古本虫がさまよう 読まれているほど、本屋で本が売れていないのは何故か? 活字離れ・読書離れ無き時代の出版不況の本質を考える 
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読まれているほど、本屋で本が売れていないのは何故か? 活字離れ・読書離れ無き時代の出版不況の本質を考える  (2015・1・29・木曜日)





永江朗氏の『「本が売れない」というけれど』 (ポプラ社)を読んだ。
ちょうど『新潮45』 (2015年2月号)が、「『出版文化』こそ国の根幹である」という大特集を組んでいる。対照的な議論が展開されているので併読した。

永江氏は、活字・読書離れは起こってはいないと指摘。

「毎年、出版科学研究所から新刊書の販売額が発表されるたびに、前年に比べていくら減ったかが新聞等で報道されるが、それはあくまで取次ルートのデータであって、実際に売れた総額ではない。電子書籍の販売額も取次ルートのデータには含まれない。電子書籍は取次経由で流通しないからだ」

ちょうど2015・1・26東京新聞夕刊に、2014年度の書籍と雑誌を合わせた紙の出版物の推定販売金額が出版科学研究所から発表され、前年比4・5%マイナスの一兆六千六十五億円だったという記事が大きく出ていた。
「過去最大の落込みだった」という。ただ、電子書籍の売り上げは着実に伸びていてインプレスの調べでは前年度比31・9%プラスで1013億円の売り上げだったとのこと。

この統計にはブックオフなど、古本屋の販売金額は入っていないようだ。

永江氏は、各種データを出して、要は読者の側が、昔は、新刊本は新刊書店で「定価」で買っていたのに、今はそれ以外に、ブックオフなどで買ったり図書館で借りたりして、安く、タダで読んだりする人が増えたために、見かけ上の新刊本の売り上げが落ちているのであって、読書する「量」が減っているわけではないという趣旨の指摘をしている。

たしかに通勤電車でも、いまはスマホなどを覗く人が多数派であるが、たまに週刊誌やマンガと並んで本を読んでいる人もいるが、図書館のラベルが丸見えの本をよく見かける(書店の紙カバーをかけたり私製のブックカバーをかけて本を読んでいる人もたまにみかけるが、その中身が新刊書店で買った本なのか、図書館の本なのか古本屋で買った本なのかは、本人でないと分からない)。

あまり顔かたちが美しくない中年女性が、しみそばかすをどうこうするといった書名の本をカバーもつけずに、図書館のラベル剥き出しのまま読んでいるのを見たことがあるが、なんともいえなくなる? でも、そうだよなぁ、その分、本代を節約して、化粧品を買うほうにお金を回すんだろうなと?
そういうふうに、本はタダで読むという価値観を持っていることをあながち否定するわけにはいくまい。

図書館は昔からあるし、いわゆる古本屋も昔からあるし、貸本屋もよくあった。
ただ、図書館の数は、昔は少なかったし、貸し出し手続きや検索も面倒だった。そもそも学生時代、僕は近所の公立図書館を利用した記憶があまりない。大学図書館にしても、本を探したり検索するには、図書カードの山をパラパラとめくる必要があった。大学図書館も、当時絶版だった本をたまに借りたりした程度だった。

貸本屋は、僕が学生時代の30数年前には東京周辺でもあまり見かけなくなっていた(数年前か十年ちょっと前まで、高円寺の古書会館の近くに一軒貸本屋があって、時々覗いていたが‥。もう閉店して久しい。貸本屋に関しては、以前紹介したこともあるが、『全国貸本新聞 全2巻』 (不二出版)という資料が圧巻)。

高校生のころは田舎ではまだ「貸本屋」はあったから、雑誌や小説本を借りて読んだことはあったが、これは「有料」。「無料」の図書館とは違う。田舎で週刊誌や週刊漫画が一泊二日で20~30円とかであっただろうか。

かつては、古本屋も都内周辺でも「駅弁大学」とまではいかなかった。だが、今や東京周辺では、「駅弁ブックオフ」とまではいかないが、通勤途上の路線の駅が十五ほどあれば、三分の一ぐらいの駅にブックオフがあるのではないか。そこに行けば、新刊本(単行本・文庫)でも定価の6割ぐらいで買える(永江氏は半額云々とも書いているが、新しい本はそこまでは安くしていないのでは?)。
古い本なら、100円~200円前後で、文庫や単行本も購入可能だ。時には1割引きや2割引きセールもやっている。

