古本虫がさまよう 「みすず」の本を読むなら、ピケティよりルカーチに限る?
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「みすず」の本を読むなら、ピケティよりルカーチに限る?
(2015・5・31・日曜日)







ピケティの『21世紀の資本』 (みすず書房)は買いもせず、図書館で借り出したもののほとんど読みもせず(ぱらぱらとめくりはした)、さっさと返却したが、同じ、みすず書房の本でも、ジョン・ルカーチの『歴史学の将来』は200頁足らずということもあり、読了するのは簡単だ(ただ、お値段は本体価格3200円!)。ジョン・ルカーチは、1924年生まれでまだ存命。ハンガリー出身だが、戦後すぐにアメリカに移住している。

みすず書房は、以前、本欄で絶賛したノーマン・ネイマークの『スターリンのジェノサイド』も薄めの本であったが、内容は濃くて勉強になる本だった(いわゆる「みすず文化人」からは軽視・無視されたかも?)。

ルカーチに関しては、似た名前の「コミュニスト」がいる。ジェルジ・ルカーチ。こちらは、1885年生まれで、かなり昔に死んでいるが、ややこしいのが、この人もハンガリー生まれ。マルクス主義者のようで、政治、哲学的な本もよく出していて訳出もされている。ハンガリー動乱の時、いろいろとあったようだが、体制派ではあったようだ。

ともあれ、ジョン・ルカーチの『歴史学の将来』を再読。

前回紹介した時は、本書は、トクヴィルやオーウェルやカーなどに言及しつつ、また、さまざまな歴史書などを紹介しつつ、活字離れの現状にも憂いのコメントを寄せているということで、以下の一文に感銘を受けた旨を引用し指摘した。

「多くのまじめな歴史学者にとって、本を出版する機会は減っており、条件も急速に悪化している。大半とは言わないまでも多くの大学出版局では、初版の刷り部数が500部か、もっと少なくなっているのだ。主な原因は、専門的な歴史書を必ず購入する大学図書館の数が従来の半分以下に減ったことにある。その結果、本格的な学術書を始め、専門家の書くものは軒並みひどく高価になってしまった。さらに悪いことに、それらは一般の本屋の棚には並ばない。かつてはそうした本を取り揃えていた大学内の書店でさえ、扱わないのである。こうした退行現象が続けばこの先どうなるのか、考えるだけでもおぞましい。希望に満ちた若手研究者は、とりわけ意気消沈していることだろう」

今回は、そのほか、あの朝日による二つの「吉田証言」歪曲報道があったからということもあり、以下の一節にも改めて感銘を受けた。

「史料の改竄や偽造は、以前に比べると技術的にも容易になっている。最近の狡猾な手口は、公文書館から盗み出すのではなく、偽造した史料を既存のファイルに滑り込ませるやり方である。これには保管担当者も打つ手がほとんどない。私は一度ならず、第二次世界大戦に関わる人物や出来事に精通した何者かが創作した重大な偽造文書に出くわしている」「そしてここにこそ、歴史の専門家が介入する義務と責任がある。歴史の専門家は、自分たちにとっての真の利益はのために貢献すべきであり、史料の偽造(およびその解釈)を発見し指摘しなければならない。この仕事には、記録文書に対する深い知識と経験が必要である」

彼は、デイヴィッド・アーヴィングの脚注に示された典拠史料のマイクロフィルムについて、調べる必要を感じて調べたことがあるそうな。

「彼が根拠として引用した史料がまったく関連性のないものであることを突き止めた(この発見にいくらか安堵したことを白状しよう)」と書いている。

なるほどねぇ。慰安婦強制連行やら真珠湾奇襲問題やら、いろいろと新発見やらあるけど、そこまでちゃんと問い詰める、調べる人は歴史家の中でも少数派なのであろうか。

そのほか、マイクロフィルムなどにしても、

「その典拠資料が簡単には確かめられなくなっている」「その史料番号どおりの現物を確認できたとしても、専門家が注意深く読んでみると、結果的に、その史料は『事実』や発言を証明していないと明らかになる場合もある」「そうした捏造は、きわめて高度な知識をもつ人物によって非常に巧妙に行われている」「このように周到に行われた偽造を一般読者が見抜くことは期待できまい。それは、歴史学者の任務である――終わりのない仕事ではあるが」と。

どっかの大新聞の記者サンのように、珊瑚礁まで、都合がいいように「破壊」して「偽造」して報道する手合いがいるのだから、油断禁物ということだろう。

こういう本は何度か読むといろいろと新たな感銘を受ける本であろう。

ともあれ、ネバーセイネバー。
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ジョン・ルカーチ「歴史学の将来」は仙台市図書館の閉架書庫にただ1冊だけ寂しく保管されており、誰ひとり読むことは無いでしょう。古本虫様のような方からの外界情報がなければ、書庫の奥底で虚しく古びて行くだけです。図書館の使命は新刊ベストセラー本の大量品揃えには無いことを痛感させられます。ジョン・ルカーチ「評伝ジョージ・ケナン」(対ソ「封じ込め」の提唱者)もあるようなので、近々借受けて併読します。
青木明  05/31/2015 Sun URL [ Edit ]
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