古本虫がさまよう 田久保忠衛・岡崎久彦・佐々淳行・佐瀬昌盛に共通する信念とは?
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田久保忠衛・岡崎久彦・佐々淳行・佐瀬昌盛に共通する信念とは?
(2014・10・29・水曜日)






昨朝(2014・10・28)、田久保忠衛氏の『憲法改正、最後のチャンスを逃すな!』 (並木書房)を読了。
それから朝刊を手にしたら、岡崎久彦氏が死去したとの産経一面の記事が目にとまった。昭和5年生まれ。84歳。

ちょうど、ハミルトン・フィッシュの『ルーズベルトの開戦責任 大統領が最も恐れた男の証言』 (草思社)が訳出されたばかり。以前、岡崎氏が監訳をになった『日米・開戦の悲劇 誰が第二次大戦を招いたのか』 (PHP研究所・PHP文庫)が訳出されたのは30年ぐらい前のことだった。
岡崎氏はこの本の「監訳者・まえがき」で、牛場信彦氏から「この本を日本のどこかで出版させろ」と1984年の夏頃言われたという。PHPが出してくれることになったと報告したのが1984年の12月9日だったという。その直後牛場氏は亡くなったとのこと。

ハミルトン・フィッシュは、トーランドを援用しながらルーズベルトの欺瞞を批判しているのだが、この本の追記の中で、『フランクリン・ルーズベルト、コインの裏側 どうやって欺かれてわれわれは、第二次大戦に参加させられたか』についても触れていた。その本が岡崎氏の亡くなる直前に渡辺惣樹氏によって『ルーズベルトの開戦責任 大統領が最も恐れた男の証言』 として訳出されたのも運命的なものがあるように感じた。
ハミルトン・フィッシュは、ロバート・スティネットの『真珠湾の真実  ルーズベルト欺瞞の日々』 (文藝春秋)を見ることなく1991年に亡くなっているが‥‥。

岡崎氏と田久保氏といえば、若いころの僕にとっては、好きな論客(中年になった今も同様であることはいうまでもないが)。
岡崎氏の『戦略的思考とは何か』 (中公新書)、田久保氏の『戦略の構図 米ソに揺さぶられる日本』 (高木書房)は名著。どちらも親米保守? いや、そんなレッテルは別にして、どちらも反共リベラルの論客だ。

岡崎氏は外交官、田久保氏は時事通信記者(特派員)として、国際感覚も豊か。
昭和8年生まれの80代前半の田久保氏は、戦前戦中戦後の混乱をリアルタイムで知っている世代の最後にあたるであろうか。それ故に、「最後のチャンスを逃すな」と言いたくもなるのであろう。

岡崎氏は、集団的自衛権行使容認の閣議決定後、首相の記者会見をテレビ中継で見ながら、 「35年間、戦いつづけてきた目的が達成された」と涙ぐんでいたという(産経2014・10・28)が、残念なことに、9条改正を見ることはなかった。

田久保氏は、 「日本を危険にさらすのは占領基本法を死守しようとする護憲派だ。新しい憲法によって戦後最大の危機を乗り越える機会がようやく訪れているのだ。これを心ある米国人に納得させることが今後の日本の新しい課題だ」と指摘しているが同感。

また、田久保氏の持論でもある「保守本流」=「吉田ドクトリン尊重」の嘘も改めて本書で説き明かしている。吉田茂の懐刀でもあった辰巳栄一の証言や、吉田自身の著作からも、「吉田ドクトリンよ、永遠なれ」の嘘が解明もされている(この点は、共著の『日本外交の再点検 検証「吉田ドクトリン」』時事通信社も参照されたし)。

吉田茂をどう評価するか。そのあたりは、田久保氏とほぼ同世代の佐々淳行氏(昭和5年生まれ)も『私を通りすぎた政治家たち』 (文藝春秋)で触れているくだりがある。

首相を辞めていた吉田は、 「経済力がついたら憲法改正して自衛軍にするのだ。それまでの間は身を潜めていなくてはいかん」「今は経済再建が第一である。経済力が復活しなくて再軍備も何もあり得ない。経済力がつくまでの間は日米安保条約でもってアメリカに守ってもらうのだ」と、若き佐々氏たちに語ったという。

この吉田茂の国防・憲法認識の変遷は、田久保氏の本でも、詳しく検証されている。

また田久保氏も、加藤紘一氏が防衛庁長官時代の言動が「(歪曲された)吉田ドクトリン」の論理に支配されていたかのようであった点を批判しているが、佐々氏も、先の本で、加藤氏の防衛庁長官当時の相応しくないさまざまな言動の数々を痛烈に批判している。
こういう人を防衛庁長官にしてはいけなかった(もっとも任命した人は、少しは現実を知って勉強し、「転向」することを期待したのかもしれないが?)。

ともあれ、強いて言えば「吉田ドクトリン」とは、「日本の経済力が復活するまでは再軍備、9条改憲は政治的日程には乗せないが、経済大国になれば、それ相応の普通の国家としての軍事力は保有する」という程度のものだろう。「永遠軽武装論」的なドクトリンではないことは、吉田茂の晩年の言動からしても明々白々だ。

田久保氏の思想的源流をさかのぼると、この本でも述懐しているように河合栄治郎にも繋がるし、長谷川才次氏(時事通信社社長)にも繋がる。どちらも良質の反共リベラルだ。

ともあれ、本書は、田久保氏の前著『激流世界を生きて わが師わが友わが後輩』 (並木書房)と並んで読まれるべき本だと思う。言論人として首尾一貫しており、思想信条も穏健。櫻井よしこさんが、国基研を作るにあたって副理事長への就任を強く要請したのも当然であろう。

あと、ほぼ同世代の一人に、昭和9年生まれの佐瀬昌盛氏がいる。
近著は『いちばんよくわかる! 集団的自衛権』 (海竜社)。だが、初期の作品『戦後ドイツ社会民主党史 政権への歩み』 (富士社会教育センター)、 『西ドイツ戦う民主主義 ワイマールは遠いか』 (PHP研究所)から始まって、 『チェコ悔恨史 かくて戦車がやってきた』 (サイマル出版会)や『「朝日」の報道はここがおかしい 軍事情報をめぐる虚と実』『虚報はこうしてつくられた 核情報をめぐる虚と実』 (力富書房)などは愛読したものだった。

『むしろ素人の方がよい 防衛庁長官・坂田道太が成し遂げた政策の大転換』 (新潮社)はこの前、本欄でも紹介したばかり。

こういう人が東京大学教授になっていれば、日本の国際政治に於ける学問水準も少しはアップしただろうに残念だ(勿論防衛大学校教授も悪くないポジションであったが)。

佐瀬氏のテーマとも関連する東欧解放、東独のベルリンの壁の崩壊、ソ連の崩壊を体験した我々だが、中共の一党独裁支配体制、北朝鮮王朝国家の崩壊、さらには憲法9条の改正を近いうちに目の当たりにすることができるかどうか。
少なくとも、これらオールドリベラル派が健在なうちに、達成できればいいのだが。

そのためにも、あとに続く世代も若者も、知的な論理力を高めて、変動する国際情勢に適切に歩調を合わせつつ、リードしていくべきだろう。その足かせになるものは言論によって除去しなくてはなるまい。

占領憲法、とりわけ国家主権の制限条項でしかない9条も「還暦」を超えている。「古希」を前にして安らかにお休みください? 田久保氏の本の帯も「さらば占領憲法! 戦後70年の空白を取り戻せ!」とある。


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