荻窪駅北口のようにブックオフと新刊書店とが隣同士で並んでいれば、新しい本でも、先ずはブックオフで見て、そこにあればそっちで安く買うだろう(その荻窪のブックオフ隣の新刊書店が最近になって廃業していたのは先日報告済み)。

十数年ぐらい前だったか、浦和駅前のデパートの古本市に立ち寄ったついでに近くの昔ながらの学生時代から通っていた古本屋(いまはない)で古本を見ていたら、店のおばさんが近所の人だったか、「ブックオフができて苦しくなったわね」とこぼしているのを耳にしたことがある。そして廃業した。昔ながらの古本屋とはいえ、やはり競合もするだろう。

ともあれ、活字離れをしているから本が売れないというのは神話的な面があるのは事実。それは、若者が右傾化しているといった俗論と同じかもしれない。若者は別に右傾化していないというのは、古谷経衡氏の『若者は本当に右傾化しているか』 (アスペクト)を読めば自明であろう。

要は、本を読む人のなかで、図書館でタダで読む人が昔より増えているから、また古本屋で安く買って読む人が昔より増えているから、その分、出版社の本の売り上げが落ちているということになるのだろう。

だからこそ、「本の雑誌」(2014年4月号)でも図書館批判をしていた新潮社常務の石井 昂氏が、『新潮45』(2015年2月号)でも「図書館の”錦の御旗”が出版社を潰す」と題して図書館批判(「図書館の貸出冊数が販売冊数を上回り、出版社は絶滅の危機にある。それはつまり『本』の絶滅に他ならない」)を展開している(「本の雑誌」では「昴という字だったと思うが、「新潮45」では少し異なる漢字になっているが、打ち出せない)。

石井氏は、「日本文藝家協会理事の永江朗さんは、図書館に文句をつけるのは出版社や作家の儲けが減るというずいぶん下品な主張だと著書の中で論じている」「(それは)本を消費する側の論理だけで、生産する側の事情にいささかの配慮もないことである。何故私が複本の自制と貸出猶予をして欲しいと、土下座をしてでもお願いしたいかを全く理解してもらえない」と述懐している。

その永江氏の本というのが、この本であって、その中に「しばらく前『図書館栄えて物書き滅ぶ』などと騒いだ作家や出版社があった。図書館がベストセラーを多数そろえて貸し出すので、出版社や作家の儲けが減るという主張だ。ずいぶん下品な物言いだ。だったら本屋のない街に本屋を作ってくれよ、自分が住む都会を基準にものごとを考えないでくれよ、と思った」と書いてある。

永江氏は、人口減著しい(?)高知県の土佐市の市立図書館の招きで訪れた時、市内の新刊本屋が閉店し、TSUTAYAしかなくなり、隣の高知市内の本屋に、土佐市の生徒が行くのは遠くて大変だから、その分図書館を利用する生徒が増えたという話を聞いた上でのコメントであったようだ。
その高知市内にあっても、老舗の冨士書房という本屋が最近閉店したという。街の本屋が消えつつあるというのはデータ的にも証明されている。
以前住んでいた街に寄った時も、駅近くにあった「町の本屋」が三軒は消えていた(その分、駅前に大きめの新刊屋がオープンしていたが)。

ともあれ、要は読書するにあたって、本を新刊本屋で買って読む人が減ってきているということだ。そのために町の新刊屋が減ってもいるのだろう。新刊書店で本を買う人も、大型書店のほうが「ポイントサービス」があってお得だから、近所の本屋よりも勤務先周辺の大型書店で購入するというパターンもあるのかもしれない。
アマゾンでカード決済すれば、その分、カードなどのポイントも付与されるし、送料も事実上無料だから、いいやと。
コンビニでも漫画雑誌や文庫などを買うことが可能だ。僕はコンビニはたまにしか利用しないが、Tポイントやらいろいろとポイントもつくようだ。だったら、漫画一冊買うのも、近所のポイントサービスのない小さな本屋やたばこ屋のスタンドより、コンビニのほうがいいということにもなるのだろう。

永江氏も報告していたが、近所や勤務先などのそばの実店舗で本を見て、それからアマゾンで注文するという人も増えているのかもしれない。エロ本ならそのほうが買いやすい?

