古本虫がさまよう 『国王陛下の新人スパイ』を読んだ人は、『呪われた医師たち ナチ強制収容所における生体実験』や『絶望の航海』も『秘密の扉 担任女教師と女医と看護婦』も『米露開戦①②③④』も読んでいます?
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『国王陛下の新人スパイ』を読んだ人は、『呪われた医師たち ナチ強制収容所における生体実験』や『絶望の航海』も『秘密の扉 担任女教師と女医と看護婦』も『米露開戦①②③④』も読んでいます?
(2015・4・8・水曜日)







スーザン・イーリア・マクニールの『国王陛下の新人スパイ』 (創元推理文庫)を読了。いやはや面白かった。さらなる続編(第四冊目)もすでに刊行されており、訳出予定とのこと。

今回(『国王陛下の新人スパイ』)の舞台はまだアメリカ参戦前で、ユダヤ人虐殺の初期の段階…。そのうち、五作目が出るとしたら、その巻では、日本にスパイとして潜入する可能性もあるのではないか。

というのも、マギーは、今回は、ドイツ人という役回りでスパイとなっているからだ。当然ドイツ語堪能であるものの、スイス育ちなので若干ぎこちないというか、なまりがあるという設定であっても、ちゃんとしたトイツ人として活躍し通用したのだから、40代だったゾルゲの親戚の娘としてなら訪日可能かもよ。マッサンの奥さん(英国人)と違って同盟国のドイツ人なら大丈夫。美人という設定だから、当時の著名代議士の「研修秘書」として勤務も可能になるかも? でも、日本語をマスターしなくてはいけないか…。ちょっとなぁ…。それに、第三作目でこれだけ、ドンパチと(?)「活躍」すると、ちょっと無理かな。経歴を誤魔化すことは難しくなった? 
ドイツワインの研究をしている日本人と電撃結婚して訪日するとか……。

ともあれ、今回の作品でも、前二作同様に、ストーリーの展開の中で、ユダヤ人虐殺やらいろんな「現代史」のエピソードが出てくる。「エニグマ」など暗号解読関係者も実名で出てくる。いずれもおおむね「現実」であろう。キム・フィルビーも第四作以降に向けてか、複数の箇所でさりげなく登場していた。

キム・フィルビーといえば、最近刊行された、チャールズ・カミング『ケンブリッジ・シックス』 (ハヤカワ文庫)は積んどくしたままだ。イギリスの秘密情報部MI6やMI5に、キム・フィルビー以下、アンソニー・ブラント、ガイ・バージェス、ドナルド・マクリーン、ジョン・ケアンクロスの計5人がソ連のスパイとして潜入していたのは有名な史実だが、もう一人いたというお話のようだ(しかし、あくまでも判明しているのが「5人」であって、「ケンブリッジ・シックス」どころか、007ならぬ「ケンブリッジ・セブン」もありうるかもしれない。それほど、スパイの世界は奥が深い「ネバーセイネバー」の世界なのだ。

 このキム・フィルビーを主人公にしたスパイ小説の傑作が、ジョン・ル・カレ『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』 (ハヤカワ文庫)であり、グレアム・グリーンの『ヒューマン・ファクター』 ハヤカワ文庫)。昔、一読したような記憶があるのだが、記憶は薄れている。

ともあれ、『国王陛下の新人スパイ』が触れているさまざまな政治的軍事的出来事をすべて把握しているというわけではないが、クリスチャン・ベルナダクの『呪われた医師たち―ナチ強制収容所における生体実験』  (ハヤカワ文庫)や、ゴードン・トマス&マックス・モーガン・ウィッツの『絶望の航海』 (ハヤカワ文庫)などを併読するといいのかもしれない。

いずれもノンフィクション作品。かなり昔に読んだので、これまた事細かな記憶は薄れているが、『絶望の航海』に関しては、映画化もされている。

映画タイトルは、日本では『さすらいの航海』。この映画はたしか民放テレビで深夜放送されたのをビデオに録画して見た記憶がある。人間とは何か、人生とは何かを考えさせられる作品だった。

