古本虫がさまよう 中沢啓治氏の『はだしのゲン』と早坂隆氏の『鎮魂の旅 大東亜戦争秘録』はどちらも中央公論新社から出ている
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中沢啓治氏の『はだしのゲン』と早坂隆氏の『鎮魂の旅 大東亜戦争秘録』はどちらも中央公論新社から出ている




中沢啓治氏の『はだしのゲン』 (中央公論新社ほか)が話題になっている。松江市の小中学校の図書館で、その本を「閉架」扱いにして閲覧制限を加えたからである。

この報道に接した時、まずは『はだしのゲン』の記憶が乏しいことに気づいた。1973年から『少年ジャンプ』に連載されたという。僕は『少年ジャンプ』は創刊号を購読したことははっきりと覚えている。

当時、子供向けマンガとしては、『少年サンデー』『少年マガジン』があった。月刊マンガもいろいろとあった。戦争マンガとしても、『あかつき戦闘隊』や『紫電改のタカ』などは、連載時のリアルタイムだったか、新書マンガで読んだか記憶はあいまいだが、いろいろとあった。何度も読んだものだった。

『少年ジャンプ』はとぎれとぎれではあったと思うが、小学生の時から大学を卒業するまで読んでいた。大学時代は友人と『少年ジャンプ』と『少年チャンピオン』を交互に買って交換していたかと。

だから『はだしのゲン』も、中学生の頃からの連載だから、目を通していたかと。被爆者が、爛れた形状をしていたのが目に焼きついてはいる。

産経新聞(2013・8・22)で、阿比留瑠比氏は40年近く前に読んだ時に「平和の尊さを学ぶ」(毎日)というより,、人間社会の「悪意」と「憎しみ」ばかりを印象に刻んだと書いている。彼は1966年生まれのようであるから、小学生の低学年の時に『はだしのゲン』を読んだことになる。だとすれば、そう感じるのも無理ないかもしれない。そのほか、反天皇で、何の根拠も示さず旧日本軍の蛮行が「これでもか」というほど語られているマンガだから、「小中学校に常備すべき本だとはとても思えない」と。

一方、知人が先日、こんな保守派の見解もあるぞといってコピーをメール送信してくれて拝見したのが三浦小太郎氏の「はだしのゲン」論(北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会発行の「かるめぎ」2013年8月20日号に所収)。

彼は1960年生まれのようだ。中学生の時にこの作品を読み、最近再読もしたという。「異様な恐怖感と感動とをともに覚えた」とのこと。

反原爆、反天皇、反米などの政治的テーマが顔を出すので「保守派はプロパガンダだと批判」「逆に、一部の左派はこれこそ被爆者の反戦平和の声だと唱えてきた」と。

しかし、「この漫画の本質は、まず、体験者にしか描けない被爆体験」であり、そして、人間のさまざまな見苦しさや実直さが追求されている作品であり、「先入観を捨てて再読してほしい一冊である」と結語している。

図書館騒動前に執筆したようであるが、そもそも学校図書館に相応しくないと要求した人は、原爆投下の残虐なシーンよりも、反天皇的な歴史観がおかしいからということだったらしい。

学校図書館が「日教組」的な価値観の本ばかり揃える傾向があって、それに対して、こんな本もあるから購入して常備すべきだと要求するのはいいと思うが、すでにある本を開架はおかしいと要求するのはいささか変であろう。どっかの公立図書館が、保守派の著作をさっさと「焚書」にしていたために裁判沙汰になったことがあった。
こちら(はだしのゲン)は「焚書」になったわけではないが…。

「残酷」といえば、家人が夏休みに旧東欧に出かけていたが、ちょうどスペイン列車事故が起こった時、向こうでは、新聞でもテレビでも「死体」が写っていたと驚いていた。たしかに、なぜか日本では東日本大震災の時でさえ、そんな「死体」は報道されることはない。残酷だから?というわけだろう。テレビのニュースや新聞は子供も見るから、そんな残酷なものは載せてはいけないという自己規制があるのか。今回の『はだしのゲン』問題からしても、おかしいルールということも可能なはず。

