古本虫がさまよう 本当の意味での「人権」を考える上で、「月とスッポン」の本? 岩波新書を読んで考える!
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本当の意味での「人権」を考える上で、「月とスッポン」の本? 岩波新書を読んで考える!
(2014・9・11・木曜日)










以前、弁護士で、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子氏の『人権は国境を越えて』 (岩波ジュニア新書)を本欄で紹介したことがある(末尾に再録)。

「人権は国境を越えて」といいながらも、人権侵害大国の中国や北朝鮮はまったく取り上げずに、まだ野党もあるし、直接選挙もあるフィリピンやカンボジアなどを取り上げているあたりに失礼ながら「?」を感じたものだった。

そのあとに、林典子氏の『人間の尊厳 いま、この世界の片隅で  フォト・ドキュメンタリー』 (岩波新書)という本が出た。とりあえずは積んどく。

林さんは、新聞の著者インタビューにもしばしば登場。先の本は岩波新書ではなく岩波ジュニア新書だったが、同じ傾向の本かなといささか偏見を持っていた。

日本人なのに、アジアを越えてまずはアフリカの人権に関心を寄せている? 北朝鮮や中国には触れていない? よくあるリベラル左派の、片目をつぶったままの人権フォト本かなと。著者・著書紹介記事も見出しだけを見て、特に熟読はしなかった。

先日、ふと、手にして読んだが、林さんの本は頭にスンナリと入ってきた。
著者は、アメリカの大学に留学しており(国際政治学と紛争学を専攻)、「西アフリカ・ガンビアで研修参加者を募集」の貼り紙を見て出かけることにした。
アメリカで学んでいた彼女がアフリカに出会ったのは、その意味ではごく自然なコースだったのだ。

ガンビアは独裁国家だそうで、ジャメ大統領というのが長年君臨しているそうな。そういうところで出ている新聞社で著者は働く。秋学期を休学して長居も。追放や亡命や謎の死や、さまざまな受難を強いられるジャーナリストたち。
それからリベリアやカンボジアやパキスタンやキルギスや3・11以降のフクシマなどにカメラと共に入っていくことになる。

ヘンなイデオロギー色はなく、純朴に目の前の状況を追求している姿勢に共感を覚えた。

振られたからといって、相手の女性の顔に硫酸をかけるような犯罪がパキスタンでは横行しているという。その女性の顔写真なども本人の了解のもと撮影し公表もされている。何か蝋人形のような生気のない顔だちだ。こんな犯罪を侵すような輩は、死刑にできないのなら、目には目を、歯には歯をで、犯罪者の顔にも硫酸をかけてやればいいのにと思った。そのほか、エイズで苦しむ子供たち……。
キルギスの誘拐結婚の風習なども酷いもの。
著者は断定を避けつつも、そうしたさまざまな人間の尊厳を傷つける事例を、文と写真で丁寧に写し出している。

こんな本を以前読んだなと思った‥‥。福島香織氏の『中国の女』 (文春文庫)がそれだ。元産経北京特派員であった彼女も、中国各地で人間の尊厳や人権を奪われている女性たちを追求している。エイズで苦しむ女性も出てくる。出稼ぎの家政婦たちの不遇な状況など(中には富豪になったり上昇気流に乗っている女性も登場する)。
そういう女性や人権状況を見れば、日本なんて天国みたいなものだろう。フクシマの被災地の住民だって‥‥と。いやいや、それはそれでゆゆしき問題。

ともあれ、林さんには、今後はぜひ中国や北朝鮮にも足を延ばしてほしいものだ。しかし、こういう国々は、そもそも「民間」のマスコミも存在せず、野党もないような国。取材も大変だろう。とりわけ北朝鮮なんて、ヨイショ一派でないと未だに入国も困難。取材も監視つき。

ちなみに、ネットで「世界報道自由度ランキング」という
のがあった。日本より韓国の自由度が高いのは不可思議(最近の産経ソウル支局長への「弾圧」を見ると、今後は下がる?)だが、そのランキングを見ると、当然のことながら一党独裁国家の北朝鮮、ベトナム、中国は最下位クラス。
それに比べると、ガンビアもパキスタンもカンボジアもリベリアも「上位」である(日本よりははるかに「下位」ではあるが)。より、人権・尊厳が奪われている国家への視座は常に保ちたいものだ。まぁ、中共も文革時代よりは改善されてはいるだろうが‥‥。

