古本虫がさまよう 2017年08月04日
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京都大学学術出版会は新左翼からエロス出版社に転向(したわけではなかった)?
(2017・8・4・金曜日)





夏休みに読まなくてはいけない重厚長大ベスト10をこの前披露したが、まだ忘れていた本が何冊かあった。

①楠茂樹氏&楠美佐子氏の『昭和思想史としての小泉信三 民主と保守の超克』 (ミネルヴァ書房)
②荻野富士夫氏ほか『「満洲国」における抵抗と弾圧 関東憲兵隊と「合作社事件」 』 (小樽商科大学出版会 ・ 日本経済評論社(発売)
③ハーバート・フーバー/著  ジョージ・H.ナッシュ/編 『裏切られた自由  フーバー大統領が語る第二次世界大戦の隠された歴史とその後遺症-上』 (草思社)
④田中雅一氏編の『侵犯する身体 フェティシズム研究3』 (京都大学学術出版会)

そういえば、何年か前に、出たことを紹介した春日井邦夫氏の『情報と謀略 上下』 (国書刊行会)も積んどくしたまま。いやいや十数年、何十年?前に購入した古川ロッパの晶文社から刊行されている四巻の日記(『古川ロッパ昭和日記』)も積んどくのままではないか。同じ晶文社から刊行されているバーネット・ボロテンの『スペイン内戦 革命と反革命 上下 』 (晶文社)は、とにもかくにも一読はした。

ともあれ、まずは、田中雅一氏編の『侵犯する身体 フェティシズム研究3』 (京都大学学術出版会)を拾い読みしつつチャレンジ。これがなかなかのユニークな「学術書」なのだ。

しかし、アマゾンの「内容紹介」は、たったの一行→身体が精神の呪縛からわたしたちを解き放つ。ヒトと身体とモノの不思議な関係を究めるシリーズ完結編。 これでは売れない?

僕がこの本の編集者ならこんな「内容紹介」にするけど?

『癒しとイヤラシ エロスの文化人類学』 (筑摩書房)の著者・田中雅一が編纂。天下の京都大学教授をはじめ、女性研究家も含めたフェチ研究の数々。書名は『侵犯する身体』ともっともらしいけど、要は『スケベな人間のフェチ願望はなぜ生まれるのか』がテーマ。ありふれた感想文ではない、緻密な学者ならではの学術的解剖を賞味されたし。電車の中でも読めるエロ本なり。

十数人の「学術的論文」(要は「註」が沢山ついた論文)が並んでいるが、やはり圧巻は編者代表の田中氏の「ランジェリー幻想 官能小説と盗撮、格子写真」であろうか。

論題の「ランジェリー」ということで、官能小説における「下着」の描写がどういうものであるかをまず分析。48冊の書名が並ぶ。睦月影郎氏や牧村僚氏やトー・クンなど。僕の読んでない作品、作者もいる。

それらの中には下着を描写している場面が288あるとのこと。「ブラ」「パン」さまざまだから、場面数より下着数の総計が多くなる。下着の種類としては、パンティ、ショーツ、スキャンティ、パンツの表現するものは同一だと考えると、圧倒的にパンティ、そしてブラジャーが多数になるとのこと。

そのほか、スリップ、ガーターベルト、ガードル、キャミソールなど…。形状はビキニ、ハイレグ、スケスケ…。色などの分析も。匂い(臭い?)についても、チーズ臭、甘酸っぱい、磯の香…など。文中の適宜引用も。
盗撮画像の分析も出てくるが、なぜか、それはイラスト(ネット上には写真でアップされている)との注記がある。ということは、さすがに学術書だから、オープンなネット写真でも掲載するのはまずいとの判断?

ほかにも写真はまずいということからイラストで描写する例もあるが、コラムで、「アダルトビデオにおける『フェティシズム』」のところでは、「尻」がらみの一連の作品の「カバー」写真は何点か掲載されている。「表紙」はいいということか?

ともあれ、田中論文では、下着カタログと考現学など、筆致はさらなる展開。ベンヤミンなんか出てくると、突如小生の関心は低下していくが、とにもかくにも、下着を「学術的」に解析すると、こんな論文になるんですな---と感嘆した次第。

参考文献にあがっている、上野千鶴子氏の『スカートの下の劇場 ひとはどうしてパンティにこだわるのか』 (河出書房新社)などは画像も沢山あったかと。

大森堅司氏の『珍本パンティコレクション』 (KKベストセラーズ)が参考文献に入っていないのは疑問だが? 今後は、ワコール編の『ブラパン 100 聞きたくても聞けない、下着のホンネ』 (ビー・エヌ・エヌ新社)も見のがせなくなる?

