古本虫がさまよう 「慰安婦」問題を考えるための本
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「慰安婦」問題を考えるための本(2015・1・19・月曜日)






前川惠司氏の『朝日新聞元ソウル特派員が見た「慰安婦虚報」の真実』 (小学館)を読んだ。前川氏は書名通りの「肩書」を持つ元朝日記者。

「同僚」の植村隆元朝日記者の記事などを含めて、朝日の慰安婦虚報問題を検証している。朝日批判の西岡力氏とも対談をしたことがあり、彼の反・朝日論には若干の留意をしたりもしているが、おおむね、ご自身の特派員時代の取材体験も含めて客観的に慰安婦虚報問題を論じている点で読みごたえのある本であった。

前川氏は、吉田清治にも直接取材をしたことがある。
というのも、前川氏が川崎支局にいた時、地方版で「韓国・朝鮮人」という連載をしていたこともあってか、本人から「朝鮮人の徴用について自分はいろいろと知っているので、話を聞いて欲しい」と電話で売り込みがあったという。
そこで彼の川崎の自宅(アパート)を訪ねて、徴用工狩りをした体験を聞いたとのこと。当時は慰安婦狩りについてはなにもしゃべらなかったという。1980年のことで慰安婦問題の関心が薄い時だったからであろうかと。

それ以降も、韓国や日本で慰安婦関連の当事者(人権弁護士や人権活動家)などにも直接取材。松井やより元朝日記者など、慰安婦問題でさまざまな活動を展開した左派関係者の生の「証言」の数々が収録されている。

前川氏には北朝鮮に関する本もある。これも面白い本として紹介ずみ(以下再録・一部略。2012・10・11より)。

一読に値するのが、前川惠司氏の近刊『夢見た祖国は地獄だった』 (高木書房)である。

「帰国者の中でも、朝総連の幹部の家族や大資産を上納した一家などは、平壌、元山、新義州などの大都会に落ち着き先が決まった。たいした資産もなく、ただ『地上の楽園』と言う宣伝を真に受けた李相峰一家は、清津から九十五・五キロ離れた中朝国境の町、会寧近くの炭鉱の村で暮らすように指示された」

李さん(仮名・後に脱北)は、帰国する前に日本に残った兄から「総連の宣伝どおりだったら褒めて、手紙に書いてくれ。そうしたら自分も帰る。ウソだったら切手の裏に書いてくれ」と言われていた。「検閲」があるからだ。

すると、李さんは切手の裏に「村からの外出の自由なし、兄さんはここへくるべからず…の妹さんもこないよう…」と記して手紙を出したという。

その実物が本書69頁に収録されている。これは是非見るべきだ。こんな手段を通じて辛うじて悲劇から逃れることが可能だったのだ……。さすがの共産主義者も切手の裏まで「検閲」するのを忘れたわけだ!

何かの本だったか、笑い話だったか、北に戻って、地獄だったら青いペンで、天国だったら黒いペンで手紙を書くように示し合わせたところ、黒文字で、ここは天国、物不足もない、満ち足りている云々と記した手紙が日本に届いたそうな。ただ、最後に、「物は十分だが、あいにくと青ペンがない」と記してあったとか?

前川氏は古巣の朝日の帰国運動時の報道も含めて俎上にのせて検証もしている。共産主義者のトリックを見破ることのできなかった当時のマスコミの報道は勿論問題であろう。ただし、騙された側面もあるだろうし、少なくともおかしい、怪しいと気づいたら方向転換するべきであったにもかかわらず、週刊朝日などは、本書でも紹介されているように、80年代に(84年4月20日号~)、金元祚氏の『凍土の共和国 北朝鮮幻滅紀行』を好意的に取り上げていたが、朝日本体は後年まで北賛美を繰り返したものだった。
前川氏は、北批判の本を取り上げた「週刊朝日」への朝鮮総連の一方的な抗議活動を垣間見た体験もあるそうな。

「この号が発行されるや、週刊朝日編集部の十本以上ある電話は、朝から『事実無根だ。抗議する。俺は在日同胞だ。記事を取り消せ』との電話が切っても切ってもかかり続け、朝日新聞社の交換台が悲鳴をあげ、部内連絡などのため臨時電話を多数引かざるをえなくなった。朝日新聞本社前には多数の朝総連メンバーが押しかけ、一般の来訪者の通行に支障が生じた。こうした行動の狙いは第二弾の掲載阻止だった。本社前で抗議活動を指揮していた知り合いの朝総連幹部に、私は、『立場の違いで受け止め方に差があっても、事実は事実。どんなに業務妨害しても無駄』と伝えた」「『言いがかりをつけて、軒先でいつまでも騒ぎまくり、制止を無視するあなた方に警備員が反感をもつのは致し方ないことです。あなた方は民族団体でありながら、在日朝鮮人に対する反感を生み出しかねない行動を平気で同胞に指示しているのか』と反論し、編集部に届いていた三百通以上の抗議葉書の束を総連幹部に見せ、『葉書の消印は全部、朝鮮大学校がある郵便局のものです。ここにしか、在日朝鮮人は暮らしていないのですか』」と問うたりもしたそうな。

