古本虫がさまよう 「みすず」(読書アンケート特集)と中野翠さんは知的刺激に富む
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「みすず」(読書アンケート特集)と中野翠さんは知的刺激に富む
(2015・2・9・月曜日)





「みすず」(読書アンケート特集・2015年1月&2月合併号)を読んだ。
今年は157人の読書家による2014年に読んだ本ベスト5。これだけの人が登場すると、玉石混淆(?)であっても、いろいろと知らない本で面白そうな本があるなと気づいて役立つ。学術書の類しか挙げない人や気楽な新書を挙げる人やいろいろ。多種多様な本の紹介があり、毎年参考になる。

ピケティの『21世紀の資本』 (みすず書房)を早くも挙げる人もいる(英語で読んでいたからこその速さではあるが)。
でも、一昨年、昨年に続いて、同じみすず書房から刊行された名著、ノーマン・M・ネイマークの『スターリンのジェノサイド』(みすず書房)や ザヴォドニーの『消えた将校たち  カチンの森虐殺事件』を挙げる人も今年もいなかったようだ?

相変わらず、沖縄問題に固執する進歩的文化人たちの礼賛する沖縄本も、それはそれで面白そうでもある。そういう本と同時に、恵隆之介氏の『沖縄を豊かにしたのはアメリカという真実』 (宝島新書)や、大久保潤氏&篠原章氏の『沖縄の不都合な真実』 (新潮新書)も読まねばと思った次第(いずれも積んどく)。

おやっと思ったのは、精神医学者の成田善弘氏の推薦する本。専門分野の医学書はともかくとして、ニクソンの『指導者とは』 (文春学藝ライブラリー)を挙げていて、 「ニクソンが現実を直視し現実から学ぶ真のリアリストであると同時に、知性と教養ある人物であったことをはじめて知った。戦争はいやだと唱えていれば平和がくると思っているらしい幻想的平和主義者に読んでもらいたい」としているところ。

ニクソンのその本は単行本でかなり昔に一読して、僕も感心した覚えがある(ただ、文藝春秋から刊行されたティム・ワイナーの『FBI秘録 上下』に出てくるウォーターゲイト事件や副大統領前後の彼のふるまいなどを読むと、ステレオタイプ的なニクソン評も間違ってはいないと思う。要は、人間、ジキルとハイドであり、ニクソンも両面があったということだろう。どこに焦点を当てるかによって、評価は異なる。岸信介も三木武夫もそう。レーガンもカーターも‥‥)。

ということで、成田氏の『精神療法家の本棚 私はこんな本に交わってきた』 (みすず書房)を読もうかと思ったが、すでに以前一読して、面白い本と紹介していたようだ。

このあと、中野翠氏の『晴れた日に永遠が…』 (毎日新聞社)を読んだ。中野氏は「みすず」の読書アンケートには出てこないが、立派な教養人。
「サンデー毎日」に連載している一年分のエッセイ(おおむね前年11月から11月まで)を収録した本(この連載は1985年に始まったというから、もう30年。連載を本にしたのはいずれも一読してきている。「サンデー毎日」は、書評頁のみ立ち読みして新刊をチェックしているが、中野氏の連載はあえてあまり読まないことにしている。本になってから一読することにしているので)。映画や落語や本や身辺雑記など楽しく読める一冊。読みたい本も発見。

「不老女優」のゴールディ・ホーンも歳相応に老けてきているのを知った。ネバーセイネバーとはいえ、人間の寿命、女性の美貌に関しては、永遠はないのか?

ともあれ、ネバーセイネバー。

以下再録(一部略)
「進歩的(社会科学)知識人」に黙殺された『スターリンのジェノサイド』『消えた将校たち  カチンの森虐殺事件』 (2014・2・2・日曜日)

東京堂などに『みすず』(2014年1月&2月号・読書アンケート特集)があった。岩波ブックセンターで購入。さっそく移動の車中などで読み始め読了。

2012・9月に、みすず書房から刊行された『スターリンのジェノサイド』はむろんのこと、同年12月に刊行された、ザヴォドニーの『消えた将校たち  カチンの森虐殺事件』を『みすず』(2013年1月&2月号・読書アンケート特集)でベスト5にあげる人は誰もいなかった(と記憶している)。

2013年1月&2月号では、本が出たばかりで読むのが間に合わなかったこともありうるだろうが、爾来一年経過しての2014年1月&2月号でも、この二冊をあげる人はいなかった(ようだ。三段組で活字が小さく、書名などをゴシックにしてくれるとまだ読みやすいのだが、そんな強弱もないので、万が一、読み落としていたらごめん遊ばせ)。

読書アンケート(2013年中にお読みになった書物のうち、とくに興味を感じたものを5点以内で…)に答えているは156人。この中には理系の人や小説家や経営者もいるだろう。
そういう人たちは、それぞれの自分たちの専門分野にふさわしい本を紹介しているだろうから、当然のことながらそれはそれでいい。

だが、やはり社会科学系統(政治学などを専攻とする)知識人が何十人かはいるだろうから、そういう人の中に、しかも、みすず書房から出ている本なのだから、先の二冊を「ベスト5」にあげる人がいてもおかしくないと思うのだが……。

ソ連軍の「ハンガリー侵攻」を「ソ連軍のハンガリー進駐」なんて書くような人の本を「平和への思いを受け継ぐために、この本を残してくれたことに感謝するばかりである」とまで称賛する人もいたが、まぁ……?

