古本虫がさまよう 2017年05月12日
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『赤い星は如何にして昇ったか 知られざる毛沢東の初期イメージ』を読みながら、『スパイは未亡人を残した』なんて本もあったことを思い出した。『赤い星』のエドガー・スノーがスパイだったというわけではないが…。『スノーは(逞しい反中の)未亡人を残した』とは言えるか?
(2017・5・12・金曜日)


1963年生まれの石川禎浩氏(京都大学教授)の『赤い星は如何にして昇ったか 知られざる毛沢東の初期イメージ』 (臨川書店)を読んだ。聞くところによると、高華という南京大学教授(故人)の人に、 『紅太陽怎麼様昇起的』をという本があるそうな。そのタイトルをもじったものかも?


(内容紹介)→革命家として認知される以前、毛沢東は世界で如何なるイメージを持たれていたのか。知られざる若き日の毛沢東像が浮かび上がる。その名は轟けども姿の見えない毛沢東――政府官報に掲載された太っちょ毛沢東はいったい何者なのか。傑作ルポルタージュ『中国の赤い星』によって毛の素顔が明らかになるまで、偉大なる革命家は世界で如何なるイメージをもたれていたのか。世界中に散らばった毛沢東像の断片を拾い集め、本場中国の人びとも―あるいは毛本人すら―知らない、若き日の毛のイメージを浮かび上がらせる。『中国の赤い星』によって覆されるそのイメージとともに、同書が「名著」の高みへと昇る過程を描く。

【目次】
はじめに――謎の毛沢東像
第一章 知られざる革命家
第一節 毛沢東その人 / 第二節 中国政界情報誌の毛沢東伝――中国初の毛沢東伝 / 第三節 一九三〇年代初めの内外人名録での毛沢東 / 第四節 コミンテルンという組織 / 第五節 コミンテルンはどれほど毛沢東のことを知っていたか

第二章 マオの肖像――イメージの世界
第一節 欧米は毛沢東をどう見たか――支援者の描いた「さえないおじさん」 / 第ニ節 「毛沢東死せり」――コミンテルンの流した訃報 / 第三節 毛沢東肖像画の登場 / 第四節 ロシア人エレンブルグの見た毛沢東――国外最初の毛沢東伝 / 第五節 雨傘を持つ革命家

第三章 国際共産主義運動への姿なき登場
第一節 毛沢東を持ち上げる王明――初の著作集の出版 / 第ニ節 ハマダンの毛沢東伝 / 第三節 「毛沢東伝略」――中国共産党員によって初めて書かれた毛沢東評伝 / 第四節 モスクワの毛沢東伝――コピー・アンド・ペーストの世界 / 第五節 高自立のその後

第四章 太っちょ写真の謎
第一節 太っちょ毛沢東の初登場――山本實彦著『支那』 / 第ニ節 朱徳写真という手がかり / 第三節 太っちょ毛沢東を掲載したのは誰か / 第四節 波多野乾一の中国共産党研究 / 第五節 外務省情報部――国民に何を伝えるか / 第六節 あの太っちょは誰か

第五章 スノー「赤い中国」へ入る
第一節 絶妙だった取材のタイミング / 第ニ節 同行者と仲介者――ハテム、馮雪峰、劉鼎 / 第三節 届かなかった荷物――劉鼎と「魯迅のハム」 / 第四節 妻ヘレン・フォスター(ニム・ウェールズ)の貢献 / 第五節 『赤い星』は毛沢東の検閲を受けたものだったのか

第六章 「赤い星」いよいよ昇る――名著の誕生とその後
第一節 「赤い星」誕生 / 第ニ節 寄せられる称賛と批判 / 第三節 『赤い星』英語版のその後 / 第四節 『赤い星』中国語版――『西行漫記』とスノー/ 第五節 人民共和国での『赤い星』―― 秘匿された名著 / 第六節 ソ連と『赤い星』 / 第七節 戦前・戦中日本での『赤い星』 / 第八節 戦後日本での『赤い星』


冒頭、これが毛沢東の写真だ!と、当時『週報』によって流布していた、まったく別人にしか見えない、フトッチョの毛沢東の写真を紹介。なぜ、こんなのが? との謎を追求することから本書は始まる。ユン・チアンの『マオ』 (講談社)は、スノーの『中国の赤い星』 (筑摩書房)を徹底的に論難しているが、それらは「こじつけだらけ」だと否定的。まぁ、イデオロギー云々よりは、中国の専門家はその本をおおむね批判的に捉えている。僕はこの『マオ』は、スノー批判のみならず、おもしろく読んだが…。ネバーセイネバーだから?

ともあれ、戦前、戦後の日本のシナ学者の中国、毛沢東分析なども紹介しつつ、知られざる中国共産党の謎を追求していく。エドガー・スノーの毛沢東などを取り扱った『中国の赤い星』 の舞台裏なども分析していく。共産党に検閲されて、いいように書いたのではないか。いやそうではない…と。

ちょっと「学者」ばなれした、軽快な(?)筆致なので、ついつい、ふむふむなるほどねと思いつつも、さぁてそうかな? と疑いつつも面白く読了した次第。

エドガー・スノーに関しては、池原麻里子氏の『夫、エドガー・スノーは毛沢東に騙されていた』 (諸君! 2006年6月号)というエッセイがある。著者もこの見解に関しては、少しあっさりとだけ触れているだけだが、スノーの評価をめぐって、中国共産党自体が大きく変動があった点などを池原氏は前段で指摘した上で、最後にロイス・スノー夫人(未亡人)への電話インタビューもしている。

「中国政府は夫のエドガー・スノーを模範的尊敬すべきジャーナリストと称賛していますが、実際に中国のジャーナリストがスノーのような執筆活動をしたら、ただちに投獄されてしまいます。まったく偽善的としか言いようがありません。中国政府による言論統制は文革時代と変わっていないのです。彼らはスノーを自分たちの都合のよいように利用することにしか興味がないのです。これに同調するわけにはいきません」
(最後の訪中の時)「夫は病気で体が弱っていたので、これが最後の訪中になると認識していました。ですから可能な限り自分の目で確かめて、真実を探り出そうと試みたのですが、中国側がありとあらゆる手段でそれを阻止したので、とても不満に思っていました。」
「そして『中国の赤い星』で描いた革命はとても将来性があると期待していたのが、最後の訪中では現実がそれを裏切る結果になっていたことにすっかり傷心していました。彼は今日の中国の姿を決して是認しなかったでしょう」


石川氏は、この証言を前にしても、

「『スノー未亡人』はいざ知らず、スノー自身が、『赤い星』を書いたときの自分は、毛や共産党にだまされていたのだと認めたことはないはずである。それを認めることは、『赤い星』の価値はもとより、おのれのジャーナリストとしての生涯も誇りもすべて否定することにほかならないからである」と反論しているが……。

でも、スノー夫人の発言を見る限り「だまされていた」と認識していたのは間違いない事実ではないだろうか?
ともあれ、取材当時、未亡人は85歳だったとのこと。もう生きていないだろうか。

そういえば、昔昔、筑摩書房で、この『中国の赤い星』の編集を担当した方の話をうかがったことがある(当時、重役だったか)。もう20年ぐらい前。 何をうかがったか細かいことは記憶していないが……。一緒に聞きにいった「知人」も鬼籍。スノー未亡人は? 生きていれば百歳近い…。

ふと、「未亡人」という言葉で、ウィリアム・コーソンの『スパイは未亡人を残した 上下』 (文藝春秋)なんて本もあったことを思い出した。スノーがスパイだったというわけではないが…。 『スノーは逞しい反中の未亡人を残した』とはいえそうだ。

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!

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