朝鮮総連としては、「味方」のはずの朝日から批判を受けて焦っていたのだろうが…。前川氏も、入社して、まもないころに労働組合の席で、韓国旅行の体験から、韓国を不正の暗黒国家のように見るのは単眼すぎると話したところ、周囲に「冷やかな空気」が流れたとのこと。「北流」の空気が強かったという。
そのあたりの朝日の北朝鮮讃美報道の一端は、稲垣武氏の『朝日新聞血風録』 (文春文庫)でも詳述されている。 

電力会社用意の「モデルコース」を歩いて「原発は安全!」と言っていたのと同様に、北朝鮮政府の「モデルコース」を歩かされて「北朝鮮は地上の楽園」「税金もない」「病院はタダ」…といった趣旨の訪問記を刊行した日本の知識人・編集者たちの「言論責任」は大きいだろう。

僕が生まれたころから始まった「帰国運動」。半世紀を経てもいまなお、解決していないこういう問題に、もっと関心をもっていくべきだ。拉致を含めて現在進行形の「人権」問題も、相手が共産主義国家だと、まだ遠慮してモノを言う人が多すぎないか。



関連書として、山谷哲夫氏の『「慰安婦」物語 写真が語る真実』 (宝島社)を読んだ。彼も慰安婦問題をかなり早い段階から追及している。映像作品として、 「沖縄のハルモニ 証言・従軍慰安婦」 (79年)なる作品も作っているそうな(未見)。

その元慰安婦の証言などもインタビューで行ない、掲載しているが、彼女の言い分に関して、別の人からも裏付けを行ない、元慰安婦が嘘を言っていることに関しては、遠慮なく「注記」をしている。毎日のように客をとっていたのに、一週間に一度だけだったとか「証言」したりしているとして(このあたりの姿勢は、朝日の一部記者も見習うべき点かもしれない? レーガンも言っていた 。 「信頼せよ、だが検証を忘れるな」と。検証を忘れた誤報を長年訂正もしないままでいたら、虚報と言われても仕方ないのかも?)。

「1977年から『慰安婦』問題に取り組んできたぼくは、最近では『正しい歴史認識』は韓国側にも必要とされると思っている。戦前、多くの朝鮮人は日本の『被害者』でありながら、一部はお先棒を担いだり、尻馬に乗った『共犯者』『加害者』ではあるまいか? そのつらい歴史的事実と韓国人は向き合っているのか?」

これは正論だ。

著者の慰安婦認識に関して、若干の異論もあるが(「日本では未だに『慰安婦』の存在さえ認めない人がいる」と指摘しているが‥‥そんなことをいう人はどれだけいるのやら?)、おおむね正鵠といえよう。


慰安婦の性病検査などをしていた麻生徹男・軍医の本に収録されていた慰安婦関連施設の写真なども転載されているようだ。彼女たちにたとえ報酬があったとしても、かなりの苦痛や非人間的なことをさせた事実はあるし、現時点での価値観からすれば非難されても仕方ないかもしれない。


櫻井よしこさんも、編著の『日本よ、「歴史力」を磨け 現代史の呪縛を解く』 (文春文庫)で指摘しているように、 「私たちは、慰安婦となった女性たちに日本人が行なったことに対して深く反省している。それは紛れもない事実である。他方、政府が強制した、或いは軍が拉致したという事実がないことも明らかである」といったあたりが、日本国民の世論の多数派であろうか?

山谷氏もいろんなドキュメント作品が多い人。 『歌舞伎町ラブホテル 夜間清掃人は見た!』  (宝島社)や『「B級自由民」宣言!』 (宝島社新書)など。いずれも面白い本だった。


慰安婦問題に関しては、以前も紹介したことのある麻生徹男氏&天児都氏(麻生氏二女)の『慰安婦と医療の係わりについて』 (梓書院)は必読文献である。帯に「慰安婦の事実を知ってください。そして、日本の名誉を回復してください」とある(以下一部再録)。

麻生氏は1910年生まれ。産婦人科医。1989年に死亡しているが、1937年11月、応召され、中国各地(上海、南京、漢口など)を移動。産婦人科医ということもあって、中国戦線で慰安婦の検診に呼び出されたことが何度かあったという。
そういう軍歴があったため、千田夏光氏の『従軍慰安婦』で、麻生氏が慰安婦制度を考案した責任者のようにほのめかされたことがあり、誤解され迷惑を受けたそうな。
天児氏は「慰安婦と呼ばれた娼婦は公娼と私娼が混じっていてその半数以上は日本人であった。敗色の強い戦場で兵士の世話をし、最後まで側にいて共に亡くなっていった者もいたし、帰還した者もいる」としている。また「性奴隷」という言葉を慰安婦に使うのは正しくないのではないかと指摘している。同感だ。