ところで、同じ「新潮45」で、林真理子氏も「本はタダではありません!」と題して「ブックオフや図書館で本を手に取る人は、本は降ってくると思っている。だが本は『つくる人』がいて生まれるのだ」と指摘もし、永江氏のこの本への反論も名指しで展開している。
ううむ‥‥。そのほか、流通問題やら問屋やらいろいろと難しい問題がありそうだ。

さらに、CDなど買わずに無料でネットから録音する向きがあることに関しては、片山杜秀氏がレポート(「音楽業界の『昭和君』と『平成君』」)している。
貴重な音源もなぜかネットで流れていることがあり、「生まれて初めて聴けた、幻の曲を。ただで。家のパソコンの前に腰を下ろしているだけで」と。「そもそも商品になってないから市場では絶対に見つからないはずのもの、マニアや専門家が目を剥く貴重音源が、『持ってけ、泥棒』の店晒し状態で、いつでも誰にでもアクセス可能になっている。それが当世なのだ」とも。とはいえ---という片山氏の本旨が続くのだが‥‥。それほどまでに、「現物」を愛しつつも、ネットの「無料」モノを活用せざるをえない実情もうかがえる。

 
ともあれ、ブックオフで買って安く読む人、図書館で借りてタダで読む人‥そういう層が以前に比べて増えているのは間違いない。自分自身の行動・読書からしてもそれはいえる。
以前に比べて、古本を買う量も新刊本を買う量も減っている。
かといって、僕の場合、アナログなので、電子本を購入しているわけではない。
古本屋や古本市にはご案内の通り、まだ普通の人よりは頻繁に通っているし、図書館も時々利用するし、ブックオフも本やDVDなど何か掘り出し物はないかとたまに覗く。

永江さんが言うほどブックオフは安くはない。そこそこ新しい文庫や単行本は定価の半額にはなっていない。せいぜい6割ちょっとか。もちろん100円+税や200円前後の単行本などのコーナーもあるから、定価の半額以下の本も沢山あるだろうが。

あと永江氏の本でも触れられていたが、まもなく「本屋大賞」が発表になる。有楽町の三省堂にこの前寄ったらノミネートされている作品の数々が集められているコーナーがあった。
ノミネートされている作品の一つに、去年の10月に出た川村元気氏の『億男』 (マガジンハウス)という作品があるそうな。
2015・1・28の日経朝刊にも大きな広告が出ていた。「ついに15万部突破!!」とある。突然億万長者になった図書館司書の大冒険物語‥のようだ。
たしか最近号の『プレジデント』の書評欄にも出ていた。
以前、安藤祐介氏の『宝くじが当たったら』 (講談社)という高額当選者のドタバタ喜劇(?)小説を面白く読んだことがあったので、それと同様の本かな、ちょっと読んでみようかな、でも、小説は特定嗜好分野以外の本は買ってまで読まなくてもいいかな、図書館で借りて読めばいいかなと思って、図書館の検索で調べたら「あっと驚くタメゴロー」だった。

というのも、凄い人気作品で、なんと品川区は20冊も購入していて予約待ち人数は264人(2015・1・28朝調べ。以下同)。新宿区は9冊購入で184人予約待ち。文京区は10冊購入で177人予約待ち。目黒区は15冊購入し321人予約待ち‥‥。10倍から20倍近い倍率。

この前、同じように図書館予約情報を記したピケティの『21世紀の資本』 (みすず書房)や三上延氏の新刊『ビブリア古書堂の事件手帖⑥ 栞子さんと巡るさだめ』 (メディアワークス文庫)の倍率並みにかなりのもの。
ちなみにピケティの本も、品川区はこの前報告した時は2冊だったが、いまは10冊も購入している(予約は251人)。買い足したようだ。その分、倍率は下がった? 
今からピケティの本にしても、川村氏の本にしても、予約申し込みをしたら、読めるのは早くて年末ぐらいか? 下手すると来年になる?
だが、みすず書房にしてもマガジンハウスとしても著者としても、この図書館の購入冊数(複本)と予約待ちの人数の多さにはため息をつくのでは。

川村氏の本の場合、23区立全図書館で考えると、単純推計で、300冊前後購入し、3000人以上が予約待ちをしているのでは(そのほかにも都内には「市立図書館」も同じぐらいの数があるから‥。市の人口は区の人口より少ないこともあってか、各図書館とも、せいぜい5冊程度の購入のようだ。すると都内全域の図書館で400冊購入し4000人の予約客がいることになろうか?)。昔のようにパソコン検索や予約システムなどなくて図書館が充実していなければ、図書館ではなく買って読む人がもっといたのではないかと思えてくるではないか‥‥。

