古本虫がさまよう 「老優」ならぬ「老編集者」の述懐で思い出したこと
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「老優」ならぬ「老編集者」の述懐で思い出したこと(2014・4・10・木曜日)









竹岡準之助氏の『老優の述懐』 (幻戯書房)を読んだ。
老優といっても、この人は俳優ではない。1934年生まれで、学生時代に三浦哲郎や佐藤光房らと同人誌『非情』を創刊し、1964年に出版社「あすなろ社」を創業した出版人(編集者)だ。

書名は、単に本文の中の、ある一つのエッセイのタイトルを流用しただけのようだ。自ら発行していた『パピヨン』という季刊誌の巻末に記した「編集室から」というエッセイをまとめたもの。

学生時代からの文学活動や出版活動の思い出話などを綴ったものだ。学友に出版社関係者もいた関係で、その社の文学新人賞などの応募作の下読みや取材記者のような仕事や校正などもしたそうな。

また、あすなろ社から刊行した佐藤光房氏の『遺された親たち』という本の思い出話もあったが、これにはいろいろと昔を想起させるものがあった。

というのも、佐藤氏は朝日の記者で、たしか娘さんが結婚寸前に、無謀な運転手の車に轢かれて死亡するという体験をした人で、彼のその本を読んだことがあったからだ。

その自らの悲劇(子供が先に亡くなり、親が遺されるという体験)を綴りつつ、同じように、何の落ち度もなく、酔っぱらい運転や暴走車などによる交通事故死を体験した親たちに取材し、その顛末を綴ったのが、先の本だった。

加害者側の何たる暴虐な、かつ、しばしば無反省な対応を読むにつけ、腹立たしく思ったものだ。執行猶予がつかない可能性が出てくると、あわてて被害者にお詫びめいた態度を取ったり…とか。

何冊かシリーズで出て、いずれも一読した。

信じられないことに、酒酔い運転なども、心神喪失というか、軽い罪として、甘い判決を下す裁判官が多々いたものだ。

近年、高速道路を飲酒運転した土佐人のバカなトラック運転手により家族を殺された悲劇や、これまた飲酒運転をした若造の車に後ろから体当たりされて車ごと川に落ち、子供三人が死亡するなんていう悲惨な自動車事故が発生し、飲酒運転やひき逃げなどに、やっと執行猶予のない実刑・厳罰が処せられるようになってきたのはまだしもであるが、本当に悪質な犯罪者に甘い実態を、佐藤氏の本で学んだものだった。

竹岡氏の父も交通事故で死去しているとのこと(享年89)。

もっとも、本書によれば、交通事故の刑事裁判で、例外的に厳しい判決を下した裁判官がいたそうで、判決文の中で、この本に言及した人もいたという。
ともあれ、本書は、内容的には『老編集者の述懐』とすべき本であった。

それにしても、幻戯書房も、常盤新平氏の『いつもの旅先』 『明日の友を数えれば』『私の「ニューヨーカー」グラフィティ』『東京の片隅』や黒岩比佐子氏の『忘れえぬ声を聴く』 、海野弘氏の『おじさん・おばさん論』など、味わい深いエッセイ集をよく出しているなと感心した次第。お値段がちょっと高いけど?


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