているということにもなろう。
ともあれ、先の小林氏の指摘にあったような単細胞的な9条護憲派の憲法学者による護憲一点張り本を読むのもいいが、違った憲法観の本を読むことも大事。また改憲派の中にも、小林氏のような人もいる。さまざまな主張を個々人が読み、自分自身の考えを持つことが肝要だろう。

大事なことは「ネバーセイネバー」の精神。その意味では、2015・6・8毎日夕刊に載った半藤一利氏のコメントも頷ける点がある。

安倍首相が、安全保障関連法案に関して、「米国の戦争に巻き込まれることは絶対にない」と断言したのを聞いて、「絶対、などとなぜ言い切れるのか。あの言葉に心から安心できた人がいたのでしょうか」と案じている。

僕も、あの言葉を聞いて「ネバーセイネバーなのになぁ」と感じたものだった。

半藤氏は「だから異なる考えを持つ人と語り合い、意見が違っても語り合えるだけの人間関係を築きましょう。物言えば唇寒し、と自分を縛らず、率直に意見を述べ合い、書いていきましょう」と結語している。

若い時はともかく、近年、僕は「語り合う」のは、いささか面倒というか、居酒屋でやりあったとしても、「喫煙者と語り合う」のは、よほどのことがない限り忌避するようになったので(?)、その分、もっぱら「異なる考えを持つ人」の本や記事を時々は目を通すようにはしている。

鼻孔に他人の鼻や口から吐き出される悪臭が流入するのは嫌だが、頭脳に他人の思考が流入するのは嫌な考えであっても知的刺激を受け、それはそれで頭脳活性化に役立つから構わない。

「多様な考え」の中にも、リベラルな考えの中にも、超保守派の考えの中にも、「ううむ、なるほどね」と感じることもあるものだ。

人がいるところではタバコを吸わない全体主義者(ファシスト&コミュニスト)と、人がいるところでもタバコを吸う民主主義者とがいれば、どうするか?

究極の選択を求められるが、どちらとも語り合わないことにするのも一つの立派な考え方であろうか?

いやいや、人のいるところではタバコを吸わないマナーを持っている民主主義者とだけ付き合うのもまたよし?

ともあれ、ネバーセイネバー。
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