古本虫がさまよう 共産主義
2017 03 / 02 last month≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫03 next month






「相棒」と「赤旗」の親和性?(2017・3・19・日曜日)




2017年3月19日号(実際の日曜日より早く刊行される)の「しんぶん赤旗」の記事9面(「北朝鮮がミサイル発射」「制裁と一体で外交交渉を」「核兵器禁止へ世界の結束こそ」)を読んでいたら、妻がやっぱりねという。「はて?」と思ったら、その記事の下に映画「相棒」の広告が出ていたからだ。

「相棒と共産党となんか関係あるの?」
「テレビの『相棒』はそれほどじゃないけど、映画の『相棒』は、この前も見たけど、なんとなく左翼臭いのよね」
「左翼?」
「たとえば、安保法制に反対しているニュアンスが見え見えの構成なのよね。戦争が一般人をいかに苦しめているか…なんて底意がプンプン…」

ふ~ん? 見てないからなんとも言えないけど、そういう制作者意図もあって、赤旗に広告が出ているのかな? そういえば僕がメロディも外見も好きな西村由紀江さんも、日曜版にエッセイを連載しているみたいだけど……。

まぁ、ともあれ、9面記事、金ミサイル連発に「日本共産党『暴挙に厳しく抗議」ともあるけど、朝鮮総連関連団体前でジグザグデモをしているわけでもなさそうだ。単なる声明というか「談話」の発表だけでは……。沖縄の米軍基地前でやっているのと同じぐらいに「厳しく」やるべきでは?  談話だけなんて、何の迫力もあるまい(ソ連のアフガン侵攻に関しても、談話だけの抗議だったかと。ソ連大使館前で何かしただろうか?)。そして、中国の外相の発言を麗々しく紹介(米韓軍事合同演習批判)。北朝鮮のミサイル発射基地を粉砕するしかないという考えも批判。

「国際社会が結束し、安保理で合意された経済制裁の厳格な実施と一体で、外交交渉を通じて北朝鮮に非核化を迫り、核・ミサイル開発の手を縛り、その放棄に向かわせるしかありません」との口先リベラル的な見解。まぁ、朝日的? そんなことを繰り返しても、効果がなかったから、「あらゆる手段」を考慮しなくてはいけない時ではないか。
また、目には目を、歯には歯を-ならば、暗殺には暗殺を…ということも考慮されてしかるべきだろう。スターリン、ヒトラー、もっと早く暗殺していれば…との歴史のイフはあまり意味がないかもしれないが、もはや、金王朝は諸悪の根源ではないか。

そういえば、この日曜版の5面などには「森友疑惑解明待ったなし」との見出しで、教育勅語などの暗唱が「教育基本法」から逸脱するとして批判しているが、さて、赤旗は朝鮮学校への公的資金の導入は批判していたっけ?  どっちもどっちと思うならいざしらず……。元共産党党員(除名)、元平壌特派員の萩原遼氏が刊行している『拉致と真実』 を赤旗関係者も熟読すべきだろう。共産党時代の回顧録も連載されている。どっちが「真実」を捉えているか……。良心的囚人ならぬ、良心的共産主義者なるものがあるとすれば、赤旗ばかり読まずに、元党員の「良心的出版物」にも目を通すべきだろう。

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!
スポンサーサイト
 | 共産主義  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑




左右の全体主義と闘った言論人といえば……
(2017・3・15・水曜日)