京都大学の出版部というと、 「京都大学出版会」というところから出ている本を古本屋で時々見かけたことがあった。新左翼っぽい本を出していて、京都大学ともあろうものが?と思っていた。それが京都大学学術出版会に新装開店して、少しは普通の本を出すようになったのかな?----と思っていたが、学術出版会の案内を見ると、→類似した名称の出版社があったとのことで、 「1970年代前半に新左翼系雑誌『序章』を刊行していた序章社は、同誌創刊当時「京都大学出版会」という名称であったが、京都大学の公式団体ではなく(任意団体)、学術出版会と直接の関係はない」--とのこと。こちらの早合点勘違いだった模様?

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!

田中さんの本の書評を以下再録。6年前に読んだ本だった。

日本女性の貞操とオーラルヒストリー&オーラル…… 01/31/2011

田中雅一氏の『癒しとイヤラシ エロスの文化人類学』 (筑摩書房)を読了。題名からしてちょっとおふざけ本かと思ったが、著者は博士課程修了の人類学などを専攻する京都大学教授。マジメ本でした。女体盛りは日本文化か否か、代々木忠氏の作品解説論、永沢光雄氏の『AV女優』 (文春文庫)などエロスモノの著作分析論など…が収録されている。

その中でちょっとおやっと思ったのが、水野浩氏(前著)とノストラダムス大予言でも知られる五島勉氏編(後著)の『日本の貞操 外国兵に犯された女性たちの手記』『続日本の貞操』 (蒼樹社)に関する指摘だ。『日本の貞操』はノンフィクションではなく共産党員による「創作」であったとのこと。米兵に犯されパンパン(売春婦)に転落したりする女性の手記として当時は読まれていたのに……と。

両書とも積んどくしていた。五島氏編の『続日本の貞操』はすぐに見つかったが、水野氏編は見当たらず。このフィクションの事実を指摘したのが、前述のジャズピアニストでもあるマイク・モラスキーで、その別著『占領の記憶記憶の占領 戦後沖縄・日本とアメリカ』 (青土社)で詳述されている。それも積んどく本だった。慌てて該当箇所を一読。ううむ。

かつて慰安婦狩りをしたという吉田清治氏の本『朝鮮人慰安婦と日本人』 (新人物往来社)と『私の戦争犯罪 朝鮮人強制連行』 (三一書房)が実は針小棒大なフィクションがあったのにノンフィクションとして流通し、朝日新聞をはじめとするマスコミによって吹聴され外交問題にまで進展してしまったことがあるが、これまた反米世論を増幅するために日本共産党員だった関係者によって捏造されたというのだ。

「一九九六年五月に私(モラスキー)は、この書物が出版された一九五三年当時(今はない)蒼樹社で働いていた編集者を東京でつきとめた」「電話インタビューにおいて彼は、この四つの物語が「水野浩」という実体のよくわからない人物によって書かれたことを認めた」「水野は日本共産党と関係していたらしく、横須賀の基地で働いて情報を集め、パンパンの世界にも通じていたらしい」「その編集者によれば、蒼樹社は内部での激しい論争のうえ、この本の出版を決意」「社から何人かの編集者が日本共産党の意向を探るために代々木の党本部を訪問し、蒼樹社は共産党のゴーサインを受けて初めて本書の出版に乗り出した」

まぁ、今でも女教師編、未亡人編で性遍歴を綴った手記の類が実話ではなく「創作」というのはよく聞く話だが、日本共産党の詐術の手法はその後も続いたということか。ただ電話インタビューなどや「らしい」「らしく」の表現が若干気にはなる。

といっても、この本1982年に、実録ノンフィクションとして倒語社から「死に臨んでうったえる 空洞の戦後叢書」として復刊もされている。発行者の吉林勲三氏は、この本を復刻するにあたって水野氏と連絡を取ろうとしたができず無断での重刻となったという。まぁ、存在しない人かも知れないから? 吉林氏は、立命館大学の学生時代、1969年5月に「わだつみの像」を倒壊したという。そういえばそんな事件もあったか? その「犯行」の直後広島に行き、『日本の貞操』を古本屋で入手し読んで「ひどく感動した」という。その思いを綴ってもいるが、今となっては共産主義者の手中で操られた虚しい左翼人の悲哀というしかないのかもしれない。お可哀相に!

それはともかくとして、 本屋で立ち読みした希崎ジェシカ氏の『オーラルセックス』 (ベスト新書)は口述であったとしてもオーラルヒストリー的に本人の実話であろうが? 改行だらけなので立ち読みで十分。帯に「こんな口撃で攻めてほしい」とある。自分自身の性体験、オーラル体験、クンニなどの感じるテクニックを詳述している。参考になる?

それにしても「日本女性の貞操」は何処へ消えたのやら? 勿論男も! 小谷野敦氏の童貞を綴った私小説『童貞放浪記』 (幻冬舎文庫)もあったかと。


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