古本虫がさまよう バルト三国と日本に共通する哀しみの過去をめぐって 「ファシズム=コミュニズム」
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バルト三国と日本に共通する哀しみの過去をめぐって 「ファシズム=コミュニズム」
(2014・7・2・水曜日)




まだ読み終えていないが、1952年生まれのサンドラ・カルニエテの『ダンスシューズで雪のシベリアへ あるラトビア人家族の物語』 (新評論・黒沢歩氏訳)は、とても感動的な「自叙伝」だ。今年の3月に訳出されていたとは、つい最近まで知らなかった。半分近く、二百頁まで読んだところだ。

粗筋は以下の通り。

現在、欧州議会議員を務める著者は、強制追放のためにシベリアの寒村に生まれ、スターリンの死後の「雪解け」を機に、4歳の時に両親に連れられて祖国ラトビアの地を初めて踏んだ。本書は、独立回復以降に入手可能となった公文書や、家族の日記とシベリア体験者の声をもとに、旧ソ連における大量追放の犠牲となった家族の足跡を追い、追体験する自伝的な作品。歴史に翻弄される個人の悲運を浮き彫りにし、バルト三国の近代史に残る傷跡に光をあてる。【「BOOK」データベースの商品解説】



著者の母は、ダンスシューズをプレゼントにもらった直後に、親と共にシベリア送りになり、そのダンスシューズでシベリアの雪の中を歩くことになる‥‥。

ラトビアをはじめとするバルト三国は、ソビエトに蹂躙され、ソ連に編入されることを熱望するでっち上げの決議により、独立を失う(どこの国にも「第五列」はいるのだ)。第二次大戦、独ソ戦争開始により、ソ連を追い出したナチスドイツに戦時中支配され、ドイツの敗北により、再びソ連の支配下に置かれたラトビア。

ヒットラーとスターリンの毒牙に襲われたラトビア、バルト三国の悲劇は、もはや「過去」になりつつあるが、本書の著者のように、戦後生まれであったとしても、本人を含め、その両親や祖父母の世代がいかにソ連によって苦しめられたか‥‥。

共産圏の中で捕らえられた人々の手記、自叙伝は多々読んできたが、それにしても酷い‥と感じる内容だった。本当に、共産主義者はなんと酷いことを長年やってきたのだろう。

日本人とて、シベリア抑留、拉致を体験している。北朝鮮による拉致問題まで発生している。

「従軍慰安婦」問題などに比べても、はるかに深刻な問題である。「未解決」というのは、こういう、文字通りの強制連行・拉致などの被害に関して言われるべきフレーズであろう(それにしても、「朝日社友」の資格を朝日新聞から「剥奪」された川村二郎氏は、先月号に引き続き、今月号の「正論」(2014・8月号)でも、古巣朝日新聞をシャープに批判している(「我が朝日よ、「慰安婦」で謝るべきは日本ではなく君だろう」)。本当に「正論」だ。

さらに、アジアでは未だに北朝鮮や中共で、これと似た状況が続いている。モンゴルも、バルト三国同様、ソ連と中共に支配され、コントロールされてきた。
チベット、ウイグルもバルト三国同様の悲劇を体験している(バルト三国はまだ「独立」できた。外(北)モンゴルも一応「独立」したが…)。

サンドラ・カルニエテの一家を襲ったような共産主義による悲劇は、アジアではいまだに現在進行形で、21世紀の今も続いているのだ。
そうした根源的な人権問題を追及することもなく、東日本大震災による一時的な体育館などでの避難生活が人権侵害であったと声高に避難する「人権弁護士」が、日本のどこかにもいたが、こういうノーテンキな人にこそ、こういう本を読んでほしいものだと痛感させられる。

訳者は「ラトビア人としての民族的な心情は複雑に絡みあっていて、時にかたくななまでに旧ソビエト・ロシアを否定する人が少なくない。本書は、カルニエテというフィルターを通して、そんなラトビア人の歴史観の一面を提示している。共産主義とファシズムをひとくくりに糾弾する著者の断定的な論には、異論の余地が大きいだろう」と述べているが、とんでもない。

異論を述べるような人々は、本当の意味での人権の意味を理解できない輩というしかあるまい。「かたくなな」も「ひとくくり」も「断定的な論」も、すべては事実に基づく批判であり、ためらうこともあるまい。

ともあれ、「日本にはシベリア抑留の体験者がいる。ラトビア人とシベリアの苦しみを共有している日本人にこそ読んでもらいたい」と著者はメッセージを寄せている。

批判する相手がソ連や中共や北朝鮮になると、同じ人権弾圧であっても急に小声になる情けない人が日本には少なくない。反共すぎるのはいかがなものか、感情的すぎる‥とか。しかし、これほどまでに酷い人権弾圧を、見て見ぬふりをすることこそ、恐るべき感情論というしかあるまい。

20世紀最悪の野蛮思想、ナチズム、ファシズムと何ら変わらないコミュニズムの諸悪を知る上で、貴重な一冊といえよう。

以前に紹介ずみだが、バルト三国からスウェーデンなどに戦時中逃れていた人々が、戦後、強制的に「祖国」となった「ソ連」に戻されることになり(それはシベリア送りを意味もしていた)、それから逃れるためにボートに乗って大西洋を渡りアメリカに亡命するノンフィクション亡命劇のC.B.ウォールの『エルマ号漂流記』 (時事新書)も忘れがたい名作である。

 また共産党党員としてソ連に協力し、反ナチスの闘士でもあったにもかかわらず、マルガレーテ(マーガレーテと表記のことも)・ブーバー=ノイマンは、共産主義者として夫婦そろってナチスはむろんのことスターリンにも酷い目に遭う。
生き残った妻である彼女は『第三の平和 第一部』『第三の平和第二部』 (共同通信社)という本を残した。この本は近年ミネルヴァ書房からも『スターリンとヒットラーの軛のもとで』として復刊された。
 戦後は徹底した反共リベラル派としてドイツでも活躍したそうな。彼女の生涯そのものが、ナチズムとコミュニズムの共通性を証明する一冊でもある。

こういう本を読みもしないで、過去完了形の「人権問題」をことさら強調し、現在進行形の「人権問題」は無視するのはどういう思考から生まれるのだろうか。精神病理学の対象として研究素材にすべきかもしれない。悪しきナショナリズム的精神構造の解明のためにも?


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こんにちは。最近、ますます快調なペースで読書に励まれていますね。かつて愛読した「本の雑誌」の目黒考二、椎名誠、両氏を思わせるタッチの古本虫・文体で、軽快に、そして重厚に、変幻自在の筆捌きが冴え渡っています。古本虫さん、貴方はいったい何者ですか。いくつの顔を持っていらっしゃるのですか。官能文庫マニアは世を忍ぶ仮の姿、本当は古本学専門の大学教授なのではと、ひたすら尊敬しています。(蛇足:最近とみに存在感を増している古女房さんが、ちょっこし登場しないだけで、意外に寂しく感じます。)乱文、失礼。それではまた。
HN:青木慧 (67歳)  07/02/2014 Wed URL [ Edit ]
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