湯浅博氏の『全体主義と闘った男河合栄治郎』 (産経新聞出版)を読んだ。

内容紹介→右にも左にも怯まなかった日本人がいた! 河合栄治郎は左右の全体主義と闘った思想家です。戦前の学界を席巻した「左の全体主義」マルクス主義の痛烈な批判者であり、軍部が台頭すると、「右の全体主義」ファシズムをも果敢に批判。著書の発禁処分、休職処分のさなか、昭和19年に53歳で亡くなりました。上智大学名誉教授の渡部昇一氏は、河合栄治郎が長寿であったなら、「日本のインテリは、30年も早くマルキシズムの幻想から自由になっていたであろう。つまり河合の死は、日本の知的成熟をざっと30年遅らせたのである」という。戦後の河合人脈は政財学界に根を張り、論壇を牛耳る進歩的文化人と対峙しました。門下生の第一世代は、経済評論家の土屋清、社会思想家の関嘉彦、政治学者の猪木正道らで、第二世代には、碧海純一(東京大学教授)、岡野加穂留(明治大学教授)、田久保忠衛(杏林大学名誉教授)、伊原吉之助(帝塚山大学教授)ら、京都大学では高坂正堯、勝田吉太郎、木村汎ら各氏が、この人脈に連なります。米国に守られながら反米を叫ぶという〝進歩的大衆人〟の精神の歪みは、日本を漂流させてしまう――。日本の背骨を支える揺るぎない思想とは何なのか。歴史の転換点で、圧倒的な敵に挑んだ思想家、河合栄治郎の闘いを通して、日本のありようを考える。この思想家を知らずして、日本の将来を語るなかれ。
産経新聞長期連載「独立不羈 河合栄治郎とその後の時代」に加筆、再構成し単行本化


湯浅氏も本の中で触れているが、河合さんの弟子たちが、戦後、社会思想研究会(社会思想社)を作り、現代教養文庫など出版活動を展開していく(晩年、その社会思想社が左傾化していった印象を持っているが、そのあたりのことは触れられていない)。その現代教養文庫を中学生のころからよく読んでいた記憶が甦ってきた。
といっても、当時、読んでいたのは、 『菊と刀』とかではなく、白井浩一氏の『愛と性のレポート―その心理学的考察』『高校生心理学 悩み多き若ものに与う』といった本だった。ううむ…。

大学生になってからは中村菊男ほかの『民主社会主義とはなにか』や、関嘉彦氏の『新しい社会主義 民主社会主義の理論と政策』や、シドニー・フックの『マルクスとマルクス主義者たち―あいまいな遺産 』なんかを読んだりしたし、河合氏の『学生に与う』も手にした。

また、学生当時、社会思想社から箱入りの河合全集が刊行(再版)もされていたかと。たしか、一定の時期は3000円ぐらいの本が200円引きになっていた。生協だとさらに本は二割引で買えた(と記憶している)。全部ではないが、結構な冊数を買った。ちょうど年末年始の生協クジの配布期間中で、何枚も抽選券をもらった(全部外れだった)。そして、その全集のほとんどは、30数年間、積んどくのママである…。ううむ…。

ともあれ、しばしば引用もされている渡部昇一氏の河合氏に関するエッセイが掲載された「日本文化会議」(127号)もリアルタイムで一読した記憶がある。当時、文化会議は定期購読していたから。それを読んで、その通りと感じたものだった。

戦前、共産主義(マルクス主義)と闘い、ファシズム的な言論とも闘い、時には国家権力により裁判沙汰にされ、学者の地位を失うことにもなった。
しかし、ペンを持ってそうした抑圧と闘った言論人が日本にいたことは勿論承知していた。河合さんの評伝も何冊か出ている。粕谷一希氏の『河合栄治郎 闘う自由主義者とその系譜』 (日本経済新聞社)など、何冊かひもといてもきた。だが、20代で読むのと、50代後半になって、こうした評伝を読むのはまた違った感慨が浮かぶものだろう。河合さんは53歳で死去。自分はそれより年上になっている。そうした視点から、彼の生涯の歩みを辿りながら、自分自身のノンビリした波瀾万丈なき人生の乏しさを…。

戦闘的自由主義者という思想信条を持つ知識人は日本にはあまりいなかった。丸山真男も本書には登場するが、所詮、彼は「容共リベラル」程度の学者でしかなかった(と僕は思う)。これまた彼の本を沢山読んだわけではないが…。 『日本の思想』『現代政治の思想と行動』(未來社 )、 『戦中と戦後の間 1936-1957』(みすず書房)ぐらいだが。丸山に関する評伝本も何冊か出ているが、水谷三公氏の『丸山真男 ある時代の肖像』 (ちくま新書)が秀逸。所詮は、ラスキ程度でしかない?

