古本虫がさまよう 中共の「美人局」より洒落ている英国の「甘美なる作戦」とは――「性欲」より「読書欲」を刺激する「甘い歯」(甘党)を持った女スパイ? いや、どっちもか?
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中共の「美人局」より洒落ている英国の「甘美なる作戦」とは――「性欲」より「読書欲」を刺激する「甘い歯」(甘党)を持った女スパイ? いや、どっちもか?
(2015・3・16・月曜日)




イアン・マキューアンの『甘美なる作戦』 (新潮社)を読んだ。

内容紹介
MI5の女性スパイと、若き小説家。二人の間に生まれた愛は、幻だったのか? 任務を帯びて小説家に接近した工作員は、いつしか彼と愛し合うようになっていた。だが、ついに彼女の素性が露見する日が訪れる――。諜報機関をめぐる実在の出来事や、著者自身の過去の作品をも織り込みながら、70年代の英国の空気を見事に描き出す、ユニークで野心的な恋愛小説。ブッカー賞・エルサレム賞作家の最新長篇。
内容(「BOOK」データベースより)
英国国教会主教の娘として生まれたセリーナは、ケンブリッジ大学の数学科に進むが、成績はいまひとつ。大好きな小説を読みふける学生時代を過ごし、やがて恋仲になった教授に導かれるように、諜報機関に入所する。当初は地味な事務仕事を担当していた彼女に、ある日意外な指令が下る。スウィート・トゥース作戦―文化工作のために作家を支援するというのが彼女の任務だった。素姓を偽って作家に接近した彼女は、いつしか彼と愛し合うようになる。だが、ついに彼女の正体が露見する日が訪れた―。諜報機関をめぐる実在の出来事や、著者自身の過去の作品をも織り込みながら展開する、ユニークで野心的な恋愛小説



いやぁ、とても面白いスパイ・ラブ小説だった。
主人公は反共リベラルの美女だけど労働党贔屓(?)。愛国心もある。ソ連を憎んでいる。学生時代にソルジェニーツインやオーウェルやケストラーの作品を愛読。おお、性こそ違えど、読書傾向は我と同じ? 思想信条も? こんな女性と結婚したかった。せめて再婚したい? だって、20代の彼女の愛人であったという大学教授はMI5勤務体験のある、50代なのだ。歳だけなら、僕といい勝負ではないか。ということは、十分、こういう志操堅固の20代の美女と再婚できる確率はゼロではないのだ。ネバーセイネバー!?

結婚している彼から、さまざまな性的(?)&知的刺激を受けて、彼女もMI5に入る。

といっても、時代は1970年代。1974年前後。英国でも、女性スパイというより、事務職員、タイプ打ち、資料整理止まりの仕事。ところが、彼女に思いがけない誘惑の仕事が‥‥というお話。「スウィート・トゥース(甘党)」(s・t )ということで、「甘い舌(s・f)」的なシーンはない?

ともあれ、大学教授から借りていた本がトーニーの『宗教と資本主義の興隆』 (岩波文庫)だからたいしたもの。

ともあれ、本書には「エンカウンター」なる実際の雑誌など、さまざまな政治工作の対象にもあったメディアも登場する。オーウェルの名前もしばしばと。彼もまた「反共リベラル」であったという認識で、著者は話を進めている。CIAやらシドニー・フックやら文化自由会議やら……。文化自由会議などは、たしか、みすず書房から出ているレイモン・アロンの回顧録の中にも出てきた話(『レーモン・アロン回想録1 2』)。

カバーの女性イラストはあまり「美人」には見えない横顔。これでは……。もう少し内容に則したカラフルな「美人」にすれば良かったのに……。

ネタバレになるといけないから、これ以上はあまり書かないけど、いやはや面白い異色スパイ小説だった。
 新潮社のこのクレスト版の小説は、『朗読する女』やジークフリート・レンツの『黙祷の時間』など面白いものがある。
『黙祷の時間』は、「年上の女教師」と高校生の物語。ここにもオーウェルの作品がキーブック(?)として登場していたかと。いいね。

英国のスパイ小説といえは、最近読んだのは(紹介済み)、スーザン・イーリア・マクニールの『チャーチル閣下の秘書』 (創元推理文庫)。これも女性が活躍するストーリーだった(以下再録的)。

文庫で本体価格1100円もするが、42字×18行の470頁少々ある分量。内容は無論、活字ギッシリ単行本なみ(文字も9ポではなく8・5ポか? 車内蛍光灯を省くサービス低下の東京メトロの車内で読むのには少し苦労したが?)。
ただ、カバーイラストが、最近流行のライトノベルみたいで、これじゃ、僕みたいな中年読者が「本格的スパイ小説」だと気づかないのではないか? 流行って嫌だな?

ともあれ、出版社の宣伝文句は「空襲が迫るロンドン。この街で1年余りを過ごしたアメリカ育ちのわたしに、チャーチル首相の秘書としてタイピストにならないかという話が舞い込んでくる。自らの能力に見合った職ではないことに苛立ちを感じながらも、わたしはその申し出を受け入れた。首相官邸をめぐるいくつもの謀略が待ち構えていることなど知るはずもなく。才気煥発なマギーの活躍を描く、魅力のシリーズ開幕編」となっている。

アメリカの参戦はまだなされておらず、ドイツがフランスを占領し、ロンドン空襲が始まった頃のお話。
前記解説文のように、アメリカ人でありながら、祖母が英国に残した「家」を売却するために、遺産相続人として訪英。しばし滞在することになったが、チャーチルの口述女性担当者が殺害され…といったところから始まる。

マギーの「父」の謎、暗号解読、女スパイ、レーダー、美人局、同性愛、MI5、スリッパー、アイルランド独立運動、シェアハウス…など、第二次世界大戦の渦中にある英国ロンドンに於けるインテリジェンス状況がよく描写されている。もちろん、「小説」であるが、チャーチルの態度なども、何となくホンモノを感じさせる。

先日紹介したポール・ジョンソンの『チャーチル 不屈のリーダーシップ』 (日経BP社) ではないが、彼の「不屈感」があちこちに出てきた。

マギーも数カ国語が話せ、親譲りの理系の数学的思考力旺盛なアメリカの大学に通う女性という設定。
にもかかわらず、やらされている仕事は、当時の女性の典型的な仕事であるタイプ打ち。最初はチャーチルの口述を聞き違えてミススペルをして怒られたりもするが、暗殺未遂を…。

シリーズとして続くようなので次回作が楽しみである(すでに二作刊行されているそうな)。

おやおや、調べてみたらすでに続編である『エリザベス王女の家庭教師』 (同)が昨年すでに出ているではないか? 知らなかった。 すぐに読まなくちゃ?

『チャーチル閣下の秘書』の訳者が紹介しているチャーチルの本当の秘書官(男)だったジョン・コルヴィルの『ダウニング街日記 上下』 (平凡社)も以前、拾い読みした記憶があるが、半ば積んどく状態。このジョンをもじったような名前の秘書官も本書(小説)に登場している。

またキース・ジェフリーの『MI6秘録 イギリス秘密情報部 1909-1949 上下』 (筑摩書房)もある。これはノンフィクションだが、小説(『甘美なる作戦』) は姉妹組織のMI5が主役として登場。

ともあれ、ネバーセイネバー。
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