「千田氏はこの件りが誤りであり、今後誤解をまねく記述はしないと平成八年四月十五日消印の手紙で謝罪してきましたので、三一書房と講談社に改訂を申し入れましたが、二社とも現在もそのままで出版を続けています。私(天児都氏)は、慰安婦問題は千田夏光氏の誤りを何ら検証せず、そのまま事実として平成三、四年頃『慰安婦問題』に関連する著作を出版した人たちが誤りを再生産して日本中に広め、それが海外へ流出して日本叩きの材料とされた事件だと思っています」とのこと。これまた同感。



ところで、そうした千田氏の本などをはじめ、さまざまな「慰安婦」の文献を渉猟し、的確に分析評価しているのが、韓国人女性の朴裕河氏の『帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い』 (朝日新聞出版)だ。

この人の前著『和解のために 教科書・慰安婦・靖国・独島』  (平凡社・2006年刊行の単行本版)をこの前、遅ればせに読んだ。感想も記したが、こういう中道リベラルな人の存在は貴重といえようか。ただ、こういう人でも『和解のために 教科書・慰安婦・靖国・独島』 に関しては、「慰安婦」と「従軍慰安婦」の違いをいま一つ理解していないように読み取れた。

つくる会などは、強制連行された「従軍慰安婦」はいなかったと言っているだけであり、「慰安婦はいなかった」とは言っていないはず。そのあたりの混乱が見られるのは残念だが、ともあれ、この本を一読すると、まぁ、韓国側のあまりにも狭量な偏狭なナショナリズムのほうに問題が、よりあると感じるのではないか。

そもそも「性奴隷」というのは、戦後になって、ソ連兵士などの被害を受けた日独の女性に与えられるものであろう。その実態は若槻泰雄氏の『戦後引揚げの記録』 (時事通信社)や、ルートアンドレーアス・フリードリヒの『舞台・ベルリン 占領下のドイツ日記』 (朝日選書)、アントニー・ビーヴァーの『ベルリン陥落1945』 (白水社)などに詳しい。

以上の話は朴さんの前著に関するコメントであったが、今回の新著は、多くの点で共感するところが大だった。冷静な筆致でこの問題をあらためて追及している。

「『朝鮮人慰安婦』という存在を作ったのは」「家父長制と国家主義と植民地主義である。その意味では、慰安婦となる民間人募集を発想した国家や帝国としての日本にその『罪』はあっても、法律を犯したその『犯罪性』は、そのような構造を固め、その維持に加担し、協力した民間人にも問われるべきであろう」

「幼い少女たちが『慰安婦』になったのは、ほとんどの場合、周りの人がだまして連れていった場合か、彼女が所属した共同体が彼女を保護するような空間ではなかったケースである」

「〔強制的に連れていかれた二〇万人の少女〕との認識は、挺身隊と慰安婦の混同、業者や周りの加担者たちの忘却、例外的事例を一般的なケースとしてしまった理解が作り出したものである」

韓国の挺対協の行動も批判的に検証されている。

僕は、彼女のこの団体に対する分析を読みながら、この人たちって、韓国のヘイトスピーチ(ヘイト・アクション?)集団ではないかと思ったりもした。意図的な情報操作などを行ない、感情的な反日論を煽っている。これって、あることないことを言い募って、差別語的な騒音を撒き散らすのと同じレベルではないかと感じた。

最近号(2015年2月号)のサピオの特集(在日特権はあるのか?)でも検証されているが、「在日特権」はあるといえば視点によっては若干はあるようである。ただ、針小棒大にこれを見て、在日韓国人・朝鮮人をことさら罵倒するのはおかしいだろう。

同様に、慰安婦はいたし、意に反する形で慰安婦にさせられた人もいたであろう。だが、ことさら、朝鮮半島で日本政府や軍が組織的に人間狩りのような形で「強制連行した慰安婦」はいなかった‥‥。その募集に関与し、慰安婦を管理した朝鮮人たちの責任も見据えるべきだと朴氏は指摘しているが同感だ。この視点は、先に紹介した山谷哲夫氏の『「慰安婦」物語 写真が語る真実』 (宝島社)とも重なる。

そうした「違い」は「違い」として認識したうえで、節度ある批判や反論を展開すべきであろう。

少なくとも「慰安婦」問題に関しては、日本の右派といわれる人々(朴氏も何人かの右派論客のコメントを引用批評している)よりも、韓国の左派的な人々のほうが、はるかに感情的で非論理的だと評せざるを得ない。


こうした本(韓国版)に対して、出版差し止め訴訟などが韓国では発生しているという。民事・刑事で提訴・告訴されたとのこと。ううむ。韓国の民主主義のレベルが問われる?

ともあれ、ネバーセイネバー。




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