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2011.06.05 (Sun)

レオ・シュトラウスに師事したウォルフォヴィッツと藤原保信






土曜日はいつものように古本屋古本市行脚。梅雨時ではあったが快晴で何より。
神保町古書会館ではスペイン関連書が多数。誰か亡くなったのか? 桑名一博さま宛の書などがあった。笠井鎮夫氏の『スペイン語初学記』 (昭森社)、小林重四郎氏の『女 酒ぐれ 泥役者』 (三一書房)、三古谷栄氏の『二十四歳の日記』 (三一新書)、 『フルシチョフ言説集』 (日刊労働通信社)、北川民次氏の『メキシコの青春 十五年をインディアンと共に』 (エフエー出版)などを購入。

『メキシコの青春』は2011年5月25日の東京新聞(夕刊)の「大波小波」によればカッパブックスから出ていたとのこと。その旨もエフエー出版版にも書かれている。この本の前に岩波新書から『絵を描く子供たち』という作品が刊行されていたとのこと。
「大波小波」によれば、かつての新書は、この本のように重要な学者・物書きのデビュー作が刊行されていたという。昨今の粗製濫造新書とは違うと。
パラパラとめくる。北川氏は1894年生まれ。戦前、戦後の一時期メキシコに滞在して画を描き続けていたそうな。
デビュー作といえば、この前亡くなった小室直樹氏も『危機の構造』 (ダイヤモンド社・1978年刊行)があったにせよ、 『ソビエト帝国の崩壊』 (カッパブックス・1980年刊行)が事実上のデビュー作といえよう。時事新書、カッパブックスという新書は貴重な存在であったといえようか。

そして、いつものように高円寺古書会館へ。先ずは高円寺ラーメン横丁でいつものつけ麺(400グラム・メンマ味玉付き。但し味玉はクーポン利用)。
この前(金曜日)麹町界隈の行列ができる麺屋でつけ麺を食べた。300グラムで980円。行列ができるといってもカウンター10人ぐらいの狭い店だからか? どうってことはなし。具も少ない。行列して食べるほどのものでもなし。だから今日(土曜日)は口直し。やはりこっちの方がいい?
古書会館傍では今日は煩い音楽が流れていた。ヤレヤレ。
中央線(黄色電車)は車内の照明を全部消したりしている。地上を走る電車だから日中はまだしもだが。それでもトンネルや駅舎に着いた時暗くても平然としている車掌には呆れる。昔は節電といってもそういう時は照明を点けていた(ただそんなことをして小まめに切りすぎると蛍光灯がバカになるのが早くなるかもということでいちいち切ったりしなくなったのだろうが)。チグハグな節電なんかしなければいいのに。地下鉄も車内蛍光灯を削減していて車内で本が読みにくくてしょうがない。読書力が低下してしまう。目の悪い人などが照明が暗くて困っているという記事も散見するが、普通の人だって迷惑だ。東電同様、親方日の丸というのか潰れないと思っている電鉄会社の官僚的節電対応を見るにつけ、口頭による抗議では応えないのかな?

近藤英明氏の『国会のゆくえ』 (春陽堂)、松縄信太氏の『私の予言2』 (川島書店)、シュテルンベルクの『試練の上に立つ資本主義と社会主義』 (中央公論社)、佐治孝夫氏の『社会主義戦略の挫折と再生』 (芦書房)などを購入。
あとは駅前でオーストラリアのビールなどを買ってさっさと帰宅して読書三昧。

ブッシュの回顧録は後回しにして、1935年生まれで1994年死亡の早稲田大学教授だった藤原保信氏の『学問へのひとつの道 働くことと学ぶこと』 (みすず書房・自家版)を読んだ。父親がフィリピンで戦死。農業高等学校を卒業し日東に就職するものの早稲田大学政経学部(夜間)に入学。昼間は働き夜勉強。そして奨学金などを得て大学院にも進学。フルブライト留学生としてアメリカの大学に留学。母校の教授となる。苦学の過程が淡々と書かれている自叙伝であった。
この時代の学者の卵としての苦難的自叙伝はいろいろとある。以前も麻田貞雄氏の『リベラルアーツへの道 アメリカ留学とその後』(晃洋書房)を紹介したことがあるが、同様の感銘をもって一読した。

藤原氏の場合は同盟系の労組(ゼンセン同盟)が強い企業で働いた体験も学問的な影響を与えたようだ。時代の流れもあって政治学とマルクス主義とは強固な繋がりがあったが、学生時代も学友会などは当然マルクス主義、共産党の影響力が強いが、何となく違和感を抱きそれを表明したりもする。
河合栄治郎のマルクス批判をつうじてマルクス主義を学んだ体験もあったからだと。サンケイ新聞に後に就職した箱崎道朗氏などと共に社会主義学生同盟なるものを組織していたこともあった。これは反マルクス、民主社会主義的組織だったとのこと。歌声喫茶や反米デモにも参加。改憲論者の吉村正教授や大西邦敏教授等に学んだとも。職場では反総評の同盟系組合の実情(若干御用組合的な面や労働貴族を思わせる役員への違和感)にも苦言を呈している。江上武彦氏も関義彦氏の名前も出てくる。大学院の同期には松崎稔氏(共同通信社)なども。
ラスキやホッブスなどを研究し、アメリカではレオ・シュトラウスに師事したくシカゴ大学に行ったものの定年退職。一度自宅を訪ねて面談したとのこと。シュトラウスはネオコンのウォルフォヴィッツの師ともいわれて近年日本でも注目されている。いち早く著者は学問的関心から彼の著作などをひもとき研究していたのだ。
日本ではシュトラウスの本も何冊も訳出されているが、個人的にはほとんど積んどくしたままだ…。
藤原氏が1993年に刊行した『自由主義の再検討』 (岩波新書)には近年話題のサンデルなども登場しコミュリタリニズムへの考察も出てくる。
中庸な研究者として活躍していたようだが、若くして亡くなり残念なことと感じた次第。


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