そのラスキと英国で河合氏は会ってもいる。まぁ、当時、多元的国家論は新鮮ではあっただろうが、岩波文庫から出ていたラスキの『近代国家における自由』を学生時代一読して、この「容共のバカ!」と思ったものだったが。

学生紛争によって研究室が破壊された時の単細胞的な丸山の憤りのシーンは、本書でも引用紹介されているが、佐々淳行氏が指摘している通りだろう。そういえば、佐々氏の父親の佐々弘雄氏も、長生きできず、戦後まもなくの時期に死去している。河合栄治郎と佐々弘雄が戦後も長生きしていれば、日本の言論界はちょっと違っていたものになったかもしれない。

井沢元彦氏の『「日本」人民共和国』 (光文社文庫)という本が20年以上昔に刊行されていた。これは日米安保闘争の時、ハガチーが殺害され、安保条約改定ができず廃止になり、日本が北朝鮮のような暗い、自由のない人民共和国化していくという小説だった(その自著と、百田尚樹氏の自著『カエルの楽園』新潮社—をテーマに両者が『歴史通』4月号で、 『「ゆでガエル楽園国家」日本が植民地にされる日』と題して対談をしている。その可能性もネバーセイネバーだろう)。

そういう悲観的な近未来の将来像とは逆に、河合と佐々の二人が戦後、長生きして言論界に影響力を発揮していれば、丸山一派や岩波文化人などが蔓延ることもなかったのではないか…と思う。湯浅氏の本書での、河合なき戦後を描く巧みな筆致を読み進むにつれ、その思いが強くなっていった。

それでも、その思想的後継者が少なからずいて、官界言論界にて活躍していたことは喜ばしい限りだろう。土屋清氏も、朝日新聞で頑張っていたが、安保紛争前後、朝日の論調に疑問を感じ、朝日を辞めて産経新聞に移った。僕はリアルタイムで彼の存在を知ったのは、もっとあとで、たしかTBSの日曜時事放談で細川隆元と丁々発止とやりあっていた時からだろうか。日曜朝といえば、時事放談を見る楽しみがあった。土屋清氏の『エコノミスト五十年 一言論人の足あと』 (山手書房)は自叙伝として名著の一冊。
ポッパーの研究者としても知られる碧海純一も本書に河合系の知識人として出てくるが、その弟子筋になるのが井上達夫氏。彼の著作、 『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください』 『憲法の涙 リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください 2』 (毎日新聞出版)は紹介ずみだが、左右の全体主義を批判する戦闘的自由主義の系列ではあろう。

今のTBSにも「時事放談」という番組があるのだろうか? 登場人物は、細川隆元や土屋清や加藤寛や藤原弘達などとは大きく異なる傾向があるのでは? 昔と違って見たことがほとんどないので即断はできないが。
TBSも日曜朝の番組内容は昔と大きく変わった(悪くなった?)というしかない。TBSともあろうものが…。

そういえば、文藝春秋からも『大系・民主社会主義』なる本が1980年ごろ全六巻で刊行もされていた。これらの執筆者の多くも、河合門下生や孫弟子たちだった。これらの本を読んで、こんないい本を出すなんてと、文藝春秋をいい出版社と思った学生も少なくなかっただろう?

ともあれ、昨日紹介した梅棹忠夫の評伝では、梅棹と鶴見俊輔との付き合いがよく出てくる。本書では、河合と、俊輔の父である鶴見祐輔との交友がよく出てくる。息子さんも時々出てきて、河合栄治郎に多少の影響を受けていた感もある。もし、河合栄治郎が長生きしていれば、鶴見俊輔だって、「ベ平連」にいかずに、もっと、正しい意味での「リベラル」派になっていたかもしれない? 残念?

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!
 | 共産主義  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑







田原総一朗さん、豹変す? 百田尚樹さんからの訣別宣言!
(2017・2・24・金曜日)






百田尚樹氏&田原総一朗氏の『愛国論』 (ワニ文庫)を手にする。
単行本として出ていたものが文庫化されたもの。両者の「はじめに」(田原氏)と「おわりに」(百田氏)をまず読了。

田原氏は1934年生まれで、敗戦時の価値観の大転換に直面し、子供心から共産党のシンパになったが、1965年に取材でソ連に行き、言論の自由がないのを知って愕然としたという。心情左翼が圧倒的多数だった日本のマスコミにあって、それからは方針転換。韓国を評価するルポを書いたりしたという。そのため、韓国情報部から金をもらっただのと糾弾もされたとのこと。

