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2014.02.13 (Thu)

たまには映画を見なくては……でも、その前に映画本を










たまには映画を見なくては……でも、その前に映画本を
 (2014・2・13・木曜日)












この前、元東映社長の高岩淡氏(1930年生まれ)の『銀幕おもいで話』 (双葉文庫)と、同じく東映の映画監督で、東映ポルノシリーズなどを数多く手がけた鈴木則文氏(1933年生まれ)の回顧録『東映ゲリラ戦記』  (筑摩書房)を紹介した(そういえば、鈴木氏の『トラック野郎風雲録』 (国書刊行会)も以前一読していた。本ブログ開始前に出た本なので、読後感のデータはこのブログには収録されていないかと)。

その際、紹介し忘れていたのが、春日太一氏の『あかんやつら  東映京都撮影所血風録』 (文藝春秋)。著者は1977年生まれの映画史・時代劇研究家。東映がその前は東急の五島慶太がオーナーの「東横映画」だったなんてことも、本書で初めて知った次第?

高岩淡氏や鈴木則文氏もしばしば登場し、京都撮影所の「あかんやつら」がいろいろと出てくる。経営危機やら粗製乱造やら組合結成、スト寸前…さまざまな「あかんやつら」による「血風録」が綴られてもいる。映画史や映画業界にはあまり関心がなく、知識もない我が身だが、ついつい、面白く一読した次第。

映画か…。最近劇場では見てないな。特定嗜好分野のDVDを家で見るぐらいか?

でも、北朝鮮の悲惨な、現代のアウシュビッツともいうべき強制収容所から実際に逃亡した申東赫(シン・ドンヒョク)の『収容所に生まれた僕は愛を知らない』 (KKベストセラーズ)、 『北朝鮮14号管理所からの脱出』 (白水社・ブレイン・ハーデン著)をもとにしたドキュメンタリー映画(マルク・ヴィーゼ監督)の『北朝鮮強制収容所に生まれて』が、3月に「ユーロスペース」にて公開される。これは見に行かなくては! 

とりわけ、人権、人権と騒ぐ人は必見? 

地震による一時的な避難場所での不自由な生活も人権侵害だと騒ぐような人や慰安婦問題で謝罪がないのは許せないとか息巻く人たちは、もちろん北朝鮮の人権問題にも深い関心を寄せているはずだろう。

なにしろ、こちらは、過去完了形ではなく現在進行形なのだから。なんがかんだといっても、この申氏に関する映画、あのアムネスティ・インターナショナル日本も「後援」しているそうだし…?

映画論といえばもう一冊。

須藤遥子氏の『自衛隊協力映画 『今日もわれ大空にあり』から『名探偵コナン』まで』  (大月書店)は、戦争映画などに、自衛隊がどれだけ協力したのかをテーマにした作品。出版社が出版社なだけに、ちょっと告発調かと思ったが…。学術的には考察はしている。

都知事選で「善戦」した田母神氏(朝日や東京新聞では、いささか方向違いの、田母神氏集票力の「脅威」について論じている一知半解の記事(コメント)が2・11~12にあったかと)が、自衛隊幹部時代、映画協力などにも積極的だったという。また、アメリカでも軍隊が協力する映画などはいろいろとあるわけで、作品に介する容喙の有無なども考察されている。

ただ共産圏のような映画検閲と違って、自由主義諸国の場合、戦争映画などを作るにあたって、制作側が「コスト削減」(?)のために政府・軍隊に働きかけて協力してもらえないか…ということになって、それから、初めて権力側の作品に対する「容喙」が生じる可能性が出てくるわけで、その違いは著者もちゃんと認識した上で、論を進めている。その点は納得(今後、北朝鮮や中国などの「戦争映画」「反日戦争映画」などの実態も解明してもらえれば尚ありがたい。共産圏はそもそも「民間」が希薄で、映画制作は「当局」になりがちであろうが)。

いま、売れている男性作家は百田尚樹氏、女性作家は有川浩氏だと思うが、百田氏の『永遠の0』の映画は、本書が出た後に完成したので深く考察はされていない。だが、この映画も自衛隊は協力しているようだ(須藤氏によれば、航空自衛隊の協力がなされていると指摘している)。
 有川氏の作品の場合(『空飛ぶ広報室』)は、映画ではなくテレビドラマであるが、これまた航空自衛隊が協力しているとのこと。

こういう動きを懸念する声が「マスコミやネットでも見られるようになってきた。しかし、自衛隊による映画協力は2013年に突然始まったわけではない。特に2000年代後半に入ってから、国内あるいは東アジアにおけるナショナリスティックなムードと並行し、旧日本軍や自衛隊などが登場する邦画が目に見えて増えてきた。戦争映画では、05年の『男たちの大和/YAMATO』ト『ローレライ』、06年の『バルトの楽園』と『出口のない海』、07年の『俺は、君のためにこそ死にいく』、08年の『私は貝になりたい』と実写版の『火垂るの墓』、09年の『真夏のオリオン』、10年の『日本のいちばん長い夏』と『キャタピラー』、11年の『太平洋の奇跡--フォックスと呼ばれた男』『日輪の遺産』『聯合艦隊司令長官 山本五十六』など、いわゆる反戦映画からやや戦争美化とも受け取れるような内容のものまで、さまざまな作品が公開されている」という。

ううむ、どれも見ていない……。

自衛隊の協力を拒否された映画『宣戦布告』は、北朝鮮相手に日本政府がイマイチの対応をとる内容が忌避されたのかもしれないが、この映画も見ていない(麻生幾氏の原作は読んだ)。

著者は『聯合艦隊司令長官 山本五十六』に関して、「この作品のストーリーにはやや問題があるのだが、テレビ朝日や読売新聞社をはじめとする多くのメディア産業が制作委員会に入っていたにもかかわらず、戦時中にいかにメディアが世論を煽り、戦闘へと駆り立てていたか、そして戦後には手のひらを返したように民主主義を声高に宣伝していったかを丁寧に語る、自己批判的な姿勢は評価できるだろう」と指摘している。ううむ、この作品は妻と知人が見て、「意外とよかった」と評していたと記憶している。ということは……?

『永遠の0』は妻が見て、原作にあったバカな大手反戦新聞記者が消えていたのは、後援に朝日新聞社が入っていたからではないか?と指摘していたが…。ううむ。自衛隊の検閲ならぬ朝日新聞社の検閲があったのかも? いや『山本五十六~』にはあまりそういうことはなかったとのことのようだが……。

それはともかくとして、自衛隊協力映画の数々、見ていないので、著者の分析に関して、さほど判読することはできないのだが、ここで指摘されているようなさまざまな問題が、自衛隊協力映画にはあるのだろう。完璧なものは世の中に存在しないもの。映画は、所詮はフィクションが多いから、割り引いて見るべきであろうが…。映画『ハンナ・アーレント』も見落としたなぁ。

あっ、そういえば、大岡昇平原作の映画『明日への遺言』は家人と共に見たことがあるのをふと思い出した(活字原作は『ながい旅』角川文庫)。米人捕虜を殺したということでB級戦犯となった日本軍人の是非を問いただした作品だったかと。産経新聞が後援? 自衛隊は特に協力していない? まぁ、どの視点からこういう無差別攻撃をした米軍捕虜の処遇をどう捉えるか…は考えれば考えるほど難しい。

それもあってか、個人的にはさほど印象には残っていない作品だった。東条英機を主人公にした映画『プライド・運命の瞬間』も見たものだった。ううむ、中国が作った『南京1937』 (中香台合作。呉子牛監督)も見た覚えがある。早乙女愛出演だったか? いずれにせよ、読んでは忘れ、見ては忘れる…。何かは意識の中に残っていっているのだろうが…。

映画の場合、右であれ左であれ、特定政治勢力が、ことさら、上映反対運動をするのは見苦しい限り。もちろん、公金が使われている映画なら、いろいろと内容に関して物言いがなされるということはありうるが、民間企業が作った映画に対して、上映反対運動をするのはおかしいだろう。本と同様に、映画も自由に制作し、自由に鑑賞できることが大事だと思う。

あと、もう一冊。1958年生まれで大学教授の小田中章浩氏の『フィクションの中の記憶喪失』 (世界思想社)を拾い読みした。
小説や映画など、フィクションの世界で、 「記憶喪失」がどのように描かれているかを分類分析した本。註が若干ついているけど、専門書という感じではなく、普通に読める本。
「洗脳」のニュアンスで、その用語を使い始めたのはエドワード・ハンターであることは有名。彼の『洗脳 中共の心理戦争を解剖する』 (法政大学出版局)も拾い読みした程度だった(この時期、今と違って(?)法政大学出版局からは反共リベラル本がけっこう訳出されている。何か、フフフの関係が米政府広報関係者とあったのではないか? いいこと?)。

小田中氏は、ハンターに触れつつ、リチャード・コンドンの『影なき狙撃者』 (ハヤカワ文庫)を紹介している。映画化も二度されているが(あいにく見ていない)、マインドコントロールが果たして可能なものかどうか…。オーウェルの『1984』に於ける過去の歴史の抹殺修正も、ある種の記憶喪失として捉えている。なるほどとも。

ここに出てくる小説や映画を見るだけでも一仕事。そして分析するのはもっと大変な作業だったかと。拾い読みなれど紹介させていただく次第。


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