しかし、平川祐弘氏の『竹山道雄と昭和の時代』  (藤原書店)を推挙する人が二人もいたのには刮目(竹内洋氏&杉田英明氏)。平川氏のこの本は、竹山道雄と進歩的知識人とをテーマにした作品であり、論壇からは無視されかねない名著だから…。
そのほか、知らなかった面白そうな本もあり、やはり、これだけの「量」があると玉石混淆でも、とても参考になる。



(以下2年前のブログ再録(要約)

2013/02/06(水) 06:12:30
『みすず 読書アンケート特集』 (2013年1月&2月合併号)を読んだ。恒例の識者による2012年中に読んだ本ベスト5の特集。
以前も書いたが、2012年に読んだ本でベスト5を僕が選ぶとすれば以下の通り。

ジキル的なベスト5。

安田浩一氏の『ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて』 (講談社)
ブレイン・ハーデンの『北朝鮮14号管理所からの脱出』 (白水社)
蓮池薫氏の『拉致と決断』 (新潮社)
ノーマン・M・ネイマークの『スターリンのジェノサイド』(みすず書房)
竹内洋氏の『メディアと知識人 清水幾太郎の覇権と忘却』 (中央公論新社)

ハイド的ベスト5は次の通り(特定嗜好分野の小説は除く(?)。

ミミ・アルフォードの『私はジョン・Fの愛の奴隷だった』 (ビジネス社)
渡辺ひろ乃氏の『世界一のオトコを探す旅』 (幻冬舎文庫)
杉坂圭介氏の『飛田で生きる 遊廓経営10年、現在、スカウトマンの告白』 (徳間書店)。
金益見氏(女性)氏の『性愛空間の文化史 「連れ込み宿」から「ラブホ」まで』 (ミネルヴァ書房)
木下直之氏の『股間若衆 男の裸は芸術か』(新潮社)

「みすず」のアンケートなのだから、理系の人や文学系統や非社会科学系統の識者は別にして、社会科学系統の識者なら、ノーマン・M・ネイマークの『スターリンのジェノサイド』 (みすず書房)などを挙げる人がいてもいいと思うけど、そういう専門系統の人たちが推奨する本の中に、この本は見当たらなかった(ような気がする。見落としていたら御免あそばせ)。グロスマンの『人生と運命①②③』 (みすず書房)は挙げている人は散見するのに。

スターリンの悪口はなんとか言えるようになった知識人は日本にも沢山いるし、「みすず」にもご登場しているのだが…、アメリカの保守系フーバー研究所関係者によるスターリン批判や、スターリン圧政をジェノサイド扱いするのには抵抗がある知識人が日本にはまだ少なくないのかもしれない。だから黙殺したのかも。

だが、ネイマークの以下の指摘は否定することはできない。

「集団化の過程で約3万人のクラークが殺された」「だいたい200万と推定される多数のクラークが極北とシベリアに強制移住させられた」

「スターリンはクラークを階級として抹殺することを企て、まさしく実行した。クラークは、土地と生計の源から強制退去させられ、地獄の特別移住地に放り込まれたのだ」

「ウクライナの大飢饉はジェノサイドとみなすことができるだろうか? そうみていいようである。まず穀物不足と収穫不良をもたらし、ウクライナ人が生き延びる食料をみつけられなかった状況を政府が黙認していた証拠がたくさんある」「スターリンとその配下は、都市の労働者には食べさせ、ウクライナの農村部の『階級の敵』と『民族の敵』には食べさせないと決めた」

「スターリンとヒトラーの類似点、ナチズムとスターリニズムの類似点は無視するにはあまりに多すぎる。両者は独裁者として欧州大陸で莫大な数の人びとを殺害した。二人は根本的改造をめざすユートピア社会の名において、人間の生命を噛み殺した。二人は自分たちの国と社会を、そして国の内外の膨大な数の人びとを破滅させた。二人は、つまるところジェノサイド実行者だったのである」

スターリン=ヒトラーということはコミュニズム=ファシズムということになり、それは絶対に認めたくない識者にとって、この本はタブーに触れる厄介な存在なのであろう。だから黙殺する?

もしそうだとしたら情けない話だ(それにスターリンは批判できても、北朝鮮や中共の独裁者の悪口はまだストレートには言えない識者が世には多い。論理的にストレートに批判すると、言い過ぎ、偏狭だとかみなして、事実上北朝鮮を庇うことが少なくない)。
でも、来年版(2013年版)には同じく、みすずから出た(2012年の師走刊行だったので、2012年の読書リストには間に合わなかった?)、ザヴォドニーの『消えた将校たち  カチンの森虐殺事件』を挙げる人がきっといることだろう(いや、いないかな?)。
一年後の「みすず」の読書特集号(2014年1月&2月号)が今から楽しみである。



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