とはいえ、そんな田原氏との対談企画に百田氏は、田原さんは「ばりばりの左翼」と思っていたので、話になるかなと疑問を抱きつつも応じたところ、左翼批判もあってエキサイティングな楽しい時間を過ごせたという。
ところが、最近の田原氏は再び左旋回していると、「おわりに」で糾弾している。これがまた面白い? 「国境なき記者団」の根拠なき「報道の自由度ランキング」を過信したりする対応を批判している。

田原さんは今もやはり、ばりばりの左翼だったのだ。「国の安全保障」や「日韓合意」よりも、「権力批判」こそが、彼にとって最も大事なものなのだ。私は軽い失望と同時に、若き日の「左翼洗礼」の強さをあらためて知らされた思いだった。機会があれば、また対談の場を持ちたいと思うが、おそらくもうその機会は訪れないだろう。


なるほどね。まぁ、人それぞれとはいえ……。1934年生まれなら、1956年に起こったハンガリー反革命の時は、物心はあったはずでは? 百聞は一見にしかずとはいえ、1965年まで共産主義の実情を気づかなかったのは、致命的な先天性想像力欠乏症であったとはいえようか。その後遺症は生涯取り戻すことはできなかった?

今からでも遅くないから、湯浅博氏の『全体主義と闘った男 河合栄治郎』 (産経新聞出版)を読むことをおすすめしたい? 全体主義には「左右」があり、共産主義とファシズムとはほぼ同じものという認識を十代のころから持っていれば、本当の意味での中庸な精神を持つことが可能になる?

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!
 | 共産主義  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑





金正男と安江良介の守護霊と霊界通信をしてくれる人といえば……
(2017・2・21・火曜日)


「(北朝鮮犯行説という)その根拠は薄く、疑いも多い。おそらくは『現代史』の一区切りをもつまでは、不明のままに推移するものと思われる」これは、今回の金正男「暗殺」をめぐっての進歩的文化人による発言というわけではない。1983年10月、ビルマのラングーンを訪問していた全斗煥大統領一行を襲ったテロに対する、雑誌「世界」(83年12月号)に掲載された当時の編集長・安江良介のコメントだ。

この号では、あの悪名髙いT・.K生(池明観)「北がしでかしたという仮説がありうることはもちろんだ。しかし、証拠もあがらないのに、どうして全は初めから北の仕業だと大言壮語したのだろう」「北がなしたことであるとしたら、それに対する責任の少なくとも一端は全政権にあるといわねばならない」と、テロ国歌北朝鮮擁護キャンペーンのような誌面を構成していたものだった。

バカにつけるクスリはないというが、さすがに、今回の金正男殺害事件に関して、こんなことを言う人は、「世界」にも「朝日」にもいないことだろうか? いやいや、ネバーセイネバーだから,マレーシアにいる北朝鮮のカン・チョル大使が、陰謀とか捏造とか言っていることが正しいのかもしれない?

彼は、事件の捜査が政治的な目的で行われていると主張し、「マレーシア警察の捜査結果は信用できない」として、韓国で起きている政治の混乱や米国の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の在韓米軍配備をめぐる議論などを取り上げ、「今回の事件で唯一、得をするのは韓国」だと述べたという。昔なら、「そうだ、北の言う通りだ」といった応援団のエールが日本国内から巻き起こるところだろうが。

これって、1983年12月号の「世界」で、T・.K生(池明観)や安江編集長などが述べた屁理屈と瓜二つというしかない。
日本にも密入国していた金正男が、「百%無辜」の被害者とは思えないから、天国ではなく、地獄に落ちているかもしれないが、そこで、かつての北朝鮮擁護者と遭遇しているだろうか? いや、いくらなんでも、そこまで金さんはひどくないから、天国に旅立っていることだろうか?

それにしても、ここ一週間前後、朝のワイドショーを賑わせているのは、男は金さん、女といえば、清水富美加サン。

大川隆法著『女優・清水富美加の可能性~守護霊インタビュー』 (幸福の科学出版)や、千眼美子著『全部、言っちゃうね。~本名・清水富美加、今日、出家しまする。』 (幸福の科学出版)なんて本も出ているそうな。
まもなく、 『金正男守護霊インタビュー~私を暗殺したのは金正恩だ』とか『安江良介の良心守護霊インタビュー』なんて本も出るのかも?