映画のストーリー(原作もほぼ同じ)は以下の通り(「映画.com」より。一部略。ネタバレあり注意)。

1939年5月13日。ハンブルクよりドイツ客船SSセントルイス号が出港した。乗客はナチ・ドイツから逃れようとする937名のユダヤ人。彼らの胸には、脱出できる喜びと再び故国にもどれない悲しみとが交錯する。乗客の顔ぶれもさまざまだ。元弁護士カール(サム・ワナメーカー)と妻リリアン(リー・グラント)そして彼らの娘アンナ(リン・フレデリック)、ハバナから仕送りしてくれる娘の元へ行くハウザー夫人(マリア・シェル)、ドイツ名家出身のデニス(F・ダナウェイ)とベルリン大学教授の夫エーゴン(オスカー・ヴェルナー)等々。そんな乗客を複雑なおもいで静かに見守る船長はシュレーダー(マックス・フォン・シドー)だ。
船旅は快調だったが、やはり暗い影はぬぐいきれなかった。
そしてその頃、目的地ハバナでは、このユダヤ人達をめぐり、政治的かけひきが進行していた。
キューバ大統領ブルー(フェルナンド・レイ)は、高まる反ユダヤ感情に上陸不許可の断を下そうとしていたし、そうなっては困るセントルイス号本社では、入国管理を一手に握る移民長官マヌエル(ホセ・フェラー)に根廻しをしている。ユダヤ人救済機関代表のモリス(ベン・ギャザラ)も、国務長官レモス(ジェームズ・メイソン)に協力を仰ぎつつも、乗客達の未来は暗かった。同じころ、大実業家ホセ(オーソン・ウェルズ)も乗客達を待つ男より個人的に彼らの上陸をたのまれている。
5月27日、船はハバナ港に入港するが、上陸許可は出ない。乗客の不安はつのっていった。もし、ドイツに戻れば、彼らの行く先は強制収容所だ。恐怖にかられカールは自殺する。今回の航海は、ユダヤ人が全世界から嫌われているというナチの宣伝政策だったのだ。
6月1日、ブルー大統領は船に出港命令を下した。乗客達が最終目的地としていたアメリカも受け入れてくれない。モリスは受け入れてくれる国を求めて奔走したが、どの国も難民で良い返事は得られなかった。船長付きスチュワートのマックス(M・マクドウェル)は、船がハンブルグに戻っていることを、乗客に知らせた。彼も実はユダヤ人だったのだ。そしてこの日、彼と愛し合うアンナは2人して自殺する。やり場のない乗客の怒りはやがて爆発した。彼らの苦悩をいたいほど理解している船長。船はイギリスのサセックス沖にさしかかろうとしていた。もし船を出火させ、イギリス海岸に無理矢理上陸させれば、そんな思いの船長の元へ1通の電報が届いた。「オランダ、フランス、イギリスが入国を許可した。モリス」。かくて、乗客達はナチよりのがれることが出来たが、9月1日、ヒットラーはポーランド侵攻を命じ、第2次大戦の幕が切って落された--。



このセントルイス号のことも、『国王陛下の新人スパイ』の中に出てくる。

それにつけても、禍福はあざなえる縄の如し。マギーにとっても、死んだはずだよ、お富さん(?)ではないが、撃墜されて死んだと思っていた恋人のパイロットとドイツで再会できたものの……。すでに、新しい恋人はできていたし、葛藤が……。
もっとも、マギーぐらいの美貌のスパイなら、ナチス高官で、妻を失った人の「後妻」に忍び込むことも可能であろうか?(そこまで行くとなると「出自」が誤魔化せない?)。「美人局」ももちろん……?

非情なスパイになりきれないマギーのディレンマや、失意やら裏切りやら殺害やら、戦争がもたらすさまざまな悲劇にもちゃんと触れている。

007的なアクション、スパイ小説としてももちろん楽しめる作品ではあるが……。逆境は人を強くするとはいえ、戦争やら大災害などによってそういう逆境がもたらされて強くなるのは、あまり有り難くないだろうが……。時と場合にはそれも仕方がないか?

文中、「看護師」という言葉が頻繁に出てくるのが「目障り」であった。いまは、男もすなることが多く、「看護師」という言葉を使うのも時にはやむを得ない場合もあろうが、当時は、女性の仕事であり「看護婦」と表記していいのではないか。
主人公の一人でもあり、小説に出てくるマギーの「妹」が「看護婦」。それ故に、「看護師」という言葉が頻繁に出てくるが、実に目障りだった?
 
その点、特定嗜好分野の小説の世界では、題名に「看護婦」をまだ使用していることがある(でも、徐々に減りつつある。「ナース」とかに言い換えられたりしている)。

河里一伸氏『秘密の扉 担任女教師と女医と看護婦』 (フランス書院文庫)も2~3年前の作品。フランス書院からも、これ以降、「看護婦」と付いた作品が刊行されていない(のではないか)?

だが、「看護師」を強要するようなフェミニズム的言葉狩りには最後まで抵抗しよう。それが反ナチス、反スターリンの「全体主義的価値観強要」への抵抗、レジスタンスにも繋がるのだから?(ホンマかいな?)。

ところで、こんなに面白い小説、妻は読まないようだ。そのくせ、トム・クランシーの『米露開戦①②③④』 (新潮文庫)をせっせと読んでいる。ううむ、クランシーもジェフリー・アーチャーも面白いに決まっているだろうが……。それに手を出しては、小説に嵌まってしまう。特定嗜好分野(エロス&女スパイ小説)のみに限定しなくては……。SFと時代小説は元々関心がないからいいのだが……。

ともあれ、ネバーセイネバー。
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①「さすらいの航海」(1976)は観た記憶があります。「卒業」でダスティン・ホフマンと共演したキャサリン・ロス(75歳)が、この映画では経済的に困って娼婦役になっていたのが印象的でした。②「国王陛下の新人スパイ」イラストレーター・シライシユウコさんの表紙カバー(装画)に、少し臆して(引いて)しまいました。翻訳者「圷 香織」は「アクツ カオリ」と読むようです。更に余計ですが、「垰」は「タオ」らしい。
青木明  04/08/2015 Wed URL [ Edit ]
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