あと、同じ岩波新書で、川人博氏の『過労自殺 第二版』 という本が出た。著者は弁護士で、人権問題を扱っている。題名からも自明のように、昨今よく指摘される「過労死」問題を扱った本だ。
まだ読み始めたところで読了していないが、年明けた正月になっても年賀状を街頭で販売する郵便局関係者を見て、相当酷なことではないかと観察もしている。

たしかに、そういう人たちが、年末はゆっくり休んで、元旦から仕事開始ということでもなかろうから。ノルマなり、歩合制もあるのかもしれない。売れ残ったら自腹で負担なんてことも(でも、相変わらず、日本全国津々浦々、「元旦」に年賀状を届けてほしければ、12月20日ごろまでに投函しろという言いぐさはおかしい? こういう時は、多少は「過労」になっても年に一回なんだから、仕事納めの12月26日~27日ごろが終わってから書いて28日に投函しても、離島は別にして元旦に届けますとやってもいいのに郵便局はしない。これは逆に適正な競争相手がいない、独占配達故の「殿様商法」のような気がする。逆にもっと働け?)。

一部大企業などでは、水曜は残業ノーディとか、有休は完全消化すること、部下がそうしてないと課長はマイナス評価が下される云々なんてところもあるとは聞く。日本経済新聞を読んでいると、そんな事例も出てきたような(といっても、そういう大企業本体を支える地方工場の末端では、どんなブラックな状況があるかどうか?)。

過労死になる前に、会社を辞めればいいのに‥という人もいる。それも一理ある?
いやいや、本書ではそう思っていたところ‥‥なんて例も出てくる。
とはいえ、諸外国に比べれば恵まれている? でも、日本でも、やはり「人権」侵害はあるわけで、そのあたりは、やはり軽視することなく対応していくべきであろう。

川人氏は、岩波新書の奥付の略歴だけ見ると、過労死問題専門の人権弁護士のように思われる。著作もその関連書しか紹介されていない。しかし、北朝鮮の人権問題にもかなりの関心を寄せ追及している人だ。
彼が、講談社現代新書から刊行している『金正日と日本の知識人 アジアに正義ある平和を』は名著。姜尚中氏を金正日のサポーターとみなして徹底的に論難もしている。

その意味で、川人氏は、本当の人権弁護士といえる。世の中には、慰安婦だのなんだの半世紀以上昔の「人権」追求には関心を寄せるのに、現在進行形の人権侵害(北朝鮮や中国)には何の関心も寄せない自称・人権弁護士も多々いるのだから。批判する対象が「(心の)祖国」だったりすると遠慮するのだろうか?

そういう人権弁護士の世界にあって、川人氏は「ハキダメに鶴」なのかもしれない。
ともあれ、人権について書かれた本を読む時、これはホンモノなのかニセモノなのかを峻別する知的読書力は身につけておきたいものだ。

以下再録。

北朝鮮の人権擁護のために「国境を越えて」とはなぜならないのか?
(2014・1・14・火曜日)

弁護士で、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子氏の『人権は国境を越えて』 (岩波ジュニア新書)を読んだ。

「国境を越えて」といいながら、北朝鮮の人権に関しては全くのノーコメント。北朝鮮という国名は、ある箇所で一カ所だけ出てくるけど、それは単なる説明事項の中での( )内の表記として出るだけ。 中国の人権に関しては、一カ所だけ、ちょっと一言、数行程度、国内の裁判制度の問題点(汚職など)に触れているだけ。いわゆる周辺民族との軋轢などに関連しての人権問題などはまったく出てこない。

一方、3・11以降の体育館などに避難した人々の人権をとても気にしたり、北朝鮮より遠いフィリッピンやカンボジアやビルマ(ミャンマー)での人権問題には章まで立てて、現地にまででかけたりしてあれやこれや圧力をかけるように日本の駐在大使などにも働きかけたりもしているし、現地の人権活動家にもこまめに接している。