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!
 | 共産主義  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
さらば金正男よ?  02/15/2017  






さらば金正男よ?
(2017・2・15・水曜日)




金正男が「毒殺」されたとのニュースが昨夜流れた。金正恩が中共によって暗殺され、その後釜に金正男が就いて、少しはマシな「傀儡政権」が誕生する……だなんてこともありうるかなと思っていたが、これが事実なら、その可能性は消えたことになろうか。
家族連れで日本に「密入国」して捕まえた時、バカな外務大臣が、何を恐れたか、さっさと返せということで、VIP並み扱いで帰国させたが、拉致被害者と交換するぐらいの才覚はなかったのかと当時歯ぎしりしたものだった。金正男と限定的な接触とはいえ、いろいろと「取材」した体験を綴った本として、五味洋治氏の『父・金正日と私 金正男独占告白』 (文藝春秋)がある。刊行当時、その本を本欄で取り上げていた。それを、以下再録。

ともあれ、ネバーセイネバー。あとは野となれ山となれ!




金日成と金正日--金正恩、そして金正男の正体と謎に迫る好著…… 01/19/2012  


  共産主義国家は嘘によらずには生きていけない国家であるが、以前、李命英氏の『四人の金日成』 (成甲書房)を読んだことがある。西岡力氏が韓国で学んでいたときの先生であったか? 「金日成」なる存在そのものがモスクワによって「創造(捏造)」されたものであり、過去の対日植民地闘争のリーダー「金日成」なる人物が、戦後どのように「創造」されてきたかなどについて検証した本だったかと(記憶が薄れているが)。
 李氏の本は、ほかに 『権力の歴史 偽造された北朝鮮近代史』 (世界日報社)などがあり、これはこの前、祐天寺の某古本屋で購入したばかり。積んどく中。

 北朝鮮に関する本は、ここでも紹介してきたが多々ある。最近はやはり「後継者」問題をめぐって、金正日の息子たちがクローズアップされている。

 単純な推測であるが、金日成がレーニン、金正日がスターリン、金正恩・金正男はフルシチョフ、ブレジネフといったところではないかと思っている。

 レーニンはよかったとは全く思わないし、レーニンから疑い否定すべきだと思うが、それはともかくとして、いまでも、一応「創業者」として「レーニン&金日成」は神格化されている点でも共通している。日本の左派知識人たちもそのレベルであろう。
 そのあとを継いだ「スターリン&金正日」に関しては、さすがにワンダフルという人はあまりいないだろう。
 そしてソ連もスターリンが死んで(暗殺?)、マカレンコやフルシチョフなどが出てきて、少しはマシになったかと。もっともフルシチョフもしばらくして解任され、ブレジネフなどの時代になり、所詮、フルシチョフ時代もキューバ危機があり、レーニン、スターリン時代と比べても五十歩百歩でしかないのだろうが、それでも少しはマシになったとも言えないこともない。

 その意味で、北朝鮮の指導者も代替わりをして少しはマシになるのではないかという期待は出てくるだろう。ただ、それが血筋の継承者というのが異常ではあるが、会社組織でもそういうことはあるし、前任の父・祖父の経営方式を大胆に変更する孫社長というのもありうる。

 その意味で2010年10月に刊行されていた藤本健二氏の『北の後継者キム・ジョンウン』 (中公新書ラクレ)は興味深い。キム・ジョンウンは「金正恩」のこと。藤本氏は元金正日の専属料理人(寿司職人)。北朝鮮の平壌の日本料理店で働き、その縁で専属料理人になり、金正恩の幼少の頃から接触もあったという。料理人としての体験記である『金正日の料理人』 (扶桑社)は以前読んだことがある。いろいろとあったようで、何とか日本に戻れたのは幸いであろうが、生々しい内部「報告」をしているせいか、サングラス姿での素顔を隠して「証言」をしている姿をテレビなどでよく見かける。
 今回の新書本も、内部に居た人間ではないと書けない話があり、貴重な証言集と言える。なにしろ、この人、金日成が死んだ時の葬儀にも列席し、その姿が生放送のテレビ画像にチラリと出たこともあったぐらいだ(さすがに日本人の姿が出るのは拙いということで、そのあとすぐに「消された」らしい)。