ただ、北朝鮮の人権問題などに関してほぼ同意見であろうが、『はだしのゲン』をめぐって意見が異なる先の阿比留氏と三浦氏であるが、やはり初めて目にしたのが小学生だったか、中学生だったかの年齢的な差も少しあるのかもしれない。

性教育や慰安婦問題にしても、いつごろから教えるかに関しては悩ましい? 大人ならなんでもない娯楽マンガのエロシーンも、小学生低学年時に読むのと、小学生高学年時に読むのと、中学生になってから読むのと、高校生が読むのとでは、大きな衝撃の差がある?

小学生の時に少年ジャンプで「ハレンチ学園」を読んだばかりに、スカートに異常な愛情を持つようになった人もいるかもしれない。最近、50歳前後に多いスカート盗撮犯人も、そのトラウマが原因かも? だとしたら、やはり小学生の読書には一定の配慮も必要になってくる? ううむ…。そういえば、佐藤まさあき氏の「ダビデの星」を読んだのはいつのことだったか? あれを小学生の時に手にしていたら…。大人になっても、団鬼六の世界にあまり染まらなかったのは、読んだのが中学生だったからかな?

ともあれ、言論表現報道の自由は大事。どっかの図書館で起こった「焚書」はケシカランし、ことさら「残虐」を隠蔽しようとする、お役所の発想もおかしい。間違っている。
そういえば、以前は裁判所なども尊大で、撮影は厳禁、法廷で一般の人がメモを取るのにも制限があったというし、今だって、せいぜい開廷前の光景(黒服の裁判官が並んで、後姿の傍聴人の背中が見えるだけ)がチラリと映るだけ。
2013・8・22東京夕刊に中国の法廷で、警官に囲まれ被告人席に立つ薄熙来被告の写真が掲載されていた。日本の法廷の写真でもこの程度の写真なら公表されてもいいのではないか。冤罪もありうるとはいえ、死体をことさら隠蔽するのと同じで、「犯罪者」の人権保障の観点からなのか、無味乾燥な法廷シーンを延々と放送するのもアホらしい。角栄裁判など、いろいろと法廷スクープ写真もあったが、オウム裁判など、被告の最新の「顔」や「容貌」を見たいものだ。そういう自由は制限されても仕方ないのか?

それはさておき、先の戦争を単眼的ではなく複眼的に捉えた早坂隆氏の『鎮魂の旅 大東亜戦争秘録』 (中央公論新社)も、小学校中学校の図書館に常備してほしい一冊でもある。サブタイトルに「大東亜戦争」とあるのはケシカラン、こんな大東亜戦争肯定論的な本は、開架にしてはいけない、閉架もダメである、購入する必要なし…なんてなるかもしれないが、とんでもない。

サピオ(2013年9月号)、「90歳になった帝国軍人25人『最後の証言』前編」と特集をしているように、敗戦から68年が経過し、いわゆる戦争体験(戦場体験)がある人は、もう90代なのだ。子供の時に空襲警報を聞いた、焼跡を彷徨ったという「戦争体験」を持つ人も、70代半ばだ。

そういう戦争(戦場)体験を持つ生き残りの人々の「証言」と「記憶」を求めて、早坂氏は国内、フィリッピン、モンゴル、台湾などに出かけている。一部、電車の中で読みながら、涙も出てくる章もあった。日本兵士の勇気に感謝する外国の人もいた。
『はだしのゲン』もいずれ「再読」したいと思うが、こういう戦史(ノンフィクション)もある。早坂氏の『祖父の戦争』 (幻冬舎文庫)もお勧めの一冊である。

自己の体験を唯一のものとして、単眼的に戦争を賛美したり告発したりするのも可能ではあるが、さまざまな人の戦争体験に耳を傾け、さまざまな戦争観を知ることも大事であろう。
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