古本虫がさまよう 昔今東光、今百田尚樹? 右傾エンタメか特定嗜好小説か?
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昔今東光、今百田尚樹? 右傾エンタメか特定嗜好小説か?




古女房は、一般小説を読み、僕は小説に関してはラブストーリー&「特定嗜好分野」しか原則として読まない。
スパイ小説などに関しては、稀にオーバーラップすることもあるのだが、古女房が読んで古本屋に売られる寸前になっていた百田尚樹氏の『夢を売る男』 (太田出版)を読んだ。

大手出版社を辞めて、自費企画出版社の会社の出版部長になった男が主人公。自社主催のナントカ賞で「大賞」を受賞した作品は無料で出版するものの、そこにはいたらない特別賞などの作品の作者に、あれやこれやとうまく誘って、ジョイント・プレス(半分社が負担、半分は書き手負担)で本を売っていく。出版社と著者が半々で負担し、優れた本でありながら種種の事情で刊行が難しい本を世に出す…と。かなり高めの価格になるが、広告宣伝バーコードもある本だからといって誤魔化す?…。

相手が意欲だけが売り物の若者か、小金を持っていそうな高慢な主婦か…等々で、ジョイント・プレスの売り込み方も異なる。相手を見て法を説けではないが、振込詐欺にも似た誘導方法でもある。

その騙しの話術のノウハウというか、書き手をその気にさせ夢を見させるようにしつつも、裏ではバカにしている構図が面白おかしく描かれている。

また、二番手の低価格路線を打ち出す自費出版会社を蹴落とすために、老大家の絶版文庫を広告塔として収録し、負担が軽くなる文庫での出版を進めたりもする。また、五十歩百歩とはいえ、自分たちはまだ印刷部数などを誤魔化したりしていないのに、その二番手出版社が誤魔化していると察知し、それをスキャンダルに仕立て上げていく…。

さらに、新市場開拓ということで、ブログの書き手相手に「ジョイント・プレス」の売り込み…などもしていく。内容はつまらなくても日々更新しているブロガーは自意識が高いからそこを突けば金になるといわんばかりに……。ふうむ? 何故か(?)本欄「古本虫がさまよう」宛にはまだそういう提案はないが、要注意? 
電話セールスなどの世界でも、こうしたノウハウがあるのだろう。

僕の知人でも、こういう自費企画出版社に300万払って本を出した人もいた。手書き原稿故ということもあっただろうが、今からするとかなりの暴利か? 毎日新聞に何十人かと一緒に「広告」も出ていた。この自費企画出版社、新宿御苑近くに高層自社ビルが建っていたなぁ?

いやはや、実際の自費企画出版社の「出版ウォーズ」もこんなものではなかったかと思われるほどの迫真性がある。

最後はほろ苦くというか、甘く、ハッピーエンドにもなる。ジョイント・プレスの売り込み一途の「鬼」の出版部長の目にも涙!?

サラリーマン小説といえば、かつては源氏鶏太の独壇場であったが、それ以上に百田氏の小説は、起承転結もはっきりしているし、善玉悪玉もすっきりとしているし、悪玉の中にも善意の心もある…そして自分自身のことも自虐的にちょっと登場させたりとお遊びもある(かつての有名作家が没落していくことを紹介する中で、「元テレビ屋の百田何某みたいに、毎日、全然違うメニューを出すような作家も問題だがな」「まあ、直に消える作家だ。とにかく、後世に残る作家というのは、常に新しい読者を生み出す小説が書ける作家だ。ある世代の人たちに熱狂的に受け入れられても、その世代が消えたらお終いだ」…)。

また純文学作家への皮肉(単純に書けることは、複雑に書くノウハウの可笑しさ)もある。

そういえば、百田氏は、憲法改正論者でもあるそうな? ワックの『ウイル』にもよく登場しているではないか。2013年8月号でも、佐藤正久氏(自民党)と一色正春氏(元海上保安官)との鼎談に参加し、正論を展開している。

打ってよし、守ってよし、走ってよしの三拍子揃った野球選手イチローではないが、小説書いてよし、ノンフィクション的な正論も言ってよし、そして好色そうな容貌もまたよし(?)、三拍子揃った作家といえようか? 昔今東光、今百田尚樹?

そのせいか、石田衣良氏が、毎日新聞夕刊(2013年7月4日付け)で、「右傾エンタメと『大衆』の行方 独善、自閉でない誇りへ」と題したエッセイの中で、百田氏の作品(『永遠の0』講談社文庫)などを取り上げて、いろいろと昨今の愛国調のエンタメについて書いていたなぁ。

『永遠の0』は読んでいないが、その中で大東亜戦争、特攻隊を肯定し、それを貶める新聞記者への批判めいた箇所があるようだ。

「失言で大臣を辞職するタカ派のおじいさん政治家みたいな言葉が並んだけれど、ここで文章や作品のよしあしを語るつもりはない」 (石田氏)とのこと。ふうむ。

ともあれ、特定嗜好分野以外の小説も活気あるようで何より?

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