 スイスに留学し、休みの時に帰国していた正恩が、藤本氏に「わが国は、アジア(のほかの国)を見ても、工業技術がずっと遅れている。わが国で誇れるのは地下資源のウラン鉱石ぐらいだろう。招待所でも停電が多いし、電力不足は大変だな」「われわれは毎日のように馬に乗ったり、ローラープレードに乗ったり、バスケットをしたり、夏にはジェットスキーやプールで遊んでいるけど、一般の人民たちはどう過ごしているのかなあ」と語ったことがあるそうな。藤本氏は、その体験から、彼に期待もし、後継者としてふさわしいと見ている。
 その点で、正恩が、フルシチョフぐらいになれるかもしれないという期待は持てるかもしれない。しかし、10代の頃の「理想」や「同情心」などは、実社会に出て行くと薄れもする。日本だって、局長クラスのお役人たちが汚職やらで逮捕されると、高校生時代の同級生の証言として、理想を語っていたかつての〇〇君だったのに…という話がよく出てくる。その二の舞になる可能性も十分強いだろうが、スイス留学といった体験が少しは井の中の蛙云々ではないが、蛙よりはマシではないかと。

 一方、出たばかりの五味洋治氏の『父・金正日と私 金正男独占告白』 (文藝春秋)は、北京国際空港で別取材の時にたまたま見かけた金正男に立ち話をして名刺を渡した縁でメールのやりとりをするようになった五味氏の取材記録集である。主にメールでの質疑応答がまとめられている。メールだけのやりとりだと、あの民主党の偽メール事件をついつい想起してしまうが、五味氏の場合、メールでやりとりしながらアポをとり、マカオで本人との直接取材もしている。
 藤本氏の場合、北朝鮮在住で、密接な人間関係があったこともあって生々しい証言が多いが、こちらはメールでのやりとりが主であるから、そういうものは少ないのだが、興味深いものがある。日本への不法入国がばれ、田中外相の無様な対応もあり、金正男というと、みてくれからしても、ふてぶてしいヤクザの若頭のようなイメージがある。
しかし、本書を読むと、わりとインテリでもあり、マジメそうな青年にも思えてくる。そのあたりはなんとも即断はできないが……。
 東日本大震災後、五味氏が日本でも電力不足が言われ、これでは北朝鮮をとやかくいう資格がなくなってしまいますと送信したら、「北朝鮮の慢性的電力難を、日本の一時的電力難に比較することはできないと思います。北朝鮮の経済制度的問題点が深刻で、電力難を体験するのです。自ら選択した道で困難を体験することなので、どうしようもありません」と。そして、「北朝鮮は慢性的なだけに、ある日突然、電気が満たされると驚くかもしれません(冗談です)」と返信してくる。
 まぁ,ちょっとしたユーモア感覚がある? 

 藤本氏の本にも、招待所でさえ、しばしば停電が起こるような北朝鮮と比較するのはたしかにヘンではあろう。そのあたりは十分に理解している金正男であった。そのほか世襲への疑問なども提示している。

 金正男&金正恩、どちらもスイスに留学し、自由主義の一端を味わった体験があり、祖国の現状にそれなりに疑問を感じているようではある。金正男は、中国の人質なのかどうか、彼の生活費は何処から支給されているのかなどは謎のままだが、19世紀的な世襲政治の様相が今の北朝鮮に残存していることがよく分かった。
 北朝鮮が中国の衛星国・属国・事実上の植民地としてこれからもしばらくは生きていくことになるのか? 北朝鮮の独裁体制を打破するためには、まず中共(中国共産党)の独裁体制を打破することが必要なのか。チベット、ウイグル、内モンゴル、そして北朝鮮、台湾、ひいては日本の今後の「独立」を考える上でも、北朝鮮の指導者の資質は少なからぬ影響を与えるだろう。それを考える上でも、この二冊は面白い本だった。
 | 共産主義  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑

プロフィール

最新記事

最新コメント

最新トラックバック

月別アーカイブ

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード

カテゴリ