その努力は立派だと思うけど、その熱意を日本の一番近い隣国に対して全く発揮しないのはなぜなのか。不可解である。不思議である。

人権弾圧国家としては、北朝鮮は最悪なのではないのか? ビルマにしても、フィリッピンにしても、野党もあり、反体制派のリーダーもいる。

半世紀も前の「慰安婦」問題も取り上げているが、拉致問題などは何の指摘もしていない。

この本では、韓国やタイは特に取り上げられていないけど、あれだけ反政府運動もあるタイや、選挙による政権交代が日常化している韓国では、ことさら取り上げるというか、初歩的な人権侵害問題はないから本の中ではことさら章をたててまでとりあげないというのはまだわかる。

しかし、北朝鮮には人権のかけらもないのが現状だということは自明。中国でも、国内の反体制派知識人の言論の自由の問題以前に、ウイグルやチベット、南モンゴルなどの人権問題、民族問題が深刻な状況であるというのはこれまた自明なのに、そういう問題は全く言及されていない。 「障害者」と書かず「障がい者」と書くぐらいの人だから、心から人権問題に関心を寄せているのだろうが…。

ジュニア新書だから、薄くて、そういう国々を取り上げる余裕が紙数の都合でなかったのかもしれない?

この本は、大学生以下の世代というか、中高生向けの本といえるかもしれない。しかし、本書だけ読んで、アジアの人権問題を理解したつもりになってもらっては困る。この本に根本的に欠如している、もう一つの人権問題を見落とすことなく、この本の若い読者は、以下の本も別途一読してほしい。

まず、同じ岩波書店から出ている楊海英氏の『墓標なき草原 上下』 (岩波書店)は必読。
また同じ著者の『植民地としてのモンゴル 中国の官制ナショナリズムと革命思想』 (勉誠出版)も重要。
中国(中共)という国家が、建国以降、周辺民族に対して、どのような人権侵害を行なってきたかが綴られている。

水谷尚子氏の『中国を追われたウイグル人 亡命者が語る政治弾圧』 (文春新書)は、ウイグルに対する中共の人権弾圧のすさまじさが綴られている。

チベット僧パルデン・ギャツォが、自ら弾圧を受けた体験記『雪の下の炎』 (新潮社)も必読。

最後に、野口孝行氏の『脱北、逃避行』 (新人物往来社・文春文庫)。

これは、伊藤弁護士などはやっていないかもしれないが、同じくNGO活動を展開している日本人青年による脱北者支援活動を綴った体験記。

北朝鮮から逃げてきた脱北者は、中国国内に辿りついただけではまだ自由になれない。
中国を横切り、ベトナムを通り抜け、カンボジアまで辿り着かないと「自由」は得られない。

野口氏は、そうした脱出路に脱北者と同行し、成功する時もあったが、中国国内で逮捕され、獄につながれたことも…。中国は好きだったのに、こんな酷いことをする国とは…と述懐する野口氏のこの本は、伊藤氏の本に比べて、はるかに重いものがある。

文字通り「北朝鮮の脱北者の人権のために国境を越えて」活動をしているのだから。
岩波ジュニア新書の読者は、こういう本も読んで、より多角的に人権問題を捉えるべきだろう。偏った認識を持たないためにも。より、大きな巨悪、一部の奇妙な思考をする人が隠したがる現実と闘う知的勇気を持つためにも。

ともあれ、全然、テーマが異なるが、秋田喜代美氏監修(稲葉茂勝氏・文)の『調べよう! 世界の本屋さん 本屋さんのすべてがわかる本1 』 (ミネルヴァ書房)を読んだ。

絵本風の薄い本であるが、世界各国の本屋さん事情が紹介されている。神保町やヘイ・オン・ワイなど古本屋街も出てくる。

また北朝鮮の国営書店も出てくるが、 「権力に反対する本などを置く本屋は、北朝鮮の社会ではまったく考えられません。権力にとって不都合な本は存在できないのです」と的確に指摘。

本屋内部の写真も出てくるが、並んでいる本の三分の一が金日成全集や労働党の書籍、三分の一はガイドブック、指導者のバッジなど、残り三分の一は金日成肖像画、祭壇の花など…であると。

「これで本屋と言えるだろうか」と手厳しい。こんな、頁数の薄い写真中心の絵本的な本でも、国境を越えた視点で、北朝鮮の問題点、人権、言論の自由について論じているというのに…。

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