15万部も印刷発行しているのだから、数百、数千ぐらいの冊数はどうってことはない? いやいや、本屋大賞を受賞すれば、さらに予約客が増えるかも? すると図書館はさらに買い足していく‥‥。その買い足す冊数よりは、予約者の半分でも三分の一でも買ってくれればそっちのほうが著者も出版社も嬉しいのでは‥‥と。 

ちなみに、永江氏のクールな図書館擁護ともいえる出版社・物書き批判の本は、去年の11月に刊行されている。新書サイズで割安の本だが、あえて図書館で借りて読んだ。

調べてみると、この永江氏の本は、品川区は2冊購入で予約待ちゼロ。新宿区は4冊購入で予約待ちゼロ。すぐに読める。但し文京区は一冊のみ購入で9人も予約待ち(文京区には新刊書店が少ない?)。
宮田昇氏の『図書館に通う 当世「公立無料貸本屋」事情』 (みすず書房)という本も図書館でかつて借りて読んだ。2400円ぐらいする本だが、こういうタイトルの本などは図書館で借りて読むのが礼儀正しく相応しいのかも? 
この前、図書館関係者が、出版社などに反論した 『ず・ぼん8』 (ポット出版)を紹介したことがあったが、その図書関係者も、この本を図書館で読まれるのにちょっと閉口していたが‥‥。

いやいや、これは、これでいいのだろう。

図書館が、最新号の雑誌は次の号が出るまでの期間は館内閲読(閲覧)のみ許可し、館外貸し出しは禁止しているように、新刊本も一カ月は館内閲読のみ認めるというふうにしたほうがいいのかもしれない。新潮社のかたは半年間猶予すべきとの指摘をしていたが、半年というのはいささか長すぎるという見方もあるかもしれない。文庫・新書なら、毎月の定期刊行物だから、一カ月は貸し出し不可というのはありうるだろう。単行本はそれぞれだから、奥付の発行日から一カ月は館内閲覧のみ‥とする手はあるかもしれない。

そうなると、平日でも図書館に行ける定年退職者ばかりが館内閲読できるということになるかもしれないが、まぁ、それはそれとして‥‥。

『新潮45』に掲載されている藤原正彦氏のエッセイによれば、フランスではアマゾンなどに対する法的規制があって、「値引きした本を配送料無料で売ってはいけない」という。図書館に対しても一定の規制があってもおかしくはないだろう。

アマゾンも図書館も出版社も普通の本屋も物書きも読者も、それぞれが一定の負担をしつつも互いに利益を得られるような共存共栄の読書文化が維持されるためにどうすればいいのか、いろいろと考えるべきだろう。それにしても、本はともかく雑誌の売行きが激減しているのも図書館やブックオフのせいなのだろうか。

そこそこの雑誌は図書館だと、本館分館すべて一冊ずつ置いてあることもあるようだ。それをせっせと借りて読む人も、単行本やCD同様にいるのだろう。また、永江氏も指摘していたが、週刊誌などの主な読者が、定年退職になると通勤電車の読物として月刊誌や週刊誌に手を出さなくなるということもあるのかもしれない。図書館によっては、雑誌コーナーもかなり充実しているところもあるようだ。

それにしても、普通の図書館では特定嗜好分野の写真集や本は一切置かないようだ。それでいいのだろうか? 6000円近くもするピケティの『21世紀の資本』 (みすず書房)を何十冊も買うぐらいなら、一冊ぐらい「橋本マナミ」さんの写真集を買ってくれてもいいのに? もちろん、貸し出し年齢制限をつけてもいいと思うけど。シルバー世代向けのボケ防止対策本としても活用できるのではないか(かなりの屁理屈?)。


ともあれネバーセイネバー。
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河村元気「億男」は、仙台市図書館では、所蔵数4、予約数142です。大変な人気です。自分で購入すれば、すぐに読めるのですが。宝くじで高額金を手にする話は、ジョン・ファウルズ「コレクター」(白水社)を想起させます。本日の記事を拝読し、肩身の狭い思いでいっぱいです。昨年2014年1年間で新刊古書を含めて、購入本ゼロです。この年で借金返済を抱えていることもあり、自由に使えるお金はゼロ。読書は手持ち本の再読か、図書館を利用するほかない状況です。全くの例外で参考にもなりませんが、こんな老後を迎えようとは、しばらく前まで思っても見ませんでした。更に手持ち本を少しでも処分する日々。無一物人間を目指しています。古本虫様のブログの愛読者には、相応しくないかも知れません。
青木明  01/30/2015 Fri URL [ Edit ]
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