古本虫がさまよう 2011年11月
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 1920年(大正9年)生まれの阿川弘之氏の『森の宿』 (講談社文芸文庫)を読んだ。これは何冊かの単行本(エッセイ集)から、乗り物エッセイなどを中心に抜き出した意味での「文庫オリジナル」版。
 ここに収録されているエッセイを著者が書いたのは還暦前後のものが多いようだ。鎌倉で開かれた里見〇氏(〇の漢字が出ないから図書館か何かの検索で文字をコピーしようかと思ったら、図書館自体が、その漢字のところにゲタをはかせたりしている! 弓+「淳」の右文字)の全集完結のお祝いの会に出かけると、まわりには小林秀雄や永井龍男や堀口大学などがいる。だが、そういった長老はもうみんな鬼籍に入っている。
 2011年(平成23年)の今、阿川氏自身が押しも押されぬ文壇の重鎮・長老。しかし、共著もよく出していた北杜夫氏もついこの前亡くなってしまった。

 巻末の著作年譜を見ていると、『国を思うて何が悪い』 (光文社文庫)など、僕はもっぱらエッセイ集のたぐいしか読んでいない。小説家の小説はあまり読まずに、エッセイ集を愛読することが多いのだが、読んだことのある『山本五十六』 (新潮文庫)もノンフィクションといえばノンフィクションだろうか。

 このエッセイ集もユーモアあふれるものが多い。「大ぼけ小ぼけ」も笑える。
「『北斗星一号』試乗記」は、遠慮することなく旧国鉄の問題点(?)を指摘している。僕も乗ったことがあるが、イマイチ夜行列車だった。ラウンジカーは、(当時)喫煙可能だったし、ゆっくりと夜景を楽しもうにも、うるさいテレビを点けたままだったし、豪華夕食を予約して食べようとすると、下着シャツ姿のオッサンがシャワー券を買いに食堂車にやってくるし……。何が豪華列車だ? と。
阿川氏が旅した時も、食堂車には「浴衣のまま入って来るのがいる。素足に青いスリッパを突っかけてビールを飲んでいるのがいる。従業員だけがブラック・タイの正装である」と。これは客層の問題点だが、個室寝台のシャワー室が酷い代物だったようで、著者は一時入ったものの出られなくなってしまう。ドアがかつてあった公衆電話ボックスの押して二つ折れにして入り、引いて二つ折れにして出る式の扉であったのだが……。構造的欠陥があったようだ。
 しかも夜間はシャワーは出ないことになっていた。ソ連東欧式のサービス、見てくれだけ立派な豪華列車だったのだろう(少なくとも開業初期は…)。

 阿川氏の旅行エッセイの中で、贋車掌を体験するエッセイがあって、僕の記憶違いでなければ、旧国鉄で体験しようとするといろいろとあって非協力的だったので、やむをえず私鉄の協力を得て、贋車掌体験エッセイを綴っていたかと。お役所・親方日の丸企業は所詮そんなものなのか?(後記・これは記憶違いのようで訂正。最近中公文庫に入った阿川氏の『お早く御乗車ねがいます』を読んでいたら、「にせ車掌の記」というのがあって、国鉄車両に乗り込んでいた 2011年12月24日追記)。 
 このエッセイを掲載した雑誌「旅」は、1924年に創刊されている。阿川氏より後発!
最近になって、日本交通公社から新潮社に発行が代替わりしていたが、まもなく休刊するとの報道が先日あった。鉄道特集の時は「旅」を読んでいたが……。 「旅と鉄道」という雑誌は、何年か前に休刊になったが、最近、朝日から「復刊」されたそうな。まだ手にしていないが結構なこと。朝日もいいことするね?

 ところで、明日から師走。 「青春18切符」の発売も始まる。12月10日から使える。買うたびに昔のように一枚一枚バラで使えるようにしてくださいと窓口でお願いしているのだが、親方日の丸企業は一向に耳を傾けてくれないようだ。家族でそれを使って移動して、途中、一人が下車してブラブラしようと思っても、現行の一枚オンリーの切符だとそういうことが、かつてはできたのにできなくなってしまっている。利用者の利便を考えずに、安売りチケット屋に部分的に売却されるのを嫌がってのことなのかどうかは知らないが、情けないサービス精神ゼロというしかない。

 それはさておき、文庫だから、かさばらず、重くなく、電車の中でこういうエッセイ集を読むのは最大の楽しみといえる。
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