古本虫がさまよう 2012年06月
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この前、いつものように神保町を歩いていて、ふと思った。大学に入ってから神保町界隈を散策するようになったが、この町並みも大きく変わったものだと。旧古書会館は二階が会場だった。
35年前の学生のころは交通網が未発達で、交差点の道路の上は地下鉄工事中のために何となく切り貼りしたような感じだったなぁと。
半蔵門線はむろんのこと都営新宿線も神保町にはまだなかったはず。やがて新宿線ができ、半蔵門線も半蔵門から先(錦糸町)まで延び、国鉄水道橋か御茶の水駅から通っていた道筋が、神保町を起点・終点となるようになった。
古本屋さんも、移転したり廃業したりいろいろとある。バブルのころの地上げなどの影響もはあった。
この前、神保町から九段下あたりまで歩いたら、昭和風のレンガ造りだったかの建物群が消滅していた……。
雰囲気がほとんど変わらないのは「いもや」「スヰートポーヅ」などか。

いつしか、神保町に出かけると、ある古本屋の軒先は必ず覗くようになった。店内も勿論だが、僕好みの本が多く、わりと安めということもある(勿論高い本もある)。
35年前にもあったかと思う。記憶は定かではないが、建物自体は改築したあともなさそう。夫婦でやっているみたいだ。ご主人は高齢にもかかわらず喫煙者のようで、時々店内に入るとタバコ臭い時があるが、この店は「入場拒否」することなく例外中の例外として「我慢」。
奥さんもいい歳のようではあるが、おつりのやりとりなどもしっかりしている。一冊程度、しかも軒先の300円ぐらいの本しか買わない時は、「袋は要りません」というのだが、そのたびに「お心遣いありがとうございます」と言ってくれる。

先日は軒先で二冊(2000円)物色。法政大学大原社会問題研究所編の『証言 産別会議の誕生』 (総合労働研究所)、 佐藤賢了氏の『大東亜戦争回顧録』 (徳間書店)。
店内に入ると、仕入れてきたばかりといった感じの本が紐で結ばれて塊で床にどさっと置かれている。ふうむ、面白そうな本があるかな、しかし、まだ値札を付けていないだろうから購入はできないか、ならば見るとまずいかなと思案しながら、首をヨコにして少し背表紙を眺めた。だが、欲しい本があっても買えないとなると欲求不満になりかねないから……とカウンターへ。

顔を覚えられているとは思わないのだが、二冊を購入すると、奥さんが「いつも買っていただくので、今日もこんなに仕入れることができましてね」とにっこりされた。小生の物欲しげな後ろ姿を見られていたか?
失礼ながら、お歳はうちの母親よりは少々上に見える。後期高齢者、喜寿ぐらい?
いや米寿? いやそこまでは…。半寿ぐらいかな。若い時はさぞかし美女だったかのようにも思える。こういう行きつけの店はいつまでもあってほしいもの。

以前、岡崎武志氏の『女子の古本屋』 (ちくま文庫)を紹介したことがある。その本では、僕も行ったことのある「古書日月堂」「火星の庭」「興居島屋」(なずな屋)や黒磯の「白線文庫」「キントト文庫」など女主人経営の古本屋が紹介されていた。

それにインスピレーションを受けて、フランス書院文庫あたりが『女古本屋主人と少年』『叔母は古本屋店主』『義母は古本屋女主人』なんて本を出すかもしれない、女教師、看護婦、スチュワーデスはこの分野では三大職業で『女教師の秘密』『叔母は看護婦』『スチュワーデス義母』なんて本はあるようだが、さらに兄嫁、女医、歯科衛生士、美容師、バスガイド、図書館員など……何でもありだから要注意すべきと書いたことがある。

ある古本屋の軒先、エロス本を購入しようとする中学生の男の子。おずおずと夏目漱石の文庫の下にそれを忍ばせて持っていくと、美人女主人がニコッと笑って、「こんな本を読んでちゃだめよ……。読むより習うより慣れろよ、奥にいらっしゃい…」とか。ムフフ? いかん真夏の夜の性夢か?とも記した。

そのパターンもいいが、「坊や、また買ってくれたの? ありがとう。お礼しなくちゃ、奥にいらっしゃい…」というパターンもあるかなとも?


それはともかくとして、三上延氏の『ビブリア古書堂の事件手帖3 栞子さんと消えない絆』 (メディアワークス)を、土曜日の午後(午前中は高円寺の古本市を覗きさっさと帰宅。収穫はまた次回に)、ビール片手に読んだ。

いうまでもなく「巨乳」(カバーイラストよりの推定。ただしこの三巻目のイラストは前のに比べると小さめに描いているようだ)の古本屋女主人が主人公の古本・古書ミステリ。

すでに二冊(『ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち』『ビブリア古書堂の事件手帖2 栞子さんと謎めく日常』)刊行され、それらは紹介ずみ。

三冊目の本書も、何冊かの古本・古書を「キーブック」にして、ちょっとした盗難事件が発生し、その犯人を栞子さんと相棒というかバイトで店を手伝っている大輔が推理していくといったお話。妹もちょっとした「味」を出している。
なかなか面白く一読。
累計300万部とのことだが、結構なこと。今日(6・30)の産経に担当編集者が書いていたし、この本でも著者が指摘していたが、すでに4作目もスタンバイとのこと。そういえばコミック化もされていた(それは未購入)。

神保町の先の古本屋のおばさんも半世紀、いや60年前なら、こんな女主人の感じであったかもしれない。


以下は再録

 

三上延氏の『ビブリア古書堂の事件手帖 栞子さんと奇妙な客人たち』『ビブリア古書堂の事件手帖2 栞子さんと謎めく日常』 (メディアワークス)を、ここ数日帰宅してビールを飲みながら読んだ。古本屋小説といったところか。
 僕は小説(のみならずあらゆる本?)を読み終えると、すぐさま細かいストーリーは忘れ去るという特技がある(?)。以下の記述も読み終えてから数日後に記しているので(さらにビールを飲みながらの読書故に)細かいところで「誤読」「記憶違い」が出てくるかもしれないが、おおむね「感想」としては間違えていないと思う。あと若干ネタばらし的な筆致もあるので以下要注意?

さて、本書は北鎌倉にあると設定された古本屋が舞台。父親が亡くなり跡を継いで店主となったうら若き巨乳の美女(本文及び一冊目の文庫カバー図より推断?)。だが、彼女は、かねてから持っている太宰治の貴重な古書を売ってほしいと強要する謎の男に襲われ負傷して入院。
同じころ、大学を卒業しても職がなくブラブラしていた23歳の男。恋人は学生時代居たが、疎遠になったまま。祖母が亡くなり、その蔵書を鑑定してもうためにその古本屋に。その本には謎の書き込みもあり、それがやがてあとになって古本ミステリ騒動の遠因にもなる。
店では妹が留守番をしていて、品定めは姉でないとできないからと病院に赴くことになる。やがていろいろとあって、入院している間、古本屋の店番の仕事(バイト)をすることになる。女店主と違って、日頃本は読まないし、古本にも関心がない身。せどりの意味も知らなかった。やがて女店主を改めて襲う謎の事件に巻き込まれる。

二冊目では、その事件のあと、退院した女店主とともに買い取りに出かけたりあれこれと。ほのかな恋愛感情も芽生える。さまざまな古書や古マンガをキーワード(キーブック)にして、ストーリー豊かな古本ミステリになっている。大変面白い。ビールを飲みながら、実家から送ってきた国産のピーナッツを食べながらの読書だが、こういう本だとあっという間に豆もなくなり、空き缶も増える。いつもは夜の10時ごろに眠くなりベッドに行くのだが、こういう時は珍しく11時過ぎまで起きていたりする。

北鎌倉の古本屋そのものはフィクションではあるが、本書で登場する古書などは実在するものばかり。
司馬遼太郎氏が本名(福田定一)で書いた『名言随筆 サラリーマン』 (六月社)が高価本として登場。この本は僕も未読未入手。その他推理小説の『豚と薔薇』 (東方社)も出てくる。この本は未読だが、「日本の古本屋」で見ると二万円から八万円で出品されている。

あと、本書には出てこないが一般推理小説としてもう一冊『古寺炎上』 (角川小説新書)というのがある。これも全集などには入っていないようで「日本の古本屋」だとは6万円から12万円といった価格で出品されている。いささか暴利? こんな本がブックオフに105円であったらすごいだろうが? あるはずがない? 東京駅にある某古本屋で、ガラスケースに入れられているのを見たことがある。だが、ネバーセイネバー?
ただ、『古寺炎上』は図書館にある。僕は先の古本屋で現物を見た後、千葉県立図書館の某館にあることを知って、武蔵野線に乗って現地まで行き借り出して読んだことがある。高知や京都が舞台の小説であったと記憶している程度だが、よほどのファンでもない限り、体裁もたかだか並製の新書サイズの本に12万円も出してまで購入する必要はあるまい? 借りて読むので十分。
『豚と薔薇』や『名言随筆サラリーマン』も全国の何処かの図書館にあるのでは。コンピュータで検索も可能だし、どこかにあれば、「禁帯出」でなければ近所の図書館まで無料で取り寄せすることも場合によっては可能だから試してみるといいかも。使えるものは使うべし。
その他、バージェスの『時計じかけのオレンジ』に結末が二通りあるとは知らなかったが、その差異をめぐっての「盗作ミステリ」も面白かった。
さらなる続編もあるとのこと。楽しみ。

こういう「古本屋」本が売れると、フランス書院文庫やマドンナメイト文庫の編集部などが、作家に「先生、今度は古本屋の女主人・店主を『主人公』にしたエロス小説でいきましょう」ということになるかもしれない。すでに準備がされているかもしれない。何しろ、この世界、定番の三大職業、女(家庭)教師、看護婦、スチュワーデスはすでに飽和状態。スチュワーデスは業界の斜陽化、大衆化もあって、かつての「高嶺の花」的イメージは崩れ、イマイチ。名称もフライアテンダントなんとかになっている。看護婦もフェミニストの監視の下「看護師」となりはてた。女教師は、まだ頑張っている? 「職業婦人」としては、そのほか保母、女医などもある。

「人称名詞」としては、人妻、義母、叔母、伯母、未亡人、兄嫁、義姉、義妹、養母(アメリカには養母と義理の息子、もしくは養父と義理の娘とのエロス小説が多い。カート・アルドリッチの『養母』 (フランス書院文庫)など。日本では異民族の子供を養子にしたりする習慣があまりなく、「養母」「養父」自体少なめ。とはいえ、高竜也氏の『養母・希美子』 (フランス書院文庫)などあり)などいろいろとあるが、「古本屋女店主」を主人公にしたエロス小説はまだ読んだことがない(すでにあるのかもしれないが?)。こんなことを書くと岡崎武志氏の『女子の古本屋』 (ちくま文庫)に登場する「古本屋女店主」の方々の顰蹙をかうことになりかねないが……。あくまでもフィクションの世界の話! 
以前にも少し書いたが、エロス本・雑誌を求めて古本屋にやってくるウブな中・高校生と古本屋の未亡人女店主との「青い体験」「おもいでの夏」的な設定は、『ビブリア古書堂の事件手帖』を模倣すれば、すぐに書けるのではないか?

この他、関連書として思い出したのが、崎せいむ氏の『金魚屋古書店』 (小学館)。このマンガシリーズは十冊(以上)ぐらい刊行されている。やはり漫画専門の古書店が舞台。探求書やらなんやらといろいろと実際にあるマンガを素材にしており、楽しく読めるシリーズ。

その他、映画化(未見)もされた神保町を舞台に、失恋女性が叔父経営の古本屋に住み込む日々を描いた八木沢里志氏の『森崎書店の日々』 (小学館文庫)も佳作。続編の『続・森崎書店の日々』 (同)も刊行された。

古本エッイセ集もそこそこ好きだが、古本や古本屋をキーワードにした恋愛小説もまた楽しいものだ。ノンフィクションと違って、小説は気軽にスイスイと読める。特定嗜好分野の小説しか読まないことにしているが、エロスのみならず、この分野(古本)の本も特定嗜好にあたろうか?

もっとも「年上の女」ラブラブ編なら、村山由佳氏の『おいしいコーヒーのいれ方……シリーズ』 (集英社)が傑作。でもここ2年ほど新刊シリーズを手にしていない。禁断(?)の血筋(「形式」上は「姉弟」の愛)やらいろいろとあっての恋愛小説で、僕が読み進めていた巻ではまだ「純潔」どうしの仲で、早くやらんかい、いや早く結ばれるといいのになぁ……とイライラさせられていたものだが? いまはどうなっていることやら。二人の仲を知ってか知らずか、美姉を狙うハイエナたちがウヨウヨしていたからとても心配だ? 
神崎京介氏の『女薫の旅シリーズ』 (講談社文庫)も「年上の女」ラブラブ編としては見落とせない。ただ、こちらもここ2、3年は新刊を手にしていない。どうしても長期シリーズ本は段々と飽きてくるのかも(それにこのシリーズのカバーイラストはいまひとつ?)。

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