古本虫がさまよう 「素晴らしき転向者・佐藤勝巳さん」に捧ぐ  関川夏央と和田春樹とを読み比べながら
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「素晴らしき転向者・佐藤勝巳さん」に捧ぐ  関川夏央と和田春樹とを読み比べながら









学生時代に読んだ本で忘れられない一冊といえば、佐藤勝巳氏の『わが体験的朝鮮問題』 (東洋経済新報社)だ。
当時、北朝鮮批判の書といえば、加瀬英明氏の『誰も書かなかった北朝鮮 「偉大なる首領さま」の国』 (サンケイ出版)がある程度。

関貴星氏の『楽園の夢破れて』  (全貌社)はまだ古本屋でも入手していなかったか…。
金元祚氏の『凍土の共和国 北朝鮮幻滅紀行』 (亜紀書房)が出るのは、僕が社会人になってからだった。

それら以外は、北朝鮮讃美書ばかり。一方、韓国は悪しざまに叩かれていた。

しかし、北朝鮮讃美派から転向した経緯を佐藤氏は先の本で赤裸々に綴っていた。そして、手厳しい北朝鮮批判派となったが、その佐藤勝巳氏(「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会〈救う会〉」元会長)が12月2日、肺炎で死去していたとの報道に接した(朝日新聞2013年12月5日付け朝刊)。享年84。

拉致問題に真摯に取り組んでいた人だった。2001年4月号「諸君!」で、和田春樹氏が、「世界」(2001年1月号&2月号)で、「『日本人拉致疑惑』を検証する」という論文を書いていたのに対して、痛烈な反論を展開していた(「いい加減にしなさい 和田春樹センセイ!」)。

なにしろ、和田論文はあまりに破綻した唖然とする屁理屈を述べていた。横田めぐみさんの拉致に関する、さまざまな証言について、多くの疑問点があるとして、 「横田めぐみさんが拉致されたと断定するだけの根拠は存在しないことが明らかである。そういう情報が韓国情報機関から流されているのなら、拉致されたかもしれないという疑惑が生じうる という以上の主張は導き出せないと思われる。横田さんのご両親にはまことにお気の毒だが、それ以上の確たる材料は与えられていないのである」と(下線部は和田論文・2月号本文で傍点の箇所)。

かくも、めぐみさん拉致を否定してみせたが、その直後の小泉訪朝で、そうした和田氏の願望は「まことにお気の毒だが」現実の前に裏切られる形となった。

佐藤氏逝去のニュースを知って、そんな十年以上昔の彼の論文を思いだしたりした。

ともあれ、関川夏央氏の『夏目さんちの黒いネコ やむを得ず早起き2』 (小学館)を読んだ。週刊誌連載のエッセイをまとめた本。この本の前著『やむを得ず早起き』 (小学館)も面白く読んだもの。
今回の著も、 シャープな社会党葬送曲や北朝鮮論などが綴られており、ふむふむなるほどその通りという感じで一読した。
『随筆 本が崩れる』 (文春新書)の草森紳一氏のことやら中国の高速鉄道事故のことやら…。

「車両埋没の画像は、かつて中国共産党の味方だった朝日新聞の記者が、たまたま現場で撮って配信した」とのこと。知らなかった? いやいや「朝日新聞が中国共産党の味方だった」こと(かつては「味方」というよりは「言いなり」?)は、もちろん知っていたが、あの写真を配信したのが朝日だったとは?

関川氏は続けて、そのために「若い頃、中国共産党革命に好意的だった年配者は深い沈黙に沈んだ」とのこと。ふうむ。なるほど。まぁ、日本にもミニ中共といったJR北海道の労組などがあるから、「年配者の中には日本も負けてない」と安心しているかも?

関川氏のデビュー作『ソウルの練習問題』 (新潮社他)、 『海峡を越えたホームラン』 (双葉社)以降、本格的な評論をきちんと読んでいるとはいえないけど、こういうエッセイ集は楽しく読んでいる。

関川氏は、前著のほうでは、たしか朝鮮韓国問題の恩師としての田中明氏追悼のエッセイも収録されていたかと。

また、しばしば北朝鮮を礼賛した文化人(小田実、寺尾五郎など)ジャーナリズムを手厳しく叱責していた。
そして、関川氏は北朝鮮旅行をしたこともあるが、 「いっしょになった日教組の先生たちや朝日新聞記者、また平壌のホテルで見かけた社会党員には、文字どおり心胆を寒からしめられた。90年代までの日本には、日本社会の問題点を、よく知りもしない外国に仮託する悪趣味が幅を利かせていた。だが、いまも大差ない。たとえば、日本の『民族主義』高揚を警戒する言説はあっても、コリアや中国の民族主義に対しては限りなく甘い。民族主義が、時の経過とともに過剰防衛型民族主義に変質するのは、韓国を見ればよくわかる。それがさらに膨張型民族主義に肥大していく過程は、中国の『帝国主義的』世論にあらわれている。北朝鮮の惨状の根源も民族主義だ」と